2.24両国のメインを飾る井上拓真とは|モンスターの弟|戦績・経歴

Author Photo Author Photo
Takuma Inoue, centre, with his father Shingo and brother Naoya.
時事通信

井上拓真は、偉大な兄・尚弥と比較されるキャリアに苦悩しながらも、自身のボクシングを見つけるべく、両国国技館での初防衛戦でその一歩を歩み出そうとしている。

2月24日(土)にWBA世界バンタム級タイトルマッチに臨む井上のこれまでのキャリアを解説する。

【告知】2.24当日、井上拓真&中谷潤人&田中恒成のトリプル世界戦をライブ速報予定!

井上拓真が2月24日、東京・両国国技館で元IBF世界スーパーフライ級王者ジェルウィン(ヘルウィン)・アンカハスを相手にWBA世界バンタム級タイトル初防衛戦を行う。このタイトル戦とアンダーカード(前座試合)は米国ではESPN+、日本ではアマゾンプライムビデオで独占生配信される。

井上拓真(18勝1敗、4KO)は、世界的に知られた兄を持つ。4階級制覇の世界タイトル保持者であり、パウンド・フォー・パウンドの傑人であり、現スーパーバンタム級4団体統一王者に君臨する井上尚弥だ。キャリアスタート時点からその偉大な兄と常に比べられてきた。

さらに両国国技館のリングでは、アンダーカードとも比較されることになる。

セミファイナルでは、中谷潤人がアレクサンドロ・サンティアゴ相手にWBC世界バンタム級王座に挑む。ネクストモンスター、そしてKOアーチストとして評価される中谷はすでに2階級制覇しており、サンティアゴ戦を皮切りにバンタム級のベルトをすべて集めようとしている。対するサンティアゴは、昨年7月に兄のライバルのひとりだったノニト・ドネアを下してWBCタイトルを獲得した新王者だ。この試合に勝った方が井上拓真と統一戦を戦う可能性が高い。

また、階級は違うがアマチュア時代に拓真が敗れた相手である田中恒成も世界最速の21戦目での4階級制覇を狙い、WBO世界スーパーフライ級王座獲りに挑む。メインイベントを務める井上拓真は、試合内容でも負けられない状況だ。

スポーティングニュースは、偉大な兄の栄光を間近で体感しながらも、自分自身のボクシングを見つけようとする井上拓真のキャリアに注目する。

『モンスターの弟』井上拓真とは?

神奈川県座間市出身の井上拓真は、1995年12月26日に誕生。兄・尚弥とは2歳違いになる。アマチュアボクシング選手だった父・真吾氏のもとで幼少(4歳)の頃から兄弟でボクシングを始めた。高校生時代には、2月24日に同じリングに立つ田中恒成とも対戦した経験がある。

2013年、前年にプロ転向した兄を追うようにして自身も18歳でプロデビュー。名門『The Ring』誌のプロスペクト・オブ・ザ・イヤー(新人賞)を受賞するなど順風満帆のスタートを切った。

2015年にOPBF東洋太平洋スーパーフライ級王座を獲得したあと、バンタム級にステップアップ。2016年には当時のWBO世界バンタム級王者マーロン・タパレスに挑むキャリア初の世界戦をつかむも、自身のケガにより実現しなかった。デビュー以来、トントン拍子でキャリアを駆け上がる兄との比較に苦悩することになる。

2018年、9月にマーク・ジョン・ヤップを破りWBC世界バンタム級王座の指名挑戦権を獲得。同年末にタサナ・サラパット(ペッチ・CPフレッシュマート)を撃破し、暫定王座ながら、キャリア初の世界王者となった。

2019年11月には、真の世界王者になるべく、兄・尚弥 vs. ノニト・ドネアの前座で正規王者ノルディーヌ・ウバーリとの団体内統一戦に臨むも判定負け。初黒星を喫し、ゼロからの再スタートとなった。

拓真がアジア、そして日本タイトルを獲得し、バンタム級でのキャリアを立て直していく最中、兄・尚弥はバンタム級の4団体統一に成功。2023年1月に4本のベルトを返上してスーパーバンタム級に転向した。

2023年4月、拓真は兄がかつて保持し、返上したWBA世界バンタム級王座をかけた決定戦で左目上をカットしながらもリボリオ・ソリスに判定勝ち。ついに正真正銘の世界王者に上り詰めた。

現在28歳の井上拓真は、この階級を自身の力で再び統一し、兄とともに歴史に名を刻もうとしている。WBA世界バンタム級タイトルを獲得したあと、フィリピン英字紙『Inquirer』などによれば、以下のように語っていた。

「このベルトは兄がかつて持っていたもので、兄が最初に獲得した(バンタム級の)ベルトでもある。兄は4つのベルトをすべて持っていたので、今度は僕が挑戦する番だと言いたい。4団体統一王者になりたい」

アマゾンプライムビデオの特別番組の中で拓真は、兄・尚弥との差は「わからない」くらいだと表現した。バンタム級4団体統一は兄に近づくためのわかりやすい目標だ。キャリアから試合内容まで驚異的なボクサーである兄と比べられる立場ゆえに、兄の偉業を意識せざるを得ない。だが、拓真は自分なりの答えを模索し続けている。

長谷川穂積、山中慎介ら元世界王者たちは拓真について「上手い選手」と評価する。兄のキャリアをトレースすることは拓真自身の本音ではない。それ以上に自分のボクシングの達成感を求めて、井上拓真というボクサーとしての道を切り開くつもりだ。

井上拓真のプロ戦績と経歴

  • 出身地:神奈川県座間市
  • 生年月日:1995年12月26日(28歳)
  • 身長:164cm(5-4 1/2) 
  • リーチ:163cm(64インチ)
  • 総試合数:19
  • 戦績:18勝1敗、4KO
  • 主な獲得タイトル:
    • 第35代OPBF東洋太平洋スーパーフライ級王座
    • WBC世界バンタム級暫定王座
    • 第49代OPBF東洋太平洋バンタム級王座
    • WBOアジアパシフィックスーパーバンタム級王座
    • 日本スーパーバンタム級王座
    • WBA世界バンタム級王座

著者
Daniel Yanofsky Photo

Daniel Yanofsky is a combat sports editor at The Sporting News.

神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。