IBF女子世界バンタム級王者・吉田実代が山本美憂引退試合のため一時帰国へ|話題となったタイトル戦をプレイバック

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角谷剛 Go Kakutani

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去る12月9日、日本の女性ベテランボクサー、吉田美代がサンフランシスコでエバニー・ブリッジスに大差の判定勝利を収め、IBF世界バンタム級王座を手に入れた。一人娘を持つシングルマザーとしても知られ、王座獲得直後の母娘の抱擁はメディアで話題となった。吉田は総合格闘技、キックボクシングを経てボクシングで2階級制覇世界王者に登り詰めた。

そんな吉田が、『姉』と慕う山本美憂引退試合(12月31日『RIZIN.45』vs. 伊澤星花)の応援のため、一時帰国するという。2022年5月の王座陥落後に娘を連れての一念発起の米国移住を経て、ついに世界王者返り咲きを実現した試合を改めて振り返る。

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覚悟の母娘渡米から約1年での世界王者に返り咲き

吉田はかつてWBO女子世界スーパーフライ級の王座を2度獲得したことがある。12月9日(日本時間10日)、急遽回ってきたチャンスでオーストラリア人チャンプを破り、IBF女子世界バンタム級王座を獲得した。

試合前、吉田は7/1のオッズで不利とされていた。しかし、試合が終わると3人のジャッジは全員が吉田を文句なしに支持した(2人が 99-91、1人が 97-93)。35歳の吉田はプロ戦績を17勝4敗とし、ブリッジスはキャリア11戦で2敗目を喫した。

ブリッジスは積極的かつパワフルなファイティングスタイルで知られている。しかし、吉田は試合序盤から相手を上回る攻勢を仕掛けた。吉田の右パンチが幾度もブリッジスを捉え、反撃の機会を与えなかった。マリア・ローマンやシャノン・オコネルといった強敵を下してきたブリッジスだが、吉田には一方的に打たれ続けた。

試合が後半に入ると、ブリッジスは危険覚悟の反撃を試みたが、吉田はアウトボクシングへスイッチし、ブリッジスにチャンスを与えなかった。最終10ラウンド目、判定で負けていることが分かっていたブリッジスは大逆転のノックアウトに賭けるしかなかった。だが、吉田は最終ラウンドのゴングまで冷静な戦いを貫いた。

訳者注:試合判定を伝えるアナウンサーが吉田を「戦うシングルマザー」と日本語で紹介し、リングサイドで喜ぶ娘さんの姿も映された。

驚くべきことに、吉田は11月7日にシュレッタ・メトカーフから判定負けを喫したばかりであり、このタイトル戦も出場が決まったのは僅か20日前のことだった。予定されていた挑戦者アブリル・マティエの負傷によって急遽チャンスが回ってきた。

2022年5月にWBO女子世界スーパーフライ級王座から陥落した吉田は、年齢的にも限られた時間でキャリアを突き詰めるため、同年12月、愛娘とともに米国ニューヨークに渡り、モハメド・アリやマイク・タイソンらを輩出した名門「グリーソンズジム」に拠点を移した。前の試合から1か月に満たないショートタームながら、9月のタイトル挑戦が流れていたこともあり、そんな緊急登板をものにしてみせた。

王者である37歳のブリッジスは1年振りの試合だった。同国人ボクサーのオコネルに勝利したあと、手の手術を受けたためだ。

この試合はレジス・プログレイス vs. デビン・ヘイニーのWBC世界スーパーライト級タイトルマッチのアンダーカードとして行われた。ヘイニーは勝利し、2階級世界王者になった。もうひとつのカードでは、やはりオーストラリア人のリアム・パロがモンタナ・ラブを破った。

『姉』と慕う山本美憂のため一時帰国

吉田のドラマチックな王座獲得劇は、母国の日本でも報じられた。名門『The Ring』誌では、同誌認定の女子バンタム級ランキングで3位にランクインし、世界的にも注目すべきファイターとなった。母娘でロサンゼルスにある名将フレディ・ローチの「ワイルドカードジム」を訪問したことをSNSで報告していたが、年末年始の日本への帰国も明かしていた。

吉田は、『RIZIN.45』での伊澤星花戦で引退する総合格闘家・山本美憂の応援のため一時帰国するという。総合格闘技でプロ格闘キャリアをスタートさせた吉田と山本との出会いは、吉田がボクサーになってからながら、今となっては練習相手でもあり、シングルマザー経験者としても信頼を置く存在だという。『姉さん』と慕う山本のためとなるが、王者としての凱旋帰国にもなる。

※本記事は、グローバル(英語)版記事を翻訳し、日本向けの情報を加えた編集記事となる。翻訳:角谷剛、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁

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Tom Naghten is a senior editor at The Sporting News Australia where he's been part of the team since 2017. He predominantly covers boxing and MMA. In his spare time, he likes to watch Robbie Ahmat's goal against the Kangaroos at the SCG in 2000.

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米国・カリフォルニア州在住。慶應義塾大学卒。主に米国でIT関連の会社員生活を経て、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。米国公認ストレングス・コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)、CrossFit Level 1 公認トレーナーの資格を持つ。コンコルディア大学にて、コーチング及びスポーツ経営学の修士を取得。現在は州内の2つの高校で陸上長距離走部の監督と野球部コーチを務める。スポーツ、旅行、文化に関する多くのウェブサイトで執筆中。