「モンスター」井上尚弥は何階級まで制覇できるのか?|12.26 スーパーバンタム級4団体統一戦

Tom Gray

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

石山修二 Shuji Ishiyama

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2012年のプロ入り以来、4つの階級で数々の世界タイトルを手にしてきた井上尚弥。その勢いは止まるところを知らないどころか、さらに増すばかりだ。果たして『ザ・モンスター』はどこまで行くのだろうか?

12月26日(火)、スーパーバンタム級制圧をかけて対抗王者マーロン・タパレスとの統一戦を迎える井上だが、その驚異的なキャリアはどの階級まで突き進むのか。名門『The Ring』誌(リングマガジン)元編集人で本誌格闘技部門副編集長のトム・グレイが考察する。

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モンスターの行き着く先は? 5階級目、6階級目はあるのか

30歳の今、25戦ですでに4階級を制覇し、著名パウンド・フォー・パウンド・リストにもランクインしている井上尚弥が、12月26日(火)に自身2階級目となる4団体統一王座の獲得に挑む。『モンスター』の対戦相手は、WBA/IBF世界スーパーバンタム級王者のマーロン・タパレス。東京・有明アリーナで行われるこの4団体統一戦ならびにアンダーカードは、日本ではNTTドコモの動画配信プラットフォーム『Lemino』(レミノ)で独占無料配信される。

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2014年4月、プロ5戦目の井上はアドリアン・エルナンデスを破り、WBC世界ライトフライ級タイトルを獲得した(6回TKO)。弱冠21歳の井上はそれから8か月も経たないうちにライト級をスキップしてジュニアバンタム(スーパーフライ)級へ転向、長期にわたりWBO王者に君臨してきたオマール・ナルバエスを倒した(2回TKO)。

その後、2018年5月から2022年11月の間はバンタム級に専念し、ジェイミー・マクドネル(1回TKO)、エマヌエル・ロドリゲス(2回TKO)、ノニト・ドネア(初戦:12回ユナニマス・ディシジョン、第2戦:2回TKO)、ポール・バトラー(11回TKO)を倒し、4団体統一王者へと上り詰めている。直近のファイトでは、7月に無敗を続けていたスティーブン・フルトンを倒し(8回TKO)、WBC/WBOスーパーバンタム級の王座を手に入れた。

こうして書き出すと驚異的なキャリアだが、井上にスローダウンする気配は全くない。

ウェイト(階級)に関して言うなら、ボクシングの歴史では不可能を成し遂げてきた偉大なボクサーはこれまでにも大勢いた。伝説的ボクサー、ヘンリー・アームストロング(1930〜40年代に活躍した米国人ボクサー)は、フェザー級、ライト級、ウェルター級の3階級のタイトルを同時に保持した史上唯一の選手だ。フィリピンの英雄、マニー・パッキャオは近代ボクシングの記録である8階級制覇(主要4団体世界王座での6階級、IBO世界スーパーライト級、The Ring誌認定フェザー級で8階級とされる)を成し遂げている。女子で言えば、アマンダ・セラノは女子ボクシングの記録となっている7階級制覇を達成した。

井上自身が過去に語った、さらなる階級への意欲

筆者が『The Ring』誌(リングマガジン)の取材で井上と話した時、元バンタム級統一王者フアン・カルロス・パヤノを70秒で葬り去った直後の彼は通訳を通じて、階級を上げていくことについて次のように語っていた。

「今のところ、考えられるのはスーパーバンタム級(122ポンド/55.338kg以下)まで。ただ、階級を上げるに伴って体も大きくなっていけば、さらに階級を上げることもあるかもしれない」

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もし井上がこのスーパーバンタム級2戦目にして4団体統一王者に輝くなら、この末恐ろしいチャンピオンはさらに階級を上げていくと言って間違いないだろう。フェザー級(126ポンド/57.153kg以下)に上がれば、前WBO王者のロベイシ・ラミレス、IBF王者のルイス・アルベルト・ロペスといった骨のある対戦相手へのチャレンジが待ち構える。しかし、どちらが相手でも、おそらくは井上有利という前評判になるだろう。

仮にフェザー級に上がっても、井上はサイズ的に小さいわけではない。オリンピックで2度の王者に輝いているキューバのラミレスは、身長165cm、リーチは172cm。メキシコのパワーヒッター、ロペスは身長162.5cmでリーチは169cm。つまり、身長165cm、リーチ171cmの井上が二人に大きく引けを取ることはない。さらに、ラミレスとロペスはどちらも上の階級からおりてきた選手だけに、井上のスピード、パワー、そしてテクニックは決定的な武器となるだろう。

現実味のあるフェザー級より、さらに上の階級転向はあるのか

では、フェザー級よりもさらに上の階級はどうだろう? これは少し無理があるかもしれない。WBC世界スーパーフェザー級王者オシャキー・フォスターは身長173cmで、そのリーチは183cmだ。IBF世界王者ジョー・コルディナになると身長は175cm、リーチは175cmだ。これだけサイズ・フレーム面でディスアドバンテージ(不利)があると、それを克服するのは並大抵のことではない。ボクシングに階級制が用いられているのはそれなりの理由があるのだ。

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伝説のマニー・パッキャオは、サイズの違いによる大きなディスアドバンテージを克服し、フライ級からスーパーウェルター級まで制覇した。しかしパッキャオは並外れたボリュームパンチャーで、フットスピードにも優れていた。だからこそ、体格差のある大きな相手を倒すことができた。もちろん井上も優れたファイターではあるが、パッキャオとはスタイルが異なるし、自分よりも大きな相手に対して効果的とは言い切れない部分もある。

ただ、井上がどの階級を主戦場とするにしても一つだけ確かなことがある。『モンスター』自身が進むと決めたその階級を圧倒することは間違いないだろう。

※本記事は国際版記事(著者: Tom Gary)を翻訳し、日本向け情報を追記・編集した記事となる。翻訳・編集:石山修二、編集:スポーティングニュース日本語版編集部 神宮泰暁

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Tom Gray joined The Sporting News in 2022 after over a decade at Ring Magazine where he served as managing editor. Tom retains his position on The Ring ratings panel and is a full member of the Boxing Writers Association of America.

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。

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スポーティングニュース日本版アシスタントエディター