荒稼ぎするメイウェザーだけじゃない…偉大な王者たちによるボクシング史に残るエキシビションの数々

Tom Gray

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2月25日(日本時間26日)、ボクシング界の伝説であるフロイド・メイウェザー・ジュニアが、アーロン・チャルマーズと対戦するために英国ロンドン・O2アリーナのリングに上った。チャルマーズはリアリティ番組のスターであり、引退した総合格闘技家であり、そしてパートタイムのボクサーだ。試合はメイウェザーのここ数戦のなかでもとくにおふざけに終始した内容だった(8ラウンドでスコア判定無し)。

45歳のメイウェザーは、昨年11月にドバイでソーシャル・メディア・インフルエンサーのデジと対戦し、6回TKO勝ちで終わらせている。報道によれば、この元5階級世界王者であり殿堂入りボクサーでもある人物は、初心者を相手にすることで3000万ドル(約40億円)以上の収入を手にした。今回のチャルマーズ戦でも大金を稼いだに違いない。

「本来は別の相手と戦うはずだった。しかし、彼が怪我をしてしまった。アーロン・チャルマーズが名乗りを挙げてくれて感謝している。ファンを失望させなくて済んだからね。イギリスのファンはいつも私を応援してくれてきた。だから、このようなイベントは長い間やってみたかった」とメイウェザーは語った。予定されていた本来の対戦相手とはキックボクサーのリアム・ハリソンのことである。

ボクシングのエキシビションは最近とくに話題を呼んでいるように感じられる。しかし、実際には何十年も前から行われてきたことだ。現役引退後も金を稼ぐためにリングに上がり続けた元ボクサーは、メイウェザーひとりだけではないのだ。

スポーティングニュースでは、ボクシング史上に残る偉大なチャンピオンたちが行ったエキシビションの数々を振り返ってみた。

モハメド・アリ vs. アントニオ猪木

  • 試合日:1976年6月26日
  • 開催地:日本武道館、日本・東京都

1975年初頭、モハメド(モハメッド)・アリが2度目のWBA・WBC世界ヘビー級統一王者になったばかりの頃、日本を訪れた際の発言が世界を驚かせた。

日本レスリング協会の八田一朗会長から紹介されたアリは、「俺に挑戦する東洋のファイターはいないか? もし俺に勝てたら、百万ドルでも払ってやるぞ」と大声で言い放ったのだ。

プロレスラーのアントニオ猪木がアリの挑発を受けるために立ち上がった。しかし、この試合が実現するまでにはそれから1年以上の時間がかかった。ボクサーとプロレスラーの異種格闘技戦はルールの合意に難航し、イベントは大失敗に終わった。

関連記事:アントニオ猪木さんの訃報に米格闘技界も衝撃:モハメド・アリ戦は史上初のMMA戦としてマクレガーもリスペクト

当日の試合ルールは、猪木には腰から下へしか蹴りが許されなかった。やむなく猪木は15ラウンドをずっと床に背をつけたままで戦い、アリの両脚を蹴り続けた。『ザ・グレーテスト』の異名で称えられるほどの名手アリは、45分間でジャブを合計6発しか放つことができずに終わり、試合後は血栓症の大きなダメージを負った。猪木の蹴りは「アリキック」として日本のプロレスファンのなかで記憶され、この試合が総合格闘技の礎になったと考えられている。

この試合でアリは600万ドル(当時の為替レートで約18億円)を手に入れた。その3年後、キャリアの晩年にさしかかっていたアリは、アメフト選手のライル・アルゼイドとボクシングルールのエキシビションマッチを行った。

アリ vs. 猪木戦の結果:引き分け

ラリー・ホームズ vs. ベルナルド・メルカドとジェームス・ティリス

  • 試合日:1990年3月11日
  • 開催地:スナヤン・スタジアム、インドネシア・ジャカルタ

当時40歳だったホームズは、2年前にマイク・タイソンからノックアウト負けを喫してリングから遠ざかり、2度目の現役復帰をするかどうかで迷っていた。

そんなホームズにとって、ジャカルタでバカンスとナイトライフを楽しみ、リング上で1曲か2曲か得意の歌声を披露し、そして平凡なヘビー級ボクサーを2人相手に4ラウンドのエキシビジョンマッチを行うというアイデアは魅力的であった。

まったくトレーニングをせずにリングに上がったホームズであったが、『イーストンの暗殺者』と呼ばれた鋭いジャブは健在で、格下の相手を簡単にあしらうことができた。それでもテレビ中継されたエキシビションは好評だった。

ホームズの友人であり、メンターであり、そしてかつてのライバルであるモハメド・アリもこのイベントに出席し、文字通りファンたちにもみくちゃにされた。

1年後、ホームズは公式戦に現役復帰を果たし、イベンダー・ホリフィールドとオリバー・マッコールの持つ世界タイトル戦に挑戦したが、そのどちらの試合も判定で敗れた。そして2002年に引退した。

ホームズ vs. メルカドおよびティリス戦の結果:判定無し

フロイド・メイウェザー・ジュニア vs. 那須川天心

  • 試合日:2018年12月31日
  • 開催地:さいたまスーパーアリーナ、日本・埼玉県

コナー・マクレガー相手に50戦50勝無敗記録をあげた現役引退試合から1年以上たっていたメイウェザーは、日本の格闘技団体『RIZIN』からある誘いを受けた。フェザー級のキックボクシング王者である那須川とボクシングルールのエキシビジョンマッチを行うことに興味はないかとの打診である。

それは真っ当なボクシングの知見から考えると、あまり良いアイデアのようには見えなかった。

メイウェザーは常にコンディションを整えている。たとえボクシングの天才であった頃のパフォーマンスからはほど遠くであっても、体格で劣るボクシング初心者がリング上で近づくことさえ許されるべきではなかったのだ。

試合開始後たった1分で左フックを被弾した那須川は床に倒れていた。真剣なファイターである那須川は必死に立ち上がったが、試合はそこで事実上終わった。その後に2度のダウンを奪われると、那須川のコーナーからタオルが投げ込まれた。

メイウェザーは無謀な20歳の若者をあしらった試合で、900万ドル(当時のレートで約9億9000万円)を手にしたと報じられている。

あまりにも容易な大金稼ぎだった。

メイウェザー vs. 那須川戦の結果:メイウェザーの1回TKO勝利

マイク・タイソン vs. ロイ・ジョーンズ・ジュニア

  • 試合日:2020年11月29日
  • 開催地:ステイプルズ・センター、米カリフォルニア州ロサンゼルス

ボクシング史上最大のスターである2人が対戦する。それがたとえ8ラウンドのエキシビジョンマッチでも興奮しない人はいるだろうか。

新型コロナウイルスのパンデミックが世界を覆っていた頃、かつてのチャンピオン同士が無観客ながらペイパービューで公開されたイベントで相まみえた。タイソンは1000万ドル(約13億5000万円)、ジョーンズは300万ドル(約4億500万円)を手にしたと報じられている。

2人は互いに全盛期の得意スタイルを彷彿させる好ファイトを見せた。51歳のジョーンズは足を使いながら鋭いパンチを放ち、54歳のタイソンはしばしばジョーンズをロープに追い詰めた。

両者は試合終了まで1度もダウンすることなく戦いきり、結果はジャッジの判定により引き分けとなった。

ただ、正直に言えば、この2人の対戦は20年前に実現するべきだった。その頃のジョーンズは世界でも屈指のボクサーであったし、タイソンは凋落が始まっていたが、それでもまだ大スターだったのだから。

タイソン vs. ジョーンズ戦の結果:引き分け
 

イベンダー・ホリフィールド vs. ビクトー・ベウフォート

  • 試合日: 2021年9月11日
  • 開催地:セミノール・ハードロックホテル&カジノ・ハリウッド、米フロリダ州マイアミ

史上最強のヘビー級王者であるイベンダー・ホリフィールドはそのキャリアのなかで、最盛期を過ぎたボクサーを相手に勝利したことが何回かある。しかし、2011年5月の事実上の現役引退試合以来、約10年ぶりにリングに上がり、自分自身が手っ取り早く大金を掴むためにエキシビジョンマッチを戦うという試みには大失敗した。

2021年9月、リング復帰を目指していた元複数階級世界チャンピオンのオスカー・デ・ラ・ホーヤが新型コロナウイルス感染のため、総合格闘技スターのビクトー・ベウフォートとのエキシビジョンマッチから身を引いた後、はるかに階級が重いホリフィールドが代わりを務めるというニュースは世間を驚かせた。

しかし、体格は関係なかった。

交渉が決裂したとはいえ、夏前からケビン・マクブライトとのエキシビションの準備をしていたはずの58歳のホリフィールドだが、その身体にはスピード感がまったくなかったのだ。サウスポーのベウフォートはすぐに猛攻を見せ、第1ラウンドの後半にはダウンを奪った。ホリフィールドはなんとか立ち上がったが、ベウフォートの追撃を見たレフリーは試合を止めた。

15年か20年前なら、ホリフィールドはベウフォートをまったく問題にしなかっただろう。

ホリフィールド vs. ベウフォート戦の結果:ベウフォートの1回TKO勝利

原文:Floyd Mayweather vs Aaron Chalmers: The chequered history of boxing exhibitions
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部


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Tom Gray joined The Sporting News in 2022 after over a decade at Ring Magazine where he served as managing editor. Tom retains his position on The Ring ratings panel and is a full member of the Boxing Writers Association of America.