タイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュア:噂の英国人ヘビー級対決は本当に2023年に実現するのか

Daniel Yanofsky

タイソン・フューリーvsアンソニー・ジョシュア:噂の英国人ヘビー級対決は本当に2023年に実現するのか image

タイソン・フューリー、アンソニー・ジョシュアと言えば、紛れもなくヘビー級ボクシングの頂点に立つ2人だ。ここ数年、両者の対決は幾度も俎上に上がっては消滅を繰り返してきたが、日本時間5月27日、フューリー発信で9月対戦案が突如として浮上した。

くすぶり続ける英国人頂上対決は、はたして今度こそ実現するのか。本誌格闘技エキスパートのダニエル・ヤノフスキーが現在の周辺事情を解説する。

▶スポーツの試合結果を予想して豪華賞品をゲットしよう!

もう何度目? 幻の英国人頂上対決プランがまたしても浮上

格闘技ファンは、これまでに何度もタイソン・フューリーとアンソニー・ジョシュアとの間に起きたニュースに振り回されてきた。仲裁、契約論争、そして異常な交渉戦術まで、未だにこの英国人同士のビッグマッチは実現への見通しがついていない。

しかし、最近になってタイソン・フューリーがソーシャルメディアに投稿した内容によると、この一戦が起こり得る兆しがある。

WBC世界ヘビー級王者フューリーは、自身のプロモーターとジョシュアのプロモーターであるマッチルーム・ボクシング社のエディー・ハーン氏との間で交渉が再開されていることを明らかにした。『ジプシーキング』(フューリーの異名)は夏に試合をすることを望んでおり、その提案はジョシュア陣営に伝えられ、回答を待っている状況だということだ。

スポーツ専門局『ESPN』電子版の記事によると、フューリーとジョシュアの両陣営は9月に試合を行う方向で話し合っているという。

現地時間5月26日に投稿されたフューリーのツイートにはこうある。

「数日前に私はアンソニー・ジョシュアへ契約の提案書を送った。9月にウェンブリー・スタジアムで試合を行うためだ。私も含めて、誰もが望んでいる試合のはずだ。なあAJ(アンソニー・ジョシュア)、世界中が見たがっているものを見せてやろうじゃないか。今回に限っては、私は100万本も動画を作って、プレッシャーをかけるつもりはない。ボールはそちらに投げられたのだ」

フューリー vs. ジョシュアのこれまでの経緯

2020年、フューリーはデオンテイ・ワイルダー(米国)との第2戦に勝利し、WBC世界ヘビー級王者になった。すぐに両者の第3戦目が行われるはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって延期された。

ジョシュアは2019年12月にダイレクト・リマッチで再戦したアンディ・ルイス・ジュニア(米国)に勝利し、WBA(スーパー)、IBF、WBO、そしてリング誌のヘビー級世界タイトルを奪回した。ジョシュアはさらに2020年12月にはクブラト・プレフ(ブルガリア)を倒して、タイトルを防衛した。

この時点でジョシュアとフューリーの対戦を妨げる者はおらず、両者は基本的には対戦に合意していた。しかし、発表直後にワイルダーが仲裁裁判所にフューリーと第3戦目を行う権利を訴え、またそれが有効であるとの裁定が下ったため、フューリーはそちらを優先せざるを得なかった。

フューリーはワイルダーをダイレクト・リマッチで倒した。そのかたわら、タイトル防衛戦を義務づけられたジョシュアはオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に敗れてタイトルを失い、英国人頂上対決は自然消滅した。ウシクとの再戦にも敗れたジョシュアは現在無冠である。

フューリーは2022年4月にディリアン・ホワイト(英国)からTKO勝ちを収め、引退を発表した。しかし、フューリーは大方の予想通り、ソーシャルメディアでの挑発を続け、ウシクとジョシュアに対戦を呼びかけ続けていた。多くのボクシングファンはどうやらフューリーのそうした言動に飽き飽きしているようであるし、ウシクも同様であった。

ウシクはフューリーの要求をすべて受諾する意向を示した。再びヘビー級史上初の4団体統一戦実現への期待は膨らむ一方で、ジョシュアは沈黙を守っていた。

2022年12月にフューリーはリングへ復帰し、デレック・チゾラ(英国)から3度目の勝利を挙げた。

それからのフューリーはウシクとの交渉に(表沙汰になっているだけでも)2度失敗し、ジョシュアと無報酬でも戦うなどの挑発を繰り返してきた。ここ数週間でも、WBO世界ヘビー級暫定王者となった張志磊(チャン・ジーレイ、中国)と、ジョシュアのスパーリングパートナーを務めるデムジー・マッキーン(オーストラリア)といった名前がフューリーとの新たな対戦相手として噂に上った。

フューリーはジョシュアと本当に戦うか

現在のところ(日本時間5月30日)、フューリーとジョシュアは対戦の契約書にサインしたという確定情報はない。

最新の噂ではフューリーのツイートにあった通り、9月に対戦するということだが、それが実現するかどうかはフューリー自身がどれだけ本気であるかにかかってくる。

4月にジャーメイン・フランクリン(米国)に勝利したジョシュアは、年末まで再戦はないと明言していたが、プロモーターのハーン氏は次の試合は夏を想定していることを示唆していた。

英紙『Express』によると、5月27日のフューリーのツイートを受けてメディア取材に応じたハーン氏は、そもそも提案書が届いていないとして一笑に付した。ハーン氏から話を聞いたジョシュアも「ヤツ(フューリー)は、ジェイ・オペタイアかデムジー・マッキーンか(UFCヘビー級王者)ジョン・ジョーンズとやるんじゃないのか?」とまともに受け取らなかったという。

ジョシュア陣営としては誰とやるにしても、8月か9月にリングに戻るということだけを決めているようだ。

ほかの大物ヘビー級ボクサーたちの動きを見ると、ウシクはWBA同級正規王者ダニエル・デュボアとの統一戦を戦うかもしれない。ウシクのプロモーターであるアレックス・クラシューク氏は、8月にウクライナの隣国であるポーランドで試合を行う興行権を800万ドル(約11億2500万円)で落札したからだ。

ワイルダーも次戦への意欲を明らかにしている。ジョシュアとのメガマッチ交渉は先に進まなかったが、ウシクに向け「オレとの対戦を恐れている」と挑発の言葉を送るなど、ヘビー級戦線の主役に踊り出るべく布石を打っている。

そして最新のニュースではジョシュアとフューリーが交渉を再開した、というのが現時点の状況だ。

英国人頂上対決実現へのプレッシャーは、フューリーの方にむしろ大きいかもしれない。2023年になってから、ジャーボンテイ(ガーボンタ)・デイビス vs. ライアン・ガルシア、デビン・ヘイニー vs. ワシル・ロマチェンコ、そしてエロール・スペンスJr vs テレンス・クロフォードといったビッグマッチが立て続けに実現した。ボクシングファンはヘビー級にもその動きを期待しているからだ。

交渉がどれだけ進むかは、フューリー次第である。

スポーティングニュースは、この件に新たな動きがあり次第ニュースを更新する。

原文: Tyson Fury vs Anthony Joshua rumors: Will British heavyweights actually fight in 2023?
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本語版編集部

▶Amazonでボクシングのアイテムをチェック!


※本記事は英語記事を翻訳し、日本向けの情報を加えた編集記事となる。

Daniel Yanofsky