現在の女性ボクシング界でパウンド・フォー・パウンド・ランキング上位にひしめく最強のトップ12人とは

Daniel Yanofsky

Tom Gray

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現在の女性(女子)ボクシング界はかつてないほど強者がひしめいた戦国時代であり、その勢いが衰える兆候は見えない。スポーティングニュースでは独自の女性ボクシング版パウンド・フォー・パウンド(PFP/P4P)のリストを作成してみた。

WBC、WBO、 IBF、そしてThe Ring誌のフェザー級王者アマンダ・セラーノが2月4日(日本時間5日)にマディソン・スクエア・ガーデンで行われた統一王座戦でWBA同級王者のエリカ・クルスを下し、4団体統一王者となった。

プエルトリコ出身のセラーノ(44勝2敗1分け、31KO勝ち)は、女性(女子)ボクシング初の世界7階級制覇王者である。現在のパウンド・フォー・パウンドでも最強のひとりに数えられる存在だ。この現在34歳のサウスポーは、昨年4月にケイティー・テイラー(アイルランド)から僅差の判定負けを喫するまで10年間無敗だった。その試合は、スポーティングニュースの2022年度最高試合に選出された。そしてこの両者の再戦は5月20日にアイルランドで行われる予定だ。

男性(男子)ボクシングの場合と同様、女性ボクシングのパウンド・フォー・パウンドもファンの間で議論が絶えない。現在の女性ボクシング界はかつてないほど強者がひしめいた戦国時代であり、その勢いが衰える兆候は見えない。男性ボクシングよりも階級をまたいでのマッチアップが生まれやすいこともあり、大きな話題を呼ぶ試合が次々と組まれ、また各階級を統一する機運にも満ちている。2022年には数多くの名場面が生まれた。

スポーティングニュースでは、6人のメンバーで構成される格闘技専門記者たちの意見をまとめ、独自の女性ボクシング版パウンド・フォー・パウンドのリストを作成してみた。

1. クラレッサ・シールズ

  • 戦績:13勝0敗(2 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:ミドル級4団体統一王者(2度)、元スーパーミドル級4団体統一王者、元IBF、WBA、The Ring誌ライトミドル級王者

GWOAT(グレーテスト・ウーマン・オブ・オール・タイム)」を自称するクラレッサ・シールズは、そのビッグマウスに相応しい実力を実際のリングで証明してきた。

オリンピックで2回金メダルを獲得した後、2016年にプロへ転向した。その後わずか13戦で4団体統一王者に3度戴冠した。スーパーミドル級で1度、ミドル級で2度である。

27歳のシールズは2022年に2試合を戦った。同年最後の試合は、10月に満員のO2アリーナ(英ロンドン)におけるメインイベントで、サバンナ・マーシャルを3-0判定で下したものだ。アマチュア時代に唯一の黒星を喫した相手にリベンジを成功させ、2度目のミドル級4団体統一王者となった。

この試合は、エリザベス女王逝去の影響で当初の予定だった9月10日のわずか2日前の延期決定を経て、10月15日に行われた。勝利したシールズはスポーティングニュースの年間最高女性ボクサーに選出された。

次戦:シールズの2023年は限りない可能性に満ちている。3年契約を結んで今年が最終年とされる総合格闘技の『Professional Fighters League』(PFL)でも戦ううえ、マーシャルとの再戦やスーパーウェルター級王者のナターシャ・ジョナス戦が取り沙汰されている。
 

3. アマンダ・セラーノ

  • 戦績:44勝2敗1分け(31 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:フェザー級4団体統一王者、元IBFスーパーフェザー級王者、元WBOライト級王者、元WBOスーパーバンタム(ジュニアフェザー)級王者、元WBOバンタム級王者、元WBOスーパーライト級王者、WBOスーパーフライ(ジュニアバンタム)級王者

アマンダ・セラーノには「The Real Deal」(訳者注:『本物』を意味する、かつてイベンダー・ホリフィールドに冠された異名)の呼び名が相応しい。

セラーノは7階級を制覇した王者である(女性ボクシングにおけるギネス認定世界記録)。勝ち数は40を越えている。2009年にプロデビューし、いくつもの階級を行き来しながら、素晴らしい成功を収めてきた。マニー・パッキャオがもつ多階級制覇記録にあとひとつと迫っている。昨年テイラーに28連勝を止められたが、それでもセラーノが長年築き上げた偉業が色褪せることはない。

セラーノはあの敗戦のあとも立ち直り、さらなる偉業を目指している。ボクシングだけではなく、総合格闘技の世界にも足を踏み入れている。

次戦:2月4日にエリカ・クルスを下してプエルトリコ人初の4団体統一王者(フェザー級)となったセラーノの次戦は、テイラーとの再戦が決定した。この試合に勝利すれば、2階級同時の4団体統一王者となる。

4. シャンテル・キャメロン

  • 戦績:17勝0敗(8 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:スーパーライト級4団体統一王者、元IBOライト級王者

ノーサンプトン生まれのシャンテル・キャメロンは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの映画とテレビシリーズ『バフィー 〜恋する十字架〜』を愛する少女から、トップボクサーのひとりへと成長した。

2021年のアマチュア・ヨーロッパ選手権準決勝でケイティー・テイラーに敗れたあと、2017年にプロデビューを果たした。31歳の今も戦い続けている。プロ入り後は順調で、またたくまにライト級王者となった。

スーパーライト(ライトウェルター)級に転向したのは2020年だ。2022年には、ビクトリア・ブストスとウェルター級の4団体統一王者ジェシカ・マッキャスキルに勝利した。後者の試合結果により、スーパーライト級4団体統一王者の称号を得た。

強敵を相手にした戦い方を熟知しているだけではなく、強力なパンチを兼ね備えている。

次戦:キャメロンは次の対戦相手を探している。WBOはクリスティーナ・リナダトゥとの指名試合を求めているが、それが実現するかどうかは不明である。ウェルター級をかけたマッキャスキルとの再戦も選択肢のひとつだ。元王者ミカエラ・メイヤーとの対戦も可能性がある。

5. アリシア・バウムガードナー

  • 戦績:14勝1敗(7 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:スーパーフェザー級4団体統一王者およびIBO、 The Ring誌スーパーフェザー級王者

若き女闘士アリシア・バウムガードナーは、ボクシング界でも危険な存在だ。

「The Bomb」(爆弾)の異名をとり、2021年にはテリー・ハーパーをノックアウトした。この試合でWBOとIBOのタイトルを獲得したバウムガードナーは、すぐに4団体統一という目標を掲げた。

2022年4月にエディス・マティセを圧倒し、同年10月にはミカエラ・メイヤーと激しい戦いを演じた。この試合では両者とも病院に運ばれるほどであったが、僅差の判定でバウムガードナーが勝利し、メイヤーが保持していたWBO、IBF、The Ring誌スーパーフェザー級タイトルを奪取した。

2023年2月4日、セラーノ vs. クルスの前座試合で、エルヘム・メカレド(エレム・メクハルド)を3-0判定で勝利し、崔賢美が負傷で休養王者となった影響で空位となったWBA正規タイトルも獲得。主要4団体タイトル統一を果たした(IBOを含めると5団体統一王者)。

次戦:バウムガードナーはWBA休養王者の崔賢美との対戦を望んでいるが、崔の回復時期次第となっており、別の大物との試合の可能性もありそうだ。

 

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6. ジェシカ・マッキャスキル

  • 戦績:12勝3敗(5 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:ウェルター級4団体統一王者、元WBA、WBCスーパーライト級王者

直近の試合では敗北しているが、「CasKILLA」の異名で呼ばれるマッキャスキルは、依然としてウェルター級の女王である。強敵のセシリア・ブレークフスを下し、アンディスピューテッド王者として、3度の4団体ベルト防衛に成功している。

2017年にケイティー・テイラーから敗北を喫して以来、マッキャスキルの戦績は7勝1敗である。昨年11月にシャンテル・キャメロンに敗れてスーパーライト級のベルトを失った。しかし、この階級でも依然として有力な存在である。

次戦:WBCはマッキャスキルに元ミドル級王者イバナ・ハバジンとの対戦を要求している。キャメロンとの再戦を望む声もある。
 

7. セニエサ・エストラーダ

  • 戦績:23勝0敗(9 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:WBAミニマム級王者

「Super Bad」(超不良・超ワル)の異名で知られるエストラーダは、米ロサンゼルス出身だ。プロとして12年のキャリアを持ち、現在まで未だ無敗である。女子ボクシング史上最短となる7秒でミランダ・アドキンスからノックアウト勝ちしたこともある。

30歳になったこの強打者は、かつてライトフライ(ジュニアフライ)級の世界タイトルを獲得したことがある。マーレン・エスパーザ(9回負傷判定)、アナベル・オルティス(3-0判定)、そして天海ツナミ(3-0判定)といった強豪を連破してきた。

次戦:WBCミニマム級王者ティナ・ルプレヒトとの2団体王座統一戦が3月25日に予定されている。

8. サバンナ・マーシャル

  • 戦績:12勝1敗(10 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:元WBOミドル級王者

アマンダ・セラーノからすると異論があるかもしれないが、サバンナ・マーシャルは女性ボクシングのパウンド・フォー・パウンドで最もハードパンチャーであると思われている。元王者ではあるが、KO率は実に77%である。そのなかには語り草になったKO劇も含まれている。

31歳のマーシャルは、直近の試合でアマチュア時代からのライバルであるクラレッサ・シールズに3-0判定で敗れ、プロ初黒星を喫した。しかし、その実力は依然としてトップクラスだ。

これまでマーシャルが下してきた対戦相手にはハンナ・ランキン(7回TKO)、マリア・リンドバーグ(3回TKO)、そしてフェムケ・ヘルマンズ(3回TKO)が含まれる。

次戦:シールズとの再戦が2023年に実現することが噂されている。

9. デルフィーヌ・ペルスーン

  • 戦績:47勝3敗1無効試合(19 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:元WBCライト級王者

ベルギー出身のデルフィーヌ・ペルスーンは、WBCライト級王座を9回防衛したことよりも、2019年6月にケイティー・テイラーをあと少しのところまで追い詰めたことで知られている。

10ラウンド戦い抜いたあとのスプリット判定となったが、ペルスーンが勝っていたと見る向きも多い。この試合結果によって、ペルスーンは4団体統一王座を逃した。その後の再戦でもペルスーンは3-0判定でテイラーに敗れ、スーパーフェザー級へと階級を下げることになった。

38歳となったペルスーンの引退時期は近づいている。この元チャンピオンのキャリアの最後を飾るに相応しいスーパーフェザー級の対戦相手が望まれる。

次戦:未定

10. ナターシャ・ジョナス

  • 戦績:13勝2敗1分け(8 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:IBF、WBC、WBOスーパーウェルター(ジュニアミドル)級王者

元オリンピック選手のナターシャ・ジョナスのキャリアは波乱に満ちている。のちにWBCスーパーフェザー級王者となったテリー・ハーパーと引き分け、そしてライト級王者ケイティー・テイラーに僅差の判定で敗れた。リバープール出身のジョナスはスーパーウェルター級に階級を変え、ボクシング界の注目を集めた。

階級変更のギャンブルは成功した。昨年のジョナスはクリス・ナムス(2回TKO)、パトリシア・ベルグルト(3-0判定)、そしてマリー=イブ・ディケール(3-0判定)を次々と下し、スーパーウェルター級の統一王者となった。

次戦:パウンド・フォー・パウンド女王クラレッサ・シールズとの対戦が交渉中である。

 

11. ミカエラ・メイヤー

  • 戦績:17勝1敗(5 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:元IBF、WBO、The Ring誌スーパーフェザー級王者

ミカエラ・メイヤーは人懐っこい笑顔を見せるが、この米カリフォルニア出身の元王者にとってはそれも戦略に過ぎない。

32歳のメイヤーは強烈なプレッシャーをかけた戦いでスーパーフェザー級のタイトルをいくつか獲得した。昨年10月に行われた同級WBC王者アリシア・バウムガードナーとの王座統一戦ではスプリット判定で敗れた。手痛い敗北を喫し、手中にあった3本のベルトを失ったメイヤーは雪辱を期している。

メイヤーのここまでのキャリアでハイライトとなった対戦相手にはエヴァ・ブロドニカ(3-0判定)、エリカ・ファリアス(3-0判定)、マイバ・ハマドゥシュ(3-0判定)が含まれる。

次戦:様々な相手との対戦の噂はあるが、メイヤーはライト級へ転向すると見られている。元スーパーライト級王者のクリスティーナ・リナダトゥが対戦相手候補に挙げられている。

12. フランション・クルーズ・デザーン

  • 戦績:8勝1敗1無効試合(2 KO勝ち)
  • 獲得タイトル:スーパーミドル級4団体統一王者

フランション・クルーズ・デザーンは持ち前の強打で知られる。2016年11月のプロデビュー戦では、やはりプロデビュー戦だった現在パウンド・フォー・パウンド女王クラレッサ・シールズに敗れた。

クルーズ・デザーンはラスベガスにおける7戦目でマリセラ・コルネホを3-0判定で下し、WBC王者となった。1年後の再戦も3-0判定で制し、空位となっていたWBOタイトルを獲得した。

ここまでのキャリアでハイライトとなったのはエリン・セダルースを3-0判定で破り、女性ボクシング史上初のスーパーミドル級4団体統一王者になった試合である。

次戦:2020年以来、長らく実戦から遠のいているが、最近クルーズ・デザーンは元ミドル級王者サバンナ・マーシャルとの対戦を呼び掛けた。

関連記事:2023年のボクシング界で実現が期待される試合30選:フューリーvsウシク、井上尚弥vsフルトン、井岡vs中谷など

原文:Female pound-for-pound rankings: The top 12 best women's boxers in the world right now
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Tom Gray joined The Sporting News in 2022 after over a decade at Ring Magazine where he served as managing editor. Tom retains his position on The Ring ratings panel and is a full member of the Boxing Writers Association of America.