A・ジョシュア対T・フューリー戦決定が世界中のボクシングファンにとって夢の実現である理由

Andreas Hale

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待ちに待った真の世界ヘビー級統一王座戦がついに実現する。

世界的な新型コロナウイルス感染拡大のさなか、何か月にも渡る交渉の末、WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリーとWBO、WBA、IBFの世界ヘビー級統一王者のアンソニー・ジョシュアが2試合契約に合意した。ボクシング界が主要4団体の時代になって以来、ヘビー級世界統一戦の実現は史上初めてのこととなる。試合会場は未定であるが、両者サイドは対戦に合意しており、すべては動き出している。

あなたは興奮しているだろうか?

そうであるべきである。

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ヘビー級ボクシングは2000年代に続いたクリチコ兄弟による支配が終了した後、ここ数年は盛り上がりを見せてきていた。クリチコ兄弟はめったに米国で試合を行わず、有力な挑戦者も少なかった。そのため、ヘビー級ボクシングはあまり多くの注目を集めることがなかった。しかし、フューリーとジョシュア、そしてデオンテイ・ワイルダーが台頭してきたことによって、この最重量階級のボクシングが再びスポットライトを浴びるようになった。そして、この2人以上のファイターは現在他にはいない。

ジプシー・キングの異名をとるタイソン・フューリーはここまで無敗の戦績を誇る。かつては心の病気に苦しみながらも、アルコール中毒や極端な体重増などの問題を克服したフューリーのカムバックは大きな話題となっている。フューリーは2015年にウラジミール・クリチコに勝利してボクシング界にその名をとどろかせた後、リングに復帰するまでに3年間のブランクを作った。その3年間はフューリーをより強いファイターに変貌させたようだ。強敵ワイルダーと引き分けに持ち込んだ試合はボクシング界を驚かせた。

昨年2月のワイルダーとの再戦では7回TKOで勝利し、戦績を30勝0敗1分、21KOとし、無敗を保ったままでWBC王座を獲得した。

もう一方のアンソニー・ジョシュアはまるでボディビル雑誌から飛び出してきたような人間離れした体の持ち主だ。この英国人ボクサーは間違いなくボクシング界最大のスターである。2012年のロンドンオリンピックで金メダルを獲得し、2013年にプロへ転向してからもヘビー級ボクシングを席捲してきた。KOマシンとして知られ、ファイターの体と意識を切り離すような破壊力あるパンチで対戦相手を粉砕してきた。22連勝を21KOで飾り、クリチコを鮮やかな11回TKOで下してヘビー級統一王者となった。

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しかし、ジョシュアは米国でのデビュー戦となったアンディ・ルイズ戦で予想外の敗戦を喫し、ボクシング・キャリアの再構築を余儀なくされた。ジョシュアがルイズとの再戦を一方的な判定で勝利し、さらに昨年12月にはクブラト・プレフを9回KOで倒したことで、フューリーとの大一番の舞台は整った。

そして今、予想されていたフューリーとワイルダーの第3戦が遠のき、WBO指名挑戦者オレクサンドル・ウシクはジョシュアとの対戦を先に延ばすことになった。もはや越えるべきハードルはない。

これは英国ボクシング史上最大の試合になるだけではなく、これ以上ないほど対照的な2人のファイター同士の対決でもある。

試合を面白くするものはファイトスタイルだけではなく、それにまつわるストーリーも大いに関係があるとはよく言われることだ。この試合は物語に満ちているのである。心の病気と闘ってカムバックしてきたフューリーを応援することもできるだろう。あるいはモデルのような容姿と対戦相手を粉砕する強さを兼ね備えたジョシュアを支持してもよい。どちらを選ぶにしても、楽しめる選択肢となるだろう。

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彼らのファイトスタイルも大きく異なっている。そのことはこの大物同士の対戦をより興味深いものにしている。ジョシュアは慎重にチャンスを狙うファイターだ。ルイズに敗れたことで、 感情をコントロールすることも覚えた。プレフをノックアウトした試合で見られたのは、冷静な戦略に基づいた強烈な連打によって、より破壊力を増したジョシュアの姿だ。新たな武器を手に入れたジョシュアと対等に戦うことは困難だが、それができるファイターがいるとしたら、それはフューリーである。

フューリーが持つ岩のようなアゴと巨体に加えた技術はヘビー級でもめったに見ることはできない。他の多くの100キロ超のファイターたちのようにリングをただ歩き回るだけではない。強力なパンチを見舞う前に、鮮やかなステップで相手を翻弄することもできるのだ。

この試合は魅力と恐怖が同じように存在する暴力的なバレエの舞台となるだろう。たった一発のパンチが試合を終わらせることも大いにあり得る。そしてどちらが最後に立っているかを世界は見ることができる。

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さらに、再戦条項が既に契約に含まれているので、最初の試合がどのような結果に終わろうとも、ファンはすぐに2戦目を見ることができる。これこそがボクシングのあるべき姿だ。最強ファイター同士の対戦が政治的理由によって妨げられることはない。プロモーターたちはエゴを横に置き、他の対戦相手たちは道を開け、ボクシング界の巨人たちが最高の舞台で鍛えぬいたパフォーマンスを披露する。これ以上望むものは何もない。

ただ一つの質問はこの歴史的な一戦が行われる夜にあなたはどこにいるだろうかということだ。

(翻訳:角谷剛)

Andreas Hale

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Andreas Hale is the senior editor for combat sports at The Sporting News. Formerly at DAZN, Hale has written for various combat sports outlets, including The Ring, Sherdog, Boxing Scene, FIGHT, Champions and others. He has been ringside for many of combat sports’ biggest events, which include Mayweather-Pacquiao, Mayweather-McGregor, Canelo-GGG, De La Hoya-Pacquiao, UFC 229, UFC 202 and UFC 196, among others. He also has spent nearly two decades in entertainment journalism as an editor for BET and HipHopDX while contributing to MTV, Billboard, The Grio, The Root, Revolt, The Source, The Grammys and a host of others. He also produced documentaries on Kendrick Lamar, Gennadiy Golovkin and Paul George for Jay-Z’s website Life+Times.