パッキャオJrが公式アマチュアデビュー、父は大統領選苦戦の報道も

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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先週末、プロボクシングの元世界6階級王者でフィリピンの国民的英雄マニー・パッキャオの長男エマニュエル(マニー)ジュニアが、米国で公式なアマチュアデビューを飾った。米名門誌『The Ring』などが伝えた。一方、息子のアマデビュー戦を称えた父は5月の大統領選で苦戦が伝えられている。

"ジミュエル"の愛称で知られるマニーJrは、偉大な父が引退した2021年9月以前となる2019年2月、母国のボクシングジムで本格的に競技を始めたことが伝えられた。母親ジンキーさんは猛反対で、父親であるパッキャオは「パパは貧乏だったからボクシングを始めた。お前はボクシングをする必要はないんだ」と説得しようとしたことを明かしたが、ジミュエルはそれでもボクシングを諦めず、パッキャオもその意志を汲み、息子にアドバイスを与えてきた。

ジミュエルは俳優・モデル・YouTuberとして活動していたが、2020年頃からそれらの活動を縮小。父のアシスタントを10年間務めていたマービン・ソモディオ氏の指導を受け、父も拠点にしていた米ロサンゼルスのワイルドカードボクシングクラブでトレーニングに励んでいたという。昨年10月には、世界4階級制覇王者カネロ・アルバレスから手ほどきを受ける動画も『ESPN Ringside』によって公開された。

そしてジミュエルは、3月12日夜、カリフォルニア州サンディエゴのハウスオブボクシングジムで、公式のアマチュアデビュー戦を行なった。アマの試合とは思えぬほどジム内には所狭しと観衆が集まるなか、スーパーライト(旧ジュニアウェルター、プロでは61.235 - 63.503kg、アマでは60 - 64kg)級としてリングにあがったジミュエルは、新人のアンドレス・ロサレス相手に、サウスポースタイルだった父とは逆のオーソドックススタイルで臨んだ。

父譲りのソリッドなジャブやオーバーハンドの右ストレートなどを要所で決め、最終3ラウンドには疲れがみえる相手の顔面やボディにしっかりパンチを当てていた。KOは奪えずも、レフェリーはジミュエルの腕を挙げ、勝者として宣言した。スコアカードは公開されなかったものの、ジミュエル優勢とみていい内容だった。試合の映像はボクシングウェブメディア『Fighthype.com』が公開した。

コーチを務めるソモディオ氏は「彼(ジミュエル)は私に(ボクサーとしての)ハートをみせてくれた。彼はもっと強くなっていくでしょう」と称賛。Ring誌によるとジミュエルはこのままソモディオ氏のもとでトレーニングを続け、アマ2戦目に備えるという。

試合後、父パッキャオは自身のInstagramに、息子の試合の画像とともに「私はあなたをとても誇りに思っています」と記した。

一方、パッキャオ自身は現在、5月に実施されるフィリピン大統領選候補として選挙活動中だが、苦戦が伝えられている。

2月13日に発表された国内世論調査によると1月後半の調査において、約20年間の独裁政権を敷いた故マルコス第10代大統領の長男"ボンボン"ことフェルディナンド・マルコス元上院議員が支持率60%と大差をつけており、パッキャオの支持率は昨年12月から変わらず、8%に留まっていることが明らかになった。マルコス氏の支持者の大半が、独裁者だった父親の圧政や腐敗政権を知らない若年層だとされ、汚職根絶をテーマにするパッキャオが情勢を覆すことは難しいとみられている。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。