ロマチェンコに続き、現世界ヘビー級統一王者ウシクもウクライナ防衛に参加か

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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Oleksandr Usyk with Ukraina Flag

ボクシングの元世界3階級制覇王者ワシル・ロマチェンコが、ロシアから軍事侵攻を受ける母国ウクライナ防衛のため、領土防衛隊に参加したことが本人のSNSで明らかになったが、現WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者のオレクサンドル・ウシクも英国からウクライナに帰国し、国家防衛に就く可能性が出てきた。

2月24日のロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から3日、元世界3階級制覇王者として知られるロマチェンコは、27日に自身のFacebookに、ウクライナの軍服に身を包み、地元オデッサ州ビルホロド=ドニストロフスキーのビタリー・グラジダン市長と並んで立つ画像を投稿。「領土防衛を担うビルホロド=ドニストロフスキー大隊が結成され、配備されました」と記し、肩にはAKS74Uらしきアサルトライフルをかけていた。

同地区は13世紀から造成されたアッケルマン要塞が存在し、歴史的に黒海からの侵入を阻止する要衝として、ウクライナ防衛の象徴的なエリアのひとつとされる。

ロシア軍侵攻後、元世界ヘビー級王者でキエフの市長を務めるビタリ・クリチコとその弟で主要3団体ヘビー級統一王者だったウラジミール・クリチコが予備役の募集を呼びかけていた。母国の英雄で、ウクライナボクシング界のレジェンドの呼びかけを受け、ギリシャに滞在していたロマチェンコは母国に戻り、領土防衛隊に入隊したようだ。

また、昨年9月にアンソニー・ジョシュア(英国)を破りWBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者となったウシクもウクライナ出身者として知られるが、自身のInstagramに反戦メッセージ動画を投稿した。

「ロシアの人々に伝えたい。私たちが正当な兄弟と考えるなら、あなたの子供たちを私たちの国に行かせないでください。私たちと戦わないでください。また、ウラジーミル・プーチン大統領にも申し上げる。あなたはこの戦争を止めることができます。ただ座って、主張せずに我々と交渉してください。私たちの子供、妻、祖母は地下室に隠れています... 私たちは自分たちの国にいる。ほかに道がないのなら…自分たちで守るしかない…だからやめろ、この戦争をやめるんだ!」

こうしたメッセージを発信したにもかかわらず、ウシク自身は練習拠点である英国にいたことから、インターネット上で「母国から逃げた」と誹謗中傷を受けていたが、新たな動画でウクライナに帰国していることを明かした。

現時点ではロマチェンコのように兵役に就くことについて明言はしていないものの、ウクライナ政府は国民総動員令を発出し、18〜60歳の男性市民は90日以内に予備役に就き、国家防衛に携わることを命じている。国外に出ることも禁止されるため、5月実施で調整中とされるジョシュアとの再戦を前に、長期化もあり得る戦火の母国に戻ったということは、ウシクも予備役に就く可能性があると見ていいだろう。

28日に始まったロシア-ウクライナ間の停戦交渉も予断を許さず、ボクシング界にとっては、最悪の事態も想定しなければならない状況となった。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

神宮泰暁 Yasuaki Shingu Photo

日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。