2023年1月6日、元3階級制覇王者・亀田興毅氏によるボクシングイベント『3150FIGHT vol.4』が、エディオンアリーナ大阪で行われた。ダブル世界戦の初戦、IBF世界ミニマム級王座戦は、挑戦者・重岡銀次朗が優勢に進めるなか、王者バラダレスがバッティングでの負傷によって無判定試合に終わった。
一方、WBO世界ミニマム級王者・谷口将隆は、挑戦者ジェルサェムによもやの2回KO負けを喫し、日本勢は揃って不本意な結果となった。同大会はABEMAで新設された「ボクシングチャンネル」で独占無料配信された。
皇治 vs. ヒロキングなど、これまでエンタメ色が強かった『3150FIGHT』だが、大会前にファウンダーの亀田興毅氏が「ボクシングファンだけにみてほしい」と訴えた通り、今大会は純粋なボクシング興行を目指した。
力石政法が木村吉光を見事な左アッパーで撃ち抜き、世界タイトル挑戦に相応しい好内容での勝利を挙げ、但馬ミツロの剛腕コンビネーションで1ラウンドKOを披露するなど、見ごたえのある試合が続いた。そして、今大会の目玉となったのがミニマム級のダブル世界戦だ。
今大会は、インターネットTV・動画配信サービスの『ABEMA』が新設した「ボクシングチャンネル」のこけら落とし配信に選ばれた。地上波テレビ放送局がボクシング中継に消極的な現在、それに代わるビッグマッチの無料放送・配信が期待されるなか、「ボクシングチャンネル」が誕生した格好だ。
これを受け、ダブル世界戦前には亀田興毅氏が「ボクシング界にとって画期的なこと」と挨拶に立ち、リングサイドで見守る、ABEMAの経営者・藤田晋氏に感謝を述べた。藤田氏の横には芸能界を引退して久しい、島田紳助氏の姿もあった。
「人生無敗」の重岡が不透明決着に号泣
まさしく「最高」のお膳立てが揃ったなか、まずは「ミニマム級の怪物」「人生無敗」(アマチュア~プロまで。実兄との対戦を避けるための棄権試合を除く)という大看板で売出中の重岡銀次朗が晴れ舞台に立ったが、ここに来てまさかの事態となった。
IBF王者ダニエル・バラダレス(メキシコ)相手に世界タイトル初挑戦となった重岡は、1Rは距離感を測り様子見を終えると、2Rに得意の左ボディを浴びせた。王者は露骨に嫌がり、低めのガードスタンスをとり出した。
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— ABEMA格闘TIMES (@Abema_Fight) January 6, 2023
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3R、さらに重岡の強烈な左ボディを浴びた王者は、1分過ぎに重岡と接触した際、偶発的バッティングを主張して試合中断を要求する。結局、レフェリーが試合続行不可能と判断。試合序盤での中断のため、一旦は3R・2分48秒、負傷引き分けという裁定が下り、場内は騒然、重岡は号泣する事態に。リングサイドでは関係者たちも混乱する状況となったが、最終的に「無判定(No Decision)試合」がアナウンスされた。
リプレイ映像では、むしろバラダレスから重岡のアゴに脳天からバッティングを仕掛けているようにも見える状況ながら、王者のベルト保持という不透明決着となってしまった。IBFへの意見書の提出などで裁定が変わる可能性もあるが、この場ではこれ以上の展開はなかった。
谷口はまさかのKO負け
スッキリしない状況のなか、長々とした入場セグメントを経てメインイベントに登場したWBO世界ミニマム級王者の谷口将隆は、挑戦者のメルビン・ジェルサェム(フィリピン)を迎え打ったが、この試合でもまさかの結果が待っていた。
1Rからリーチ差を活かしてプレスをかけていく王者の谷口は、挑戦者の振りの強いパンチを見ながら左ボディストレートなどで削っていく。2Rも谷口がペースを作っていくが、ちょうどその手が止まった瞬間、コーナーを背にしたジェルサェムは、左ジャブから右ストレートをがら空きとなった谷口の顔面に叩き込んだ。どうにか立ち上がった谷口だが、脚に力が入らず、レフェリーが試合をストップ。新WBO王者誕生の瞬間となった。
ダブル世界戦で日本勢はよもやの共倒れという結末となってしまったが、亀田興毅氏は「何が起こるかわからないのが『3150FIGHT』」と総括。「重岡選手の試合は必ずリマッチを組みます」と誓い、最後に4月の東京大会を告知した。
また、第2試合でハン・チャンス相手にドローとなったサトシ・イシイ(石井慧)は、試合後に「(ボクシングは)難しい。これが最後かな」と漏らし、ボクシング引退を示唆した。北京夏季五輪柔道男子100キロ超級金メダリストで格闘家の石井は、クロアチアでプロボクシングライセンスを取得後、2022年8月にプロ公式戦デビューをはたし、この試合が2試合目だった。