ワイルダーは右手骨折で全治6か月…ジョシュア戦模索で戦列復帰か

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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10月9日、WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)との第3戦で11回KO負けを喫したデオンテイ・ワイルダー(米国)は、右手の骨折により全治約6か月であることがわかった。プロモーターはさらにアンソニー・ジョシュア(英国)相手の復帰戦シナリオを披露。専門メディア『Boxing Scene』が伝えた。

フューリーとの第3戦は、かのマイク・タイソンが「史上最高の試合のひとつ」と絶賛しただけでなく、ファンや関係者からボクシング史に残る激戦と評価され、ワイルダーは敗れながらも株を上げた。リングサイドで観戦したWBCのマウリシオ・スライマン会長は「ワイルダーは獅子の心を持ち続けた。ローマ時代の剣闘士のようだった。彼がヘビー級の頂きを取り戻すというなら、その意思と勇敢な努力は称賛されるべきだ。敗北せれど、ワイルダーは世界から尊敬を称賛と勝ち取った」とベタ褒めだった。

激闘の代償として、ワイルダーは右の拳を骨折していたことが判明した。ワイルダーのプロモーターであるシェリー・フィンケルが現状を伝えている。

「(ワイルダー)彼は(故郷のアラバマで)手術を受けなければならない。すべてがうまくいけば、手術後、おそらく4月か5月にはリングに立てることでしょう」

第3戦の開催地ネバダ州のアスレチック・コミッションは、ワイルダーに医療的な試合禁止期間として6か月(2022年4月8日まで)を定めたという。なお、フューリーには通常通り45日間の試合禁止期間が指示されている。

最大の武器である右手の骨折、そして半年の試合禁止期間はキャリアに多少なりとも影響があるだろう。10月22日で36歳になるワイルダーにとっては、"引退"が現実味を増した感もあった。

ただ、フィンケル氏はワイルダーの復帰ロードをすでに思い描いているようだ。フューリーとのライバル関係に終止符を打つことになったが、ワイルダーは次の標的として、アンソニー・ジョシュア(英国)に「興味を持っている」というのだ。ワイルダーのトレーナー、マリク・スコット氏もワイルダーが引退する予定はないと話している。

ジョシュアはオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)に敗れ、WBAスーパー・IBF・WBO世界ヘビー級統一王座を失い、来年2月か3月にダイレクトリマッチに挑む予定だ。

WBC同級王者フューリーは、10月30日の同暫定王者ディリアン・ホワイト(英国)対オットー・ワーリン戦の勝者との指名タイトルマッチを年末に強いられる可能性が高いが、その先には、ウシクかジョシュアとの主要4団体統一戦を計画している。

ワイルダー陣営が狙うのは、ジョシュアがウシクとの再戦に敗れた場合だ。今後、フューリーが無冠の相手よりも4団体統一戦を優先するであろうことは明白で、この場合、ジョシュアの立場は宙に浮くと見られる。

ワイルダー陣営は華々しい復帰に向けて、ジョシュア戦というシナリオに賭けたいようだが、各陣営の思惑が入り乱れる現在のヘビー級戦線でこのまま上手くことが運ぶのかは定かではない。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。