タイソン・フューリーが2023年に目指すウシクとジョイスとのビッグマッチ連戦…ジョシュアとの対戦には否定的

Dom Farrell

タイソン・フューリーが2023年に目指すウシクとジョイスとのビッグマッチ連戦…ジョシュアとの対戦には否定的  image

WBC世界ヘビー級王者タイソン・フューリー(英国)の2022年は、4月のディリアン・ホワイト(英国)戦後の仮りそめの引退生活と、先日のデレク・チゾラ(英国)との復帰戦で打ち止めとなった。デオンテイ・ワイルダー(米国)とのトリロジー決着戦があった2021年に比べると、小波のような1年だった。

そんなフューリーは、2023年に3団体統一王者オレクサンドル・ウシク(ウクライナ)らを筆頭としたスターファイターとのビッグマッチを目指すという。本誌ドム・ファレル(Dom Farrell)記者が伝える。

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2023年のフューリーは本気モード? 無敗ファイターとの激突へ

デレク・チゾラには勝ち目はなかった。試合後の腫れあがった顔がすべてを物語っていた。

12月3日(日本時間4日)にトットナム・ホットスパー・スタジアムでチゾラはタイソン・フューリーを相手に10ラウンドを戦った。しかし、それは2010年代に行われた過去の22ラウンドと何ら変わるものではなかった。

WBCヘビー級世界王者のフューリーは、いまやボクシング界でほぼ無敵と呼んでいい存在だ。フューリーはリングに上がったチゾラの勇気を称え、感謝の言葉を述べた。人気も大金も手に入れたフューリーは健康であり続けることを願っている。

今年の初め、フューリーはいったん引退しようとしたが、どうやら気が変わったようだ。予想通りにチゾラを圧倒したあと、フューリーは次の試合についての質問に熱意を込めて答えた。

「2023年は私のキャリアで最大の年になるだろう。ファンが望んでいるビッグマッチを実現させたいと思っている」と、フューリーは試合後の記者会見で述べた。

フューリーはすでにリングの上でWBA・IBF・WBO世界ヘビー級統一王者オレクサンドル・ウシクとにらみ合いを演じていた。もっとも、言葉を発していたのはフューリーだけだった。ウシク(「ウサギ」、「95キロのちび」、「小さなソーセージ」などの罵言をフューリーから受けた)は不気味な無言を守った。わずかに唇をゆがめ、冷笑を浮かべただけだった。

2016年リオデジャネイロ・オリンピック(スーパーヘビー級)銀メダリストでプロ15勝無敗のジョー・ジョイスもこのにらみ合いに加わったことで、緊張は破られた。フューリーはこの2人とも戦う準備ができていると述べた。

「次はウシクと戦いたい。場所はサウジアラビアでも母国イギリスでもどちらでもいい。ファンは誰が唯一のチャンピオンなのかを知りたいはずだ。それに応えようじゃないか」とフューリーは豪語した。

「ウシクはこの挑戦に乗り気だ。今夜この会場に来たことには敬意を表する。けっして戦いやすい対戦相手ではない。すばしっこいサウスポーで、技術レベルも高い。(ロンドン)オリンピック(ヘビー級)金メダリストだし、実力は本物だ。私はこの挑戦を本気で実現したいと思っている」

「しかし、もし何らかの理由でウシク戦が実現しないのなら、ジョー・ジョイスとウェンブリー・スタジアムで戦おうじゃないか。ウシク戦が実現するのなら、まずウシクが先で、そのあとにジョイス戦だ。よい考えだろう?」

フューリーの英国圏プロモーターであるフランク・ウォーレン氏は同時にジョイスもクライアントに抱えている。ジプシー・キング(フューリーの通称)が絶対的な強さを見せ続けていることを喜び、英国における「ヘビー級ボクシング史上最大の年」を演出することを確約した。

約30分間の記者会見のうち最初の3分の1はウォーレン氏がフューリーの家族愛を称え、3冊の著書を宣伝する独演会のようだった。

今後の対戦相手に話題が移るとウシクとジョイスに注目が集まったが、誰かがアンソニー・ジョシュアの名前を口にした。ジョシュアは本来ならこの日にフューリーと対戦することで基本的に合意していたが、フューリーが設定した交渉期限までに具体的なビジネス上の条件などを回答することはなかった。

結局フューリーは代わりに同じプロモーターとマネージメント会社に属するチゾラを対戦相手に選んだ。ウォーレン氏はかつて統一王座を2度獲得したジョシュアとの交渉を「6週間の無駄」であったと表現した。

「可能性はゼロだ。ジョシュアとの対戦はない」とフューリーは言った。「私は本当の挑戦者と戦いたい。戦うことを望む男とね」

「ウシクはこの会場にやってきた。リングサイドに立って、私と正面からにらみ合った。戦いたいと願っているからだ。ジョシュアと私は同じ国に住んでいる。それなのにジョシュアがウシクと同じことをするのを見たことはないだろう。私の顔を見て、『戦おうじゃないか』と言ったか。答えはノーだ」

「ジョーも私たちの仲間に入りたいと言っている。素晴らしいことだ。『俺もやるぞ』と奴が言うから、『いいぜ、ロイヤルランブル(WWEの時間差入場式バトルロイヤル戦)をしようじゃないか』と答えたのさ」

フューリーは近い将来WWE(プロレス)にふたたび登場する日が来るのだろうと思わせるが、幸いなことに、どうやら現在は伝説を作ることに真剣のようだ。フューリーがボクシング界に留まる限り、ウシクに連敗したジョシュアも対戦相手候補に残ることになる。

この日我々が目にしたのは、ファイターとプロモーターが力を合わせて、同階級にいるほかの無敗ファイターたちとの対戦を画策していることだ。そうなると(3敗の)ジョシュアの立場はあまり強くない。なにしろフューリーが手軽な相手と試合をするだけで、6万人近い観衆が集まるのだから。

それでは、この34歳になった人気者のチャンピオンが無敗伝説の幕を下ろす対戦相手は誰がベストなのだろうか。

「ウシクとジョイスのどちらが強敵かってみなに聞かれたよ。私の意見では、ウシクの方が賢いボクサーだけど、ジョイスはとても力強い。私にとってはジョイスの方が強敵だ。100パーセント、そう思うよ」とフューリーは言った。

「ジョイスは大きい。身長198cmで体重124kgだからね。私の正面からぶつかってくるだろう。その点、ウシクはポイント狙いでジャブを打ちながらリングのなかを逃げ回るだろうね」

ポイント狙いの試合運びは、かつてフューリー自身が得意としていた戦法だ。2015年にウラジミール・クリチコを判定で下した試合が最も有名だ。だが、現在では違うタイプのファイターになった。中間距離で重いパンチを放ち、自信を持って打ち合うようになった。チゾラはその戦法で粉砕できた。では、もっと試合巧者のウシクが相手ではどうなるだろうか。

「誰でも歳をとる。ウシクは私より年上だ。彼は35歳で、私は34歳だからね。公平なマッチングじゃないかな」とフューリーはおどけた。

「もしウシクが22歳だとしたら、話はまるで別になるかもしれない。しかし、彼はもはや年寄りだ。アマチュアで300戦もしている。もう体はダメージでボロボロのはずだよ」

「私はウシクがボクシング界で最もフットワークが良いとは思わないな。私がスピードで負けているとも思わない。ウシクはAJ(アンソニー・ジョシュア)との試合でもけっこうパンチを食らっていたしね」

「ウシクはサウスポーだけど、私の長いリーチとスピードで攻略できると思う。むしろ私の方が速いと思う。私はこんなサイズだけど、ヘビー級では最速だと思っている」

こうした話題は、『議論のための議論』になりがちだ。そして賢いフューリーはすべての答えを用意することができる。チゾラが予想通り北ロンドンで散ったあと、これ以上待つための時間は残されていないはずだ。

原文: Tyson Fury lines up blockbuster 2023 with Oleksandr Usyk and Joe Joyce; Anthony Joshua out in the cold
翻訳:角谷剛
編集:スポーティングニュース日本版編集部

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Dom Farrell

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Dom is the senior content producer for Sporting News UK. He previously worked as fan brands editor for Manchester City at Reach Plc. Prior to that, he built more than a decade of experience in the sports journalism industry, primarily for the Stats Perform and Press Association news agencies. Dom has covered major football events on location, including the entirety of Euro 2016 and the 2018 World Cup in Paris and St Petersburg respectively, along with numerous high-profile Premier League, Champions League and England international matches. Cricket and boxing are his other major sporting passions and he has covered the likes of Anthony Joshua, Tyson Fury, Wladimir Klitschko, Gennadiy Golovkin and Vasyl Lomachenko live from ringside.