【Bリーグ チャンピオンシップ 2017-18】千葉ジェッツ、セミファイナル進出を勝ち獲った団結力

Hiroshi Kato

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「We got stay together! Come on!」(今こそチームが団結しなければいけないんだ! カモン!)

5月12日にスタートした2017-18シーズンのB.LEAGUE(Bリーグ)王者を決定するチャンピオンシップ準々決勝(クォーターファイナル)第1戦、千葉ジェッツは87-65と川崎ブレイブサンダースにホームの船橋アリーナで勝利した。

しかし、翌13日の第2戦は前半を終えて32-38と劣勢だった。ハーフタイムにロッカールームへ引き上げる際、千葉のアキ・チェンバースが富樫勇樹とレオ・ライオンズに掛けたのが冒頭の言葉だった。

第1戦とは対照的に前半で相手にリードを許す状況下で、富樫とライオンズの間に感じられた若干の険悪ムードを察し、チェンバースが間に入ったのだ。

後半に逆転を狙った千葉だったが、フィールドゴール成功率は38.2%と芳しくなく、61-71と第2戦を落としてしまう。富樫は28分00秒の出場で8本のシュートを放つも0得点、4アシスト、2リバウンド。ライオンズもファウルトラブルで14分51秒のみの出場、9得点、2リバウンド、0アシストに終わった。

そんななか、マイケル・パーカーは22得点、12リバウンドと、得点とリバウンドでチームトップの成績を残していた。試合後、富樫は第2戦終了間際にパーカーに「この試合は任せろ。第3戦の10分間はお前とレオでしっかりゲームを決めてくれ」と声を掛けられていたことを明かしている。

第2戦に敗れた千葉は、20分のインターバルをおいて前後半5分ハーフの第3戦で準決勝(セミファイナル)進出か否かが決定することとなった。そして第3戦、千葉は激闘の末に22-15となんとか川崎を退け、翌週(19日、20日)に行われるセミファイナルの切符を勝ち獲った。

第3戦直前に富樫勇樹が浴びた「シャワー」

第2戦に敗れたわずか20分後に行われる第3戦に見事勝利した千葉の富樫に、試合後こう聞いた。

――第2戦に敗戦した直後の第3戦の準備には難しさがあったかと思いますが、今までの経験や尊敬する人からの影響などで良い準備ができましたか? また、どのような気持ちで第3戦に望みましたか?

富樫: 第2戦の時にもう少し自分のリズムでバスケができていれば変わったかもしれませんが、本当に今シーズンで一番というくらいひどかったので……。20分しかないなかでシャワーを浴びに行って、『新しい試合』と自分に言い聞かせるというか。時間がないなかでシャワーを浴びて戻ってきたら、コーチ陣は焦っていたんですけど……。

富樫がそう答えると、その場にいたメディアから笑い声が漏れた。さらに富樫はこう続けた。

「(シャワーから)戻ってきたら(試合開始まで)もう7分と言われて。もうアップの時間はないし。それは分かっていたなかで、それ以上に自分のシュートタッチ、シューティングをするよりも『気持ちの切り替えが全て』だと思っていたので、そこはすごく良かったと思います」。

――気持ちの切り替えがうまくいったのはアメリカでの経験、注目している人や選手からの影響がありましたか?

富樫: どうですかね。(このような状況で)何か(アドバイス)を言われたことはないので。ただ切り替えるという部分ではBリーグもそうですけど、今まで日本は土日で2試合あるスケジュールが続いているので、土曜日に負けた試合で次の日に切り替えるのと同じで、その時間が短いだけで、第2戦から第3戦には『完全に新しいゲーム』だと思って臨めました。

Bリーグのチャンピオンシップのレギュレーションは特殊で、第2戦を終えて1勝1敗になった場合、第2戦終了から20分後に前後半5分の第3戦で決着をつけるルールを採用している。第3戦までわずか20分しかない状況であれば、シャワーを浴びるよりも、体力の回復を図ったり、シューティングで感覚の調整をしたり、コーチやチームメイトと戦術について話し合ったりするのが普通だろう。それでも富樫は、シャワーで気持ちを切り替えることを優先した。

結果として、ほかの何よりも気持ちを切り替えることが、富樫自身とチームにとって好結果を生み出した。技術や体力以上に、気の持ちようがパフォーマンスに好影響をもたらすことがある、ということが分かるエピソードだろう。

千葉ジェッツの外国籍・帰化選手たちの貢献

エドワーズは試合後、「第2戦と第3戦の間の20分間はとても疲れていたので休息を取ることに集中していた」と語っている。

さらに「今日はいつものようにチームでハードにプレイしきれていない。今シーズン60試合は素晴らしい戦いを続けてきたが、チームの最終目標(シーズン王者)を成し遂げる前に、このファーストラウンド(準々決勝)で負けるわけにはいかない。自分たちが持っているものを全てコートに置いてこよう」と、第3戦前にチームメイトと話をしていたという。エドワーズは22-15と勝利した第3戦で両チーム最多の8得点とチームを勝利に導いた。

ライオンズは、第3戦で富樫と2人でボールを運び、ゲームメイクをすることで川崎のディフェンスに的を絞らせない重要な役割を果たした。第2戦でファウルトラブルにより出場時間を制限されていたこともあり、エネルギッシュさは際立っており、マッチアップしていたジョシュ・デービスを第3戦で0点に抑え、勝負所での3ポイントシュートとフリースロー2本をしっかりと決めるなど、5得点、1リバウンド、1アシスト、1スティール、1ブロックショットのオールラウンドな活躍を見せた。

そして、第1戦、2戦とスターティングメンバーだったチェンバースとパーカーは、第3戦ではベンチからチームの勝利を見守った。チェンバースはアメリカ出身だが、母親が日本人であるため日本国籍を所有している。パーカーも2015年に帰化資格を取得した。

彼らが前述の外国籍選手と日本人選手の間に立って、状況に合わせて臨機応変に自分の役割に徹していることも千葉の強さと言える。ゲームで活躍するだけではなく、時にはベンチからチームを鼓舞するなど、彼らがこの試合でチームメイトにかけた言葉がチームの団結力をさらに強固にしたことは疑う余地がない。

ニック・ファジーカスの帰化によりますます手強いチームになった川崎との激戦に、チームで一致団結して勝利した経験は、千葉をさらに成長させたことだろう。

冒頭に記したチェンバースの「We got stay together! Come on!」という言葉は、まさに千葉のスタイルを体現している。千葉ジェッツは、選手だけでなく、チームスタッフ、フロント、ブースター、チームに関わる全ての人々が団結し、「天皇杯」「観客動員数」に続く「Bリーグ王者」の『3冠達成』を目指して、5月19~20日のセミファイナル(準決勝)、琉球ゴールデンキングス戦に臨む。

取材・文・写真: 加藤洋

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