[宮地陽子コラム第112回]米国でプレイする日本人大学生バスケットボール選手たち(男子編)

宮地陽子 Yoko Miyaji

[宮地陽子コラム第112回]米国でプレイする日本人大学生バスケットボール選手たち(男子編) image

ネブラスカ大学の富永啓生

アメリカで活動する日本人大学生選手が増えている。今シーズン、アメリカの大学トップレベルであるNCAAディビジョンⅠ(以下D1)でプレイする選手は、わかっているだけで男子選手6人、女子選手5人、合計11人。女子選手は過去2シーズンから引き続き5人だが、男子の同時6人は史上最多と思われる。

人数が増えた理由としては、NCAAからNBAに進んで活躍していている渡邊雄太や八村塁に刺激を受けてアメリカの大学を目指す選手が増えたことや、日本バスケットボール協会がアメリカ育ちの日本人選手たちを代表候補として発掘するようになり、彼らのアメリカでの活動が把握しやすくなったことなどがあげられる。

▶豪華景品付き! 「スポーツ番付勝利予想」に挑戦しよう

関連記事:宮地陽子コラム バックナンバー

参考までに、過去にD1でプレイした日本人選手(NCAA所属時に日本国籍を持っていた選手)は、当方で把握できているだけで男子11人、女子12人。ただし、インターネットが発達していない時代にアメリカ育ちで二重国籍等、日本国籍を持っていながら日本では知られていない選手がいたことは想像に難くなく、これが正式な人数ではない。

今はインターネットでボックススコアを確認することはもちろん、試合によっては無料や有料のストリーミング中継を日本から見られることもある。彼らのアメリカでの活躍は、日本のファンにとって嬉しいことであるだけでなく、日本代表や日本バスケットボール界の底上げにもつながる。そのことは、日本代表やBリーグにすでに多くのアメリカ大学出身の選手がいることからも明らかだ。

今シーズン、D1で活躍する選手たち、そして今後D1入りを目指してアメリカで活動している選手たちを簡単に紹介しよう(前編で男子選手、後編で女子選手。スタッツ等は2022 年11月29日時点)。


昨季からの更なる成長が期待される富永とロバーツ

男子では何といっても、ネブラスカ大で2年目、ジュニア(大学3年)のシーズンを戦う富永啓生。日本人男子選手として、(わかっている中では)初めてD1の中でも強豪揃いのハイメジャー・カンファレンスのひとつ、ビッグテン・カンファレンスでプレイしている。短大から編入した昨季は、フィジカルが強く、体格の大きい選手が揃ったビッグテン・カンファレンスでの戦いに苦戦し、シューターとして厳しくマークされたため、得意の3ポイントショットも成功率がシーズン通して33%に終わった。その後、今夏に日本代表で国際試合を経験したことで成長して自信をつけ、2シーズン目の今季は、昨季を上回る活躍が期待される。

ニューヨーク州にあるストーニーブルック大に所属するガードのロバーツ・ケインは、カリフォルニア出身で、高校卒業後の2020-21シーズンに日本に帰国し、NCAA進学を考えてアマチュアとしてB2のアースフレンズ東京Zでプレイした後、ストーニーブルック大から奨学金のオファーを獲得した。フレッシュマン(1年)だった昨季は出場時間が少なかったが、今季はローテーション入りして開幕から7試合の平均出場時間は20分弱に伸びた。

期待のフレッシュマン

男子選手の残り4人は今年からD1入りしたフレッシュマン(1年生)。D1で1年のうちからローテーション入りすることは難しく、出場時間は安定しなかったり限られているが、どの選手も魅力ある才能の持ち主だ。面白いのは、彼らがD1に入るまでにたどった道が三者三様だということ。今後D1を目指す若者たちにとっても、彼らの経験は参考になる。

バージニア州のラドフォード大に入った山崎一渉は明成高校出身。同校の先輩、八村塁に憧れて明成に進学し、八村と同じように明成高校卒業と同時にD1に進学した。ラドフォード大のヘッドコーチ、ダリス・ニコルスによると、八村をゴンザガ大にリクルートしたトミー・ロイド(現アリゾナ大ヘッドコーチ)からの推薦があったことも、山崎に奨学金をオファーする決め手になったという。ここまで6試合に出場し、平均10.5分、3.7得点。将来的にはサイズのあるシューターとしてチームに貢献することを期待されている。渡米から半年弱の間に体重も10kg増量してフィジカルも強くなり、練習中にわからないことを質問するまでに英語力もアップ。順調に適応している。2021年7月にはU19日本代表としてFIBA U19ワールドカップに出場している。

イリノイ州のノーザンイリノイ大でプレイする須藤タイレル拓(アメリカでの登録名はヤングブラッド拓)は、横浜の清風高校を卒業後、スラムダンク奨学金13期生としてプレップスクールで2シーズンを過ごした。そしてノーザンイリノイ大など3校の奨学金オファーを受け、今秋、ノーザンイリノイ大に進学。運動能力が高く、1対1の能力に長けたガード選手で、身長183cmながら、203cmあるウィングスパンも魅力だ。ここまで6試合、平均4.7分出場と、今はまだ出番が限られているが、「もっとチームを助けられる選手になりたい」と抱負を語る。

テキサス州のラマー大に所属する山ノ内ウィリアムズ勇登は、ロバーツの歩んだ道を参考にして、ロサンゼルスの高校を卒業した後にアースフレンズZ東京でアマチュアとして1シーズン所属。複数のD1奨学金オファーの中からラマー大を選んで進学した。身長210cmの長身で、ラマー大ではセンターを務める。ラマー大の今季のチームは4年生が1人もいず、1年生(1年目レッドシャツで試合出場しなかった選手も含む)が7人という若いチーム。その中で、山ノ内はこれまで6試合、平均9.2分出場し、3.7得点をあげている。2021年7月にはU19日本代表としてFIBA U19ワールドカップに出場した。

ピッツバーグ州のセントフランシス大に進学したマックニール・キシャーン大河は、東京を拠点とするユースチーム、Tokyo Samurai出身の184cmガード選手。セントフランシスでは今季、ここまでまだ試合出場機会はないが、今後の成長が楽しみなひとりだ。2022年8月にはU18日本代表としてFIBA U18アジア選手権大会に出場した。

彼らのほかにも、田中力(NAIAベセル大1年)、菅野ブルース(NJCAA エルスワース短大1年)、小林良(NCAAディビジョンⅡ ブリッジポート大 大学院生)は、現在NCAA D1に所属していないが、今後、編入でのD1入りを狙っている。菅野は、今年10月時点ですでに2校のD1チーム、ドレクセル大とタウソン大から奨学金オファーを受けており、短大1年目を終えた来年にD1入りする見込みだ。また、現在ニューマン高校ジュニア(4年制の3年)のテーブス流河も、すでに8校のD1チームから奨学金のオファーを受けており、2024年からD1入りの予定と、今後さらにD1選手が増えそうだ。


NCAA D1でプレイする日本人選手たち

富永啓生 ネブラスカ大3年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

ロバーツ・ケイン ストーニーブルック大2年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

山崎一渉 ラドフォード大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

須藤タイレル拓(ヤングブラッド拓) ノーザンイリノイ大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

山ノ内ウィリアムズ勇登 ラマー大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

マックニール・キシャーン大河 セントフランシス大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

今後のD1入りを目指す日本人選手たち

田中力 NAIA ベセル大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

菅野ブルース NJCAA エルスワース短大1年

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

小林良 NCAA D2 ブリッジポート大 大学院生

試合スケジュールプロフィール&スタッツ

テーブス流河 ニューマン高校3年(2024年卒業予定)

試合スケジュール


関連記事

▶スポーツ観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

宮地陽子 Yoko Miyaji

宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

東京都出身。ロサンゼルスを拠点とするスポーツライター。バスケットボールを専門とし、NBAやアメリカで活動する日本人選手、国際大会等を取材し、複数の媒体に寄稿。著書に「The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編」(日本文化出版)、「スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ」(集英社)、編書に田臥勇太著「Never Too Late 今からでも遅くない」(日本文化出版)