【SNが選ぶ2010年代最高の選手】NBA編:レブロン・ジェームズ

Jordan Greer

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過去10年間において、多くのコーチ、チームメイト、ライバル選手、あるいは口さがないテレビ・レポーターたちがレブロン・ジェームズについて様々に語ってきた。ジェームズという存在自体が過去のNBAの歴史上のどんな人物より話題を呼ぶのだ。

だが、その中でもジェームズを最も適切に表現したのはコメディ女優でもあり脚本家でもあるエイミー・シューマーだろう。2015年にシューマーが主演と脚本をつとめた映画『Trainwreck』(邦題:エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方)にジェームズは本人役で出演して、大きな話題を呼んだ。

「レブロンの名前を脚本に入れたのは、彼以外のバスケットボール選手を誰も知らなかったからよ」とシューマーは言った。

コート外での露出によってか、あるいはコート内かの業績によるかに関わらず、レブロン・ジェームズは全ての人にその名を知らしめている。2010年代を通して、ジェームズほどバスケットボール界に影響を与えた選手も他にはいない。スポーティング・ニュースが2010年代のNBA最高選手を選ぶにあたって、ジェームズ以外の選択肢はなかった。

2010年にフロリダ州サウスビーチにあるマイアミ・ヒートへ移籍するという物議をかもす決断を下したジェームズは、ヒート所属の4シーズンのうち2回の優勝をチームにもたらし、のちに8シーズン連続となるNBAファイナル連続出場を開始した。その8シーズンがヒートで4回、さらにクリーブランド・キャバリアーズで4回と完璧なバランスがとれていることが、ジェームズを1950-60年代にボストン・セルティックスで大活躍した殿堂入り選手ビル・ラッセルのようなレジェント達と並び称される存在へと押し上げた。

だが、ジェームズの最高の瞬間は北米大陸の反対側、カリフォルニア州オークランドで起きた。ジェームズが所属したキャバリアーズが強敵ゴールデンステート・ウォリアーズを1勝3敗の劣勢からはねのけて、2016年NBAチャンピオンに輝いたときのことだ。ファイナルシリーズ第7戦においてジェームズがアンドレ・イグダーラをブロックした名シーンはいつまでも記憶に残るに違いない。

さらには、バスケットボールにおける業績以外にも、ジェームズはNBAのビジネスを最も大きく変えた人物であるかもしれない。例の悪名高い「決断」はリーグに対する注目度を高めたし、スポーツ選手たちが自身のイメージをコントロールし、どのように自分のメッセージを公に発信するかを変えるきっかけともなった。ジェームズはフリーエージェントの期間を有効に使って、自身が自由な選択権を持つだけではなく、フロント・オフィスにチーム強化へのプレッシャーをかけることにも成功している。キャリアが終盤にさしかかったジェームズは、彼以前の名選手たちのように、チームが優勝するための戦力を整えることを待とうとはしない。だからこそジェームズは最盛期にあるうちにキャバリアーズからヒートに移り、ヒートからキャバリアーズに戻り、そしてキャバリアーズからロサンゼルス・レイカーズへやってきた。

皮肉なことに、他の選手達もジェームズと同じ戦略をとって、ジェームズの前に立ちはだかるようになってきた。ケビン・デュラントはウォリアーズに移って、ジェームズがいるキャバリアーズを2年連続で破った。カイリー・アービングはジェームズの陰に隠れることを好まず、自らキャバリアーズから離れた。カワイ・レナードはトロント・ラプターズでNBAチャンピオンとファイナルMVPを成し遂げたのちに、ポール・ジョージとともにロサンゼルス・クリッパーズで強力なタッグを組み、ジェームズと同じロサンゼルスで戦うことになった。

ジェームズが切り開いた頂点への道を他のライバルたちが追いかけ、そしてジェームズをそこから追い払おうとしている。

もっとも、ジェームズのキャリアはまだ終わっていない。17年目の今シーズンをアンソニー・デイビス(ジェームズの代理人リッチ・ポールによってレイカーズへ移籍)とともに戦い、MVP級の活躍を見せて、年齢による衰えの声を否定しつつある。今年のジェームズは新たな面も見せている。キャリアで初めてアシスト数でリーグのトップにいるのだ。4回目のNBAチャンピオンも視野に入り、さらにそれを伸ばすかもしれない。

仮にNBAチャンピオン回数がこれ以上増えなかったとしても、ジェームズが2010年代に成し遂げた業績だけで既に伝説的な存在だ。現在のリーグは信じられないほど複雑に絡み合ってはいるが、そのどこから始めても、ただ1人の男に行きつくのは難しいことではない。

もし過去10年間のバスケットボールについて何も知らなかったとしても、レブロン・ジェームズの名前だけは知っているはずだ。

数字で見るレブロン・ジェームズ

NBAチャンピオン 3回
NBAファイナルMVP 3回
NBAシーズンMVP 4回
NBAオールスターゲーム出場 15回
NBAオールディフェンシブチーム選出 6回
キャリア通算得点 33,000+ (歴代4位)*
キャリア通算プレイオフ得点 6,911 (歴代1位)
キャリア通算アシスト 8,900+ (歴代10位)*
キャリア通算トリプル・ダブル数 87 (歴代5位)*
選手貢献度指数(PER)27.6 (歴代2位)*

*掲載時の情報

他からの評価

「レブロンはいまや最高の選手の1人であり、彼のリーダーシップ、レイアップ、リバウンド、パス、それらすべての組み合わせはバスケットボールのレベルを次の段階へと押し上げている。マイケル・ジョーダン、ジェリー・ウエスト、ラリー・バード、マジック・ジョンソンらがやったようにね」 - カリーム・アブドゥル=ジャバー

「ジェームズのプレイを見ることはただただ素晴らしい経験だ。彼は皆を引き付けるのを見るのが楽しいよ。彼はまるで磁石のようだ。そしていつも3手、4手先を考えてプレイしている。こんな風に偉大な選手と一緒にプレイすると、それだけで良い選手になれるものだ」 - マジック・ジョンソン

「レブロンのような選手を見たことがないよ。彼は5ツール・プレイヤーだ。基本が素晴らしいし、それをコート上でどのようにも使うことができる。NBAが発展していくうえで、彼こそが他の選手の模範になるだろうね。彼が毎年のようにゲーム戦略を向上させていることにも感心するよ。運動能力だけに頼っていないのさ」 - オスカー・ロバートソン

「彼の時代では圧倒的だね。自分が現役のころは、あんな選手を見たことがない。私はカリーム・アブドゥル=ジャバーともマイケル・ジョーダンとも対戦したことがあるけど、今のジェームズのような選手は見たことがないと思う」 - アイザイア・トーマス

「彼は歴代最高選手の1人さ。もしこのままいけば、そのリストの中でも1,2位を争うだろうね」 - ダーク・ノヴィツキー

「レブロンは既にマウント・ラッシュモアに飾られるべきことを成し遂げている。今の時代においては最高の選手であることは証明済みだ。過去の名選手と比較して、誰が史上最高選手(G.O.A.T.)かって話すのは好きじゃない。それは馬鹿げているし、不可能だとも思う。ただ彼が素晴らしいことは間違いないよ」 ― グラント・ヒル

次の10年を担うのはルカ・ドンチッチ(ダラス・マーベリックス)

「大したクソ野郎」(a bad motherf**er)

ここまでの2019-20のNBAシーズンで最高の試合のひとつつになるだろうレイカーズ対マーベリックス戦で、レイカーズが勝利した後にジェームズがドンチッチに対して発した言葉だ。これ以上に相手の力量を認めた言葉はないだろう。

わずか20歳でありながら、ドンチッチは既にMVP候補にも挙げられるほどの活躍を見せている。ほぼ毎試合のようにトリプル・ダブルを成し遂げ、かつてのマイケル・ジョーダンやオスカー・ロバートソンぐらいしか比肩できない数字を残している。このスロベニア人選手はジェームズ・ハーデンのようなドリブルをして、ピート・「ピストル」・マラビッチのようなパスをして、そしてどこからでも3ポイントを成功させる。

さらに重要なことはドンチッチの成績は単なる数字の羅列ではないことだ。ドンチッチはマーベリックスを勝利に導いている。3年越しのプレイオフ進出は視野に入ってきているし、このまま行けばチャンピオンの有力候補になるだろう。

ジェームズがバトンをドンチッチに渡すであろうことには誌的な感慨を持たざるを得ない。ドンチッチは子供の頃からジェームズに憧れてきたのだ。彼らが交わった背景には、ジェームズの選手生命が長いこともあるし、ドンチッチの才能が同世代から抜きんでていることもある。

「自分のしたことが誰に影響を与えるのかは予想できないよ」とジェームズはマーベリックス戦の後でスポーツ専門局『ESPN』のドリス・バーク氏にこう語っている。

「自分の次に来る世代に影響を与えたいと思うものだけど、僕自身はここでプレイをすることによって、そしてチームメイトたちと一緒にひたすらにゲームをすることで、アメリカにさえいなかった子供に影響を与えることができた。これは特別なことだ。ドンチッチが才能に恵まれた選手なのは明らかだ。個人プレイもいいが、チームワークにも長けている。バスケットボールを本当に愛しているのだろうな。彼のプレイを見るのは素晴らしいことだよ」。

(翻訳:角谷剛)

Jordan Greer

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Jordan Greer has been with The Sporting News since 2015. He previously worked for the Pittsburgh Post-Gazette. He is a graduate of Westminster College and Syracuse University.