ホイバーグHCが富永啓生のNBA入りの可能性について語る「彼のシュート力があればチャンスはあるだろう」

YOKO B

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富永啓生が所属するNCAAディビジョン1のネブラスカ大学は、12月4日(日本時間5日)からいよいよ同じビッグ・テン・カンファレンスに属している大学との対戦をスタートさせた。ここからの日程は格上のチームとの対戦が続くことになる。

それまでの10試合で富永はベンチから出場し、出場時間とともに、3ポイントショットの試投数もその成功本数も増え始めていた。11月27日(同28日)のサウスダコタ大戦では22分の出場時間で3Pショットを8本中5本沈めて今季最多得点となる23得点をあげる大活躍。続く12月1日(同2日)のNCステイト大戦でも3P11本中5本成功を含む16得点をあげた。

そして迎えたカンファレンス対決。4日(同5日)のインディアナ大と、次の7日(同8日)のミシガン大との試合で、富永は今季初となる先発出場を果たした。どちらの試合もチームは黒星を喫し、富永自身も3Pショットだけを見れば、少しブレーキがかかったと言えるかもしれない(インディアナ大戦では3P5本中1本成功の5得点、ミシガン大戦では3P11本中3本成功の11得点)。

しかし、チャンスがあれば3Pを打ち、ショットが入らなければディフェンスで貢献しようとする富永の積極的な姿勢は変わらなかった。さらに、ミシガン大との試合の終盤には、ほんの数分ではあったが、富永がプレイメイキングをする場面もあった。

カンファレンス対決が始まるタイミングで先発に抜擢されたことや、多少なりともプレイメイキングを任せられたことから見ても、ネブラスカ大の指揮を執るフレッド・ホイバーグ・ヘッドコーチの富永に対する期待や信頼が高まっていることが伺える。

ホイバーグHCは、富永をどう見ているのか。また、彼に何を見ているのか。

少し前のことにはなるが、富永が2試合連続で二桁得点をあげて復調を予感させた11月21日(同22日)のサザン大戦後に『スポーティングニュース』との単独インタビューに応じてくれたホイバーグHCに、富永のシューティングやディフェンス、今の彼の課題やNBAへの可能性などについて聞いた。


Fred Hoiberg Nebraska フレッド・ホイバーグ
ネブラスカ大男子バスケ部で富永を指導するホイバーグHC。NBAで選手、ヘッドコーチ、チーム編成の責任者を務めた豊富な経験を持つ

「NBAを含めたあらゆるレベルで指導してきたが、そのなかでも彼は最高のシューターの一人」

――今日の試合で富永選手の調子が戻ってきたように見えましたが、彼のシューティングをどう思いますか?

ホイバーグHC:試合の終盤で啓生のシュートが決まって良かったと思うよ。彼のシュートは打てば入ると思える。NBAを含めたあらゆるレベルで指導してきたが、そのなかでも彼は最高のシューターの一人だ。だから、彼がシュートを沈めたり、フリースローを獲得したり、中に切り込んでレイアップしたりするのを見ることができて良かったと思う。

――シーズン序盤の数試合、富永選手は3Pショットで苦戦していますが、その点はどう見ていますか?

ホイバーグHC:改善すべき重要な点は、私たちがトランジションで啓生を見つけることだと思っている。これまでの試合で彼がオープンになっているのを何度か逃しているんだ。彼がオープンなときはボールを彼に渡さなければいけない。

今夜の試合では(オープンの)彼を見つけたことで、啓生が2本の3Pショットを沈めた。これは今後の彼の自信につながるはずだ。シューターというのは、自分のシュートがリングを通過するのを見ると、本当に自信がつくものだからね。

「ディフェンスのすべてのポゼッションで素晴らしい努力をしている」

――富永選手自身は、シュートがなかなか決まらない分、ディフェンスで努力するようにしていると言っていましたが、彼のディフェンスについてはどう感じていますか?

ホイバーグHC:彼はよくやっていると思う。彼は本当によく戦う。ディフェンスで重要なのは努力で、彼はディフェンスのすべてのポゼッションで素晴らしい努力をしている。彼のディフェンスにはとても満足しているよ。

――富永選手がコートに出ると大きな声援が聞こえますが、彼の評判はどうでしょう?

ホイバーグHC:素晴らしいシューターという前評判があるし、(現地10月1日に行われた)オープニングナイトのスクリメージ(紅白戦)でも3Pショットを8本ほど(※実際には5本)決めて、彼がシュートを決めるところをみんなが早くから見ていた。だからこそ、2本、3本と連続して決まるのを見ることが、観客にとってとてもエキサイティングなんだ。

「一番気に入っているのは、あのハードなプレイなんだ。それがあるからこそ、彼は成功すると思っている」

――彼が最もチームに貢献している点は?

ホイバーグHC:私は、彼は非常に優れたオールラウンドプレイヤーだと思っている。誰もが明らかに啓生をシューターだと思っているけれど、彼はそれだけではない。ポンプフェイクも上手いし、ペイント内に入ってゴール下で得点することもできる。 前の試合(11月19日のアイダホステイト大戦)でも2回、今日も1回、良いフィニッシュをしていた。

さらに、ペイント内に入ったときのプレイメイカーとしても優れている。私が啓生のことで一番気に入っているのは、あのハードなプレイなんだ。それがあるからこそ、彼は成功すると思っている。

――現時点で富永選手が最も強化する必要のある部分は?

ホイバーグHC:とにかく強くなり続けることだね。レベルが上がれば、周りの選手の強さや運動能力も変わる。彼はすでに体重も増やしたし、強くなってきている。チームがだんだんと良い試合をしていくなかで、今後もその変化に慣れていくことになるだろう。でも、あれだけハードなプレイをしていることを考えたら、彼は大丈夫だよ。

「最高のレベルでプレイすることが彼の目標だということは私も知っている」

――富永選手の将来の目標はNBAでプレイすることだと思いますし、日本のファンの多くもそう願っていますが、ホイバーグHCの元NBA選手としての経験も踏まえて、NBAを視野に入れて調整していかなくていけないことは何だと思われますか?

ホイバーグHC:最も高いレベルでの一番大きな調整は、サイズと運動能力だと思っている。高校から大学へ、大学や海外から主要大学のバスケットボールへのレベルアップも非常に大きい。しかし、大学からNBAに進んだときの一番大きな違いは選手のサイズと強さで、そこが一番調整しなくてはいけないところだ。

私が啓生について言うならば、今は誰もがシュートを求めているということ。彼はハードにプレイする選手で、みんなが必ずしも彼ほどの情熱を持ってプレイするわけじゃない。そして、あのシュート力を持っている。だから彼に(NBAに行ける)チャンスはあるだろう。

最高のレベルでプレイすることが彼の目標だということは私も知っているが、そういう目標や期待を持つことは素晴らしいことだと思う。彼のシュート力があれば、チャンスはあるだろうね。

写真提供:ネブラスカ大学
Photo courtesy of University of Nebraska

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。