【インタビュー】富永啓生(ネブラスカ大男子バスケ部)「ホイバーグHCからためになる良いことをいっぱい教わっています」

YOKO B

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富永啓生が今秋から所属するNCAAディビジョン1のネブラスカ大学バスケットボール男子の2021-22シーズン公式戦が、11月9日(日本時間10日)に開幕した。

富永は、公式戦開幕前の10月27日(同28日)に転入後初の対外試合となるペルーステイト大とのエキシビションゲームに出場し、13分で3ポイントショット4本中2本成功の6得点を記録。続く31日(同11月1日)にはコロラド大とのエキシビションゲームに17分出場し、3P4本中2本を含む8得点をあげた。

3P試投数はまだまだ少ないものの、新しいチーム、新しい環境に少しずつ慣れていく助走段階としてはまずまずのスタートを切ったように見えた。しかし、シーズン公式戦が開幕して最初の3試合では、富永の持ち味であるその3Pが決まらず苦戦を強いられることになる。

公式戦初戦となった11月9日(同10日)のウェスタン・イリノイ大戦では18分の出場で3P5本中1本成功の3得点。ところが、12日(同13日)のサム・ヒューストン大戦と16日(同17日)のクレイトン大戦では、ともに10分の出場で試投数はわずか2本。3Pは1本も決まらなかった。

そんな状態で迎えた19日(同20日)のアイダホステイト大戦の試合後、富永が『スポーティングニュース』との単独インタビューに応じてくれた。

公式戦4試合目となったこの試合に、富永は今季自己最長(※)の17分出場し、同じく今季自己最多(※)の11得点(フィールドゴール7本中4本、3P4本中1本成功、FT3本中2本成功)という活躍を見せた(※記録はいずれもこの試合時点)。

今回のインタビューでは、転入後の公式戦初の二桁得点となったこの試合の感想をはじめ、昨季まで2シーズンを過ごしたレンジャー短大時代との違い、今後の課題などについて話を聞いている。


「やっと『ザ・大学』に来たなって実感」

――テキサス州レンジャーからネブラスカ州リンカーンに来て、どんな違いを感じていますか?

富永:もちろん全然違いますね。レンジャーにいた2年間はめちゃめちゃ田舎に住んでいて、本当に何もすることがないようなところだったので。ここに来て、めちゃめちゃ都会ってわけではないですけど、自分にとってはもうここは都会みたいな感じです。ほんとに充実してますし、やっと『ザ・大学』に来たなって実感してます。

――リンカーンはいわゆる大学の街で、大学スポーツの熱狂的なファンも多くいます。会場でも富永選手がコートに出てくるとほかの選手のときよりも歓声が上がると思うのですが、それは感じていますか?

富永:そうですね、確かに感じますね。オリンピックに出ていたことで、来る前から期待が高かったのもあって、みんな応援してくださっていますし、自分でもなんとなくわかりますね。自分が入ったときに会場がなんか盛り上がっているなっていうのは確かにわかります。それはほんとに嬉しいですし、力になりますね。

――短大からNCAAディビジョン1に来て、一番の違いは何ですか?

富永:もちろんレベルの高さは違いますし、あとは規模も大きく、環境が素晴らしいと思います。すべてが全部違いますが、環境っていうところが一番違うのかなって思います。設備も、コーチ陣も、練習の質もそうです。充実してますね。

――短大時代と大学で、生活のリズムや食生活に変化はありますか?

富永:短大のときは基本的に夕方に練習だったんですが、こっちでは朝の練習です。朝に練習して夕方から授業に行って、時間の空いているときに自分はシューティングをしてという感じです。僕は朝がめっちゃ苦手なんです、実は。だから、朝の練習っていうのが慣れなかったんですが、今はもう慣れてきて、アラームかけずに6時半とか7時とかには起きるようになっちゃいました。

食事は、レンジャー(短大)のときはカフェテリアで毎回ごはんが出ていたので、朝昼晩そこで食べていたんです。そんなに大したものじゃないんですけど。こっちに来てからも、もちろんアスリート専用のカフェテリアがあって、そこにはほんとにすごい良いものばかりあるのですが、基本的に平日の昼と夜はそこで食べます。

あとは土日は自分で料理したりとか、近くに日本食のお店もあったりするので、日本食じゃなくても普通にレストランに行ったりもします。とにかく食事面も充実していますね。

――特に日本食じゃないと困るということはないんですか?

富永:それは全然ないです。まあ、食べれるなら食べるという感じです。あれば嬉しいは嬉しいですよ、もちろん。でもなかったらダメっていうわけではないです。

「このままエナジー出してやり続ける」

――今日の試合で4試合終わりましたが、公式戦の最初の3試合がちょっと調子が出ず、今日は久しぶりに活躍できたと思うのですが、試合を振り返ってどう感じていますか?

富永:なんか、ここ2試合は「3Pショットを決めたい、決めたい」という気持ちが前に出すぎてしまった部分があったので、最初にドライブでアタックして中に行こうと思っていて。それが2本、ポンポンと続けて成功したのが良かった。そのあとの3Pショットはちょっと外しちゃったんですけど、そこはもう打ち続ける感じで自分なりにやっています。

――レンジャー時代と違ってネブラスカ大ではベンチからの出場で、ここまで3試合はなかなかボールにすら触れられないことが続きましたが、そういうとき、モチベーションはどう維持しているのでしょうか?

富永:もちろん、ちょっとフラストレーションが溜まるときもありましたけど…。まあ、それはそれなりに吹っ切って、ボールが来たときにいつでもシュートを打てるように準備だけはしていました。

――やはり本来は3Pシューターとして期待されてきていると思うのですが、持ち味の3Pショットが思うように決まらない状況が続くなか、どういうメンタリティーで試合に臨んでいますか?

富永:最近、自分はディフェンスが成長していると思っているので、そこにほんとにエナジー出して、チームを勢いづけられるようなスティールだったりだとか、チャージングとかもそうですし、そういうのを頑張っていきたいと思っています。

ディフェンスは練習中からしっかり普段やっていることで、自分たちの練習は高いレベルでやれているので、試合でそのまま練習でやっているままを出すだけです。そういうところはほんとに成長できているなと思います。

――3P以外で一番強化していきたいところは?

富永:ディフェンスです。スティールやチャージをはじめとするディフェンスと、あとはドライブかなと思います。

アグレッシブにドライブで中に切り込むのもそうです。やっぱり相手(チーム)のスカウティングも、どうせ僕はシュートだろうと見ていると思うので、そこで1本2本とドライブすることによって、相手もシュートだけじゃないなってことで、そんなにプレッシャーをかけられなくなると思いますし、そういうのを意識しています。

――今日は久しぶりに3Pが1本決まり、11得点と二桁得点も記録して、だんだん調子が上がってプレイタイムも増えてきていますが、これからどうプレイをしていこうと思いますか?

富永:ほんとにもう、このままエナジー出してやり続けるだけだと思っています。もちろんシュートは僕の武器なので、そこはもちろんそうなんですけど、ほかのところでもすべてにおいてレベルアップして、チームの勝利に貢献できればなと思っています。

「レベルの高い環境で練習も試合もできてることが自分にとって一番楽しい」

――今日の活躍もそうですが、初めて富永選手の様子を目の前で見ていて、ハスカーズのチームはみんな楽しそうで、富永選手もチームにも溶け込めているように見えましたが、実際はどうでしょう?

富永:そうですね。ほんとにみんなと仲良くやっていますし、チームみんな仲が良いと思いますね。

――英語でのコミュニケーションに問題は?

富永:そこは、日常的なことだったら全然問題ないですね。

――NBAでシューターだった経験もあるフレッド・ホイバーグ・ヘッドコーチの下で学びたかったと聞いていますが、どんなことを学んでいますか?

富永:シュートに関しては、ひとつひとつ足の使い方だったり、少しでもシュートのリリースを早くすることもそうですし、ためになる良いことをいっぱい教わっています。

――シュートが決まらない今の状況へのアドバイスは何かありましたか?

富永:『打ち続けろ」と言われています。シュートが決まらないことは誰にでもありますし、そこで落ち込まず、少しは落ち込むかもしれないけれど、練習を思い出してそのまま撃ち続けるだけですね。

――今一番楽しいと思っていることは?

富永:もちろん、こんなにいい街に住めていることも楽しいですし、このレベルの高い環境で練習も試合もできてることが自分にとって一番楽しいです。

――最大のチャレンジだと思っていることは?

富永:もっとフィジカルを強くして、もっともっと戦えるようになりたいとは思っています。リバウンド争いだったり、そういうところはやっぱり自分の一番の課題かなと思っています。


富永は、このインタビューのあとに行われた11月21日(同22日)のサザン大戦でも11得点(FG6本中3本成功、3P5本中2本成功、FT4本中3本成功)、2リバウンドをマークし、復調の兆しを感じさせた。

続く23日(同24日)のテネシーステイト大戦では再び調子を落としたものの、27日(同28日)のサウスダコタ大戦では22分出場し、FG11本中8本成功、3P6本中5本成功、FT2本中2本成功で、今季自己最多の23得点を記録し、チームの勝利に貢献。ホイバーグHCも「啓生の本領発揮は時間の問題だった」と絶賛する活躍をしている。

さらに、12月1日(同2日)のNC(ノースカロライナ)ステイト大戦では、4度に及ぶ延長戦の末にチームは惜敗したものの、富永は16得点(FG14本中5本成功、3P11本中5本成功、FT1本中1本成功)、2リバウンド、2スティールをあげたほか、ベンチ出場選手の中で最も長い44分をプレイした。これはホイバーグHCの信頼と期待の高まりを感じさせる采配だったと言えるだろう。

3Pショットは不調でも打ち続けるだけだと話し、またそれ以外のドライブやディフェンスなどでもエナジーをもたらしてチームを勢いづけたいと語っていた富永は、毎試合、愚直にそれを実践している。

公式戦開幕3試合は、確かに富永本来のゲームはできなかったかもしれない。しかし、彼は確実に、本来の姿を取り戻しつつあるように見える。

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。