FIBA U19ワールドカップで高評価の八村塁「体調管理の面でNBAに行ったときの勉強になった」(青木崇)

青木崇 Takashi Aoki

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エジプトのカイロで開催されたFIBA U19バスケットボール・ワールドカップ2017(7月1~9日)で、日本はマリ、韓国、エジプトを撃破し、世界大会で3勝しての10位という成績を残した。

決勝ラウンド1回戦で2点差の惜敗を喫した相手であるイタリアは決勝まで勝ち進み、優勝したカナダとはグループリーグで対戦し、第1クォーターで11点のリードを奪った。日本が世界の強豪国と互角に渡り合える時間帯が多かったのは、八村塁(ゴンザガ大学)という大黒柱を軸に、チームが攻守両面で一体となったプレイをしていたからだ。

平均20.6点(大会2位)、11リバウンド(同3位)、エフィシエンシー(EFF/貢献度)が23.7(同1位)という数字からも、八村が日本の快進撃に大きく貢献したことは明らかだ。

カナダのロイ・ラナ・ヘッドコーチは、「才能があって、とても止めるのが難しい選手だ。彼は日本のバスケットボール界にとって、今後何年も非常に重要な存在になるだろう」と語れば、イタリアのアンドレア・カポビアンコHCも「トッププレイヤーだよ。ボールを持っていてもいなくても走れるし、ゴールに向かっても背を向けてもプレイできるし、3ポイントショットも決められるし、オフェンシブリバウンドも奪えるという意味でね」と高く評価する。

また、オーストラリアから来たスカウトも、「試合中の姿勢がいいし、チームメイトを生かすことの重要性を理解している」と称賛するなど、八村は世界に改めてその存在をアピールできたと言っていい。

9日間で7試合という厳しい日程を戦い抜いた後、カナダ対イタリアの決勝戦が行なわれる前の7月9日の夜、八村にとって2度目の世界大会を振り返ってもらった。

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――大会を通じて自分とチームの出来について聞かせてもらえますか?

チームはアジア大会(FIBA U18アジア選手権)からメンバー的に少し変わっていて、そのなかで練習を何回かやって、合わせができないといったことなどいろいろあったんです。試合を積んでいくうちに仲間のことがわかり、ずっと(一緒に)生活してきていくなかでチームメイト同士がわかりあってきた。そういったなかで大会に入ってきて、試合を積んでいくごとにどうやって勝ち抜くか、ということも覚えてきたので、3勝したのはすごく大きかったのかなと思います。

――自分の出来については?

個人的にはまだまだ課題が見つかって、こういう風に高いレベルでプレイすればするほど課題が見つかります。またゴンザガに帰って、コーチ陣たちと練習をしていきたいなと思います。

――一番の課題は何だと感じましたか?

正確性があまりないんじゃないかなと。シュートのチョイスとかもたまに悪いところがあったので、そういうところももっと自分でビデオを見たりして、学んでいかなければと思います。

――今回、末広(朋也:日本バスケットボール協会 テクニカルスタッフ)さんからいろいろ聞けたのはプラスになりましたか?

試合の直前に言われると直しやすい。試合も1日、24時間経っていないうちにどんどんやるので、その間にビデオを見て、ここがダメ、あそこがダメというのを学んだり話したりすれば、すぐ直しやすいので、そういうのはよかったです。

――1年半ぐらいフルゲームを離れていましたが、7試合戦ってきたなかでのゲーム感覚はどうでしたか?

ゲームの体力というのもあるんですけど、体調的にこの大会で思ったのは、NBA選手ってやはりすごいなということ。こういったことを半年くらいずっと続けているし、もっとプレイタイムが長かったり、もっと高いレベルでやっている。体力的にもきついはずなのに、あと3~4時間移動しながら試合をしていくのは、本当にすごいなと思いました。僕はNBAに入りたいので、NBAに行ってからの勉強になったんじゃないかと思います。自分の体調管理という面で。

――体調管理ということではまだまだだったわけですか?

食事とかも、もう少し気をつけることができたのではないかなと思います。

八村塁 Rui Hachimura

――(対戦した)カナダとイタリアが決勝に進んだということは、日本が強くなったことを示したのでは?

ベスト4のうち3チームが僕たちとやったところで、ほとんどいい試合をしているか、前半で勝っていたというのがあるので、そういったチームが上に進むことは、僕たちの評価も高くなると思うので、よかったと思います。

――これでゴンザガに戻ったら“もっと自分でやってやるぞ!”という意識がついたことと、それをやれるだけの自信をこの大会で手にしたのでは?

僕もゴンザガでシーズンが始まる前に、どこか自信になるような大会か試合がほしかったと思っていたので、こういったレベルの高い大会でそういう風な試合ができてよかったです。

――このチームではディフェンスがインサイド、オフェンスがオールラウンドにやっていたと思います。そのあたりはディフェンスを見て臨機応変にやっていたのか、それともシステムでやっていたのですか?

僕は将来的にインサイドをやるプレイヤーではないので、もちろんインサイドがあれば狙えますけど、前にも言いましたが、相手が小さければインサイドをやればいいし、相手が僕よりも大きければアウトサイドからやればいいなと思っています。

――5月に合流したわけですが、このU19代表はどんなチームでしたか?

年齢は同じですけど、僕からみたら後輩たち。僕にちょっと遠慮みたいなのがあったのを結構心配していたけど、あまりそういったことはなかったです。そうでないと絶対バスケができないし、チームメイトとしてやれないので、みんな遠慮することなくしっかりやれたことが本当によかったなと思います。

――コーチは「塁は自分が、自分が、というのでなく、周りを生かすこと」と言っていたけど、この大会は“自分を見せたいというよりも、チームで勝ちたい”という思いが強かったのですか?

まずは日本のバスケのためにやるというのがあるし、そこから自分の評価がついてくると思う、そんな感じでした。

――コーチは「3年前と違い、今回は塁だけのチームじゃない」とも言っていましたが、それについてはどう思いますか?

この大会だけじゃなく、今までいろいろな練習試合をやってきました。僕だけということもあったんですけど、他のチームメイトも得点を狙ったりすることができる。U17のときに比べて僕のアシスト数は多いと思うので、自分にディフェンスが来れば仲間にパスをして、それを決められるチームだったのがよかったと思います。

文・写真:青木崇 Twitter: @gobluetree629

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