Gリーグの新契約形態は本当に選手を育てるか?

Mike DeCourcy

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2018年のNBAドラフト前にマービン・バグリーがシューズメーカーのプーマと交わした契約金の金額は完全には明らかになっていないが、11年前にケビン・デュラントがナイキと契約を交わして以来の最高額だと言われている。その時の金額は6000万ドル(約69億円)。言うまでもなくバグリーはデューク大での1年を経て、超高級住宅街へと進出した。

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彼が2016–17年のバスケットボールシーズンをGリーグチームのエリー・ベイホークスで過ごしていたら、これと同じ道筋を辿っただろうか。

即座にプロへの転向を希望するのなら、高校を卒業する選手たちに12万5000ドル(約1400万円)の契約をオファーするという新契約形態「セレクト契約」を、NBAのGリーグが発表した。

NBAドラフトの年齢制限規則に達していないエリート選手たちには、「大学進学を強いられている」という考えが根付いている。Gリーグはすぐにプロ選手になりたい者のための選択肢であり続けていたのだが、いかんせん報酬がよくなかった。この動きは、積極的に大学へ進もうと考えていない、もしくは学力的に進学が難しい者には、より魅力的な選択肢となるだろう。

同時に、これはNBAの、NCAAに対する挑戦なのである。

現在、Gリーグで試合をすることとNCAAのディビジョン1バスケットボールで戦うことには雲泥の差がある。昨シーズンの平均的なGリーグの観客動員数は1試合につき大体2500人であった。トップ6大学のトーナメントは平均で1万600人を超える。

Gリーグチームのテレビへの露出はわずかである。ケーブルネットワークのESPNUと NBA TVは、2017–18年シーズンに41試合を放送した。Big Ten Networkは単独でその3倍を超える。一方、大学バスケットボールはというと、ESPNは来たるシーズン、850の大学の試合を放送する。Fox Sports 1、 NBCSN、 the Pac-12 Networks 、そしてCBS Sports Networkも同様に試合を放送する。そう、CBSもだ。そしてこれは全て、NCAA男子バスケットボールトーナメント前の話なのだ。

これらは表から見える一面にすぎない。我々は、メジャーチームとGリーグチームの移動手段の違いを知らない。早朝に空港で乗継便を待つ彼らに遭遇しない限り、見ることはないだろう。そこでトップレベルの大学生を見かることはあまりない。大抵彼らは、主要なターミナルを避けチャーター機で移動するためである。

Gリーグには、選手たちが高校生レベルからエリートレベルでの競争にステップアップしていくうえで、それに応じた十分なプログラムや設備が用意されているかどうかという問題点もある。この部分において、NCAAは数十年にわたり非常に高い成果を収めている。殿堂入りが近い卒業生や、多くの学校で実績を積んだコーチたちもいる。Gリーグのコーチたちの中にもNBAでアシスタントをしていたものもいるが、成長過程の選手の育成に関してはあまり経験がない。

Gリーグのマルコム・ターナー代表は、この新たな契約形態は、NBAでプレーする資格をまだ持っていない有望な選手を育成するための手段だと説明している。セレクト契約を結んだ選手は、夏季に行われるプロ向けのワークアウトに参加することができる。また、現役引退後に高度な教育を受けることを望む選手には、奨学金制度もあるという。

この契約には注意すべき点もある。セレクト契約は1年契約ということだ。ディアンドレ・エイトンならこの契約を選択したかもしれない。抜きんでた選手ならばドラフトに指名され、高額契約を交わすことが出来る。

しかし、1年で良い結果が出せるとは限らない。例えば、アレックス・ポイトレス選手がこの契約を結んでいたとしたら? 彼は、2012年の高校生で8位と評価されていたが、ケンタッキー大学1年目を終えた時点では、ドラフトへの見通しは思わしくなかった。セレクト契約には2年目はない。Gリーグに残ることになれば、ボーナス支給の可能性はあるものの、給料は標準価格の35000ドル(約390万円)に下がる。

このプログラムが、NCAAとNBAが協力し合い発足されたものならば、選択を望む選手にとって一歩前進したプログラムとして見られていたかもしれない。すべての選手が進学し、大学でバスケットボールをすることを望んでいるわけではない。そのため、違う選択肢があることは望ましいことだろう。

あらゆるレベルのリーグが同じ目標に向かって進めば、バスケットボール界と選手に恩恵がもたらされるという考えは衰退してきている。NCAA前会長のマイルズ・ブランド氏が亡くなった後、彼の優秀な後継者であるマーク・エマート氏がNCAA会長に任命されたが、エマート会長が批判し続けている「ワン・アンド・ダン」(NBAに入るには、選手の年齢は19歳以上で、大学には少なくとも1年在籍しなければいけないというルール)は明らかにNBAが自分たちの利益を守るために有効なルールだ。エマート会長は、NBAはワン・アンド・ダンを一刻も早く撤廃すべきだと表明している。

なんにせよ、才能ある選手に有効かどうかわからない手段を選択させることは、リーグの継続的な成長につながるとは言えないだろう。アメリカのバスケットボールファンならば、誰もがマービン・バグレーを知っている。デューク大で活躍する彼を見れば、バグレーには目標を達成できる可能性があると分かるだろう。

もしバグレーに続く選手がベイホークスに所属したら、どれくらいの人が彼を知ることになるだろうか?

原文:NBA put itself first — not basketball — in decision to compete against colleges for talent

翻訳:日本映像翻訳アカデミー


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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.