バスケ少年だったバラク・オバマが、今なお大切にしているコーチとの絆【最終回】

Christian Shimabuku

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「君は、君が思っているより良い選手だったよ」

2009年、マクラクランは自分の命を救ってくれたアメリカ心臓協会に貢献すべきと考え、ワシントンで開かれる会議にハワイ州代表として参加することになっていた。

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アメリカ心臓協会は、上院議員や下院議員に文書を提出したことはあっても、大統領にまでたどり着いたことは一度もなかった。

マクラクランが動いた。

彼は、オバマは外出しているか忙しくて会うことはできないと思い、オフィスに電話をかけた。するとオバマはちょうど手が空いていて、面会に応じることができたのだ。二人は大統領執務室で30分間面談し、マクラクランは会議の資料をオバマに手渡した。

その面談の最中に、マクラクランは1979年のチームの話題を持ち出した。

「バラク。実は、君には申し訳ないと思っている。君は自分で思っていたより上手かったんだ」

7年後の2016年、20憶ドルがアメリカ心臓協会に送られた。アメリカ国立衛生研究所での心臓研究のためだという。その7年の間、マクラクランはワシントンに6往復し、元選手のオバマと5回面会した。1回だけ会えなかったのは、オバマがワシントンにいなかった時だけだった。

オバマは面会の後必ず、自分がワシントンにいる時はいつでも立ち寄ってほしいと言った。

「バラク、私が君を訪ねる理由は、君にそう言われたからだよ」

「もちろん。僕は、あなたがこっちに来た時は、毎回そうして欲しいと思っているんです」

「彼はだんだん立派になっている」

マクラクランはいまだに、なぜオバマにもっと出場機会を与えなかったのだろうと後悔している。会う度に、そのことを思い出す。彼がアメリカ心臓協会のために貢献したすべてのことを考えると、それはおそらくどうでもいいことなのだろう。しかしマクラクランは、オバマが当時コーチに直訴したことに罪悪感を感じていると知っていた。

以降“バラク”は、“バリー”に代わって、その穴埋めをすることを誓ったのだ。

別の面会の後、マクラクランは大統領執務室の外に出た。細い廊下に、数人の護衛とシークレットサービスのエージェントが、壁を背にして柱のように立っていた。彼がまさに歩き出そうとした時、オバマは何かを忘れていたかのように彼を呼び止めた。

「そうだ、コーチ!」

「何だい、バラク?」

「コーチ、大好きです」

「私も君が大好きだよ、バラク」

ホワイトハウスから出るマクラクランの目は涙でいっぱいになっていた。ペンシルバニア・アヴェニューを歩いている間ずっと、彼は泣き続けた。

「このことは決して忘れない。愛情深く他人を許すというその資質は、彼を偉大たらしめるものの一部であると私は思う。バラクは大統領として忙しく生きる中で、昔のコーチが自分を十分に起用しなかったことを許した」とマクラクランは語った。「世界のどこかで何か混乱があった週のことだったと思うが、そんな中にありながらも、彼は昔のコーチのために時間をつくってくれた。本当にいい奴だ。バラクは日を追うごとに、素晴らしい人間になっていく」。

「どんどん、素晴らしい人間になっていくんだ。そう思うだろう?」

(完)

原文:'I love you, man': How Barack Obama and a high school coach formed a bond that endures
翻訳:日本映像翻訳アカデミー

Christian Shimabuku