MLBは今シーズンからいくつかの新しいルールを導入する。しかし、それらのすべてがワールド・ベースボール・クラシック(2023 World Baseball Classic™|以下WBC)で適用されるわけではない。
ルールに関しては、WBCとMLBのそれは多くの部分で共通している。しかしWBCでは選手の安全面により多くの配慮がなされている。まず投手たちを故障から守るために、投球数に厳格な制限がある。そしてスコアに関わらず、野手として登録した選手はマウンドに登ることはできない。
それ以外のMLBルール、いわゆる延長イニングでの「マンフレッド・ランナー」やリプレー検証などは適用される。
以下、WBCで採用されるルールについてまとめる。
投手起用方法
WBCで採用される最も重要なルールは投手の起用方法に制限を設けることだ。
WBCに参加するMLB選手たちは春季トレーニングキャンプの最中に所属チームを離れている。従って、WBCは故障が起こるリスクを可能な限り低減したいのである。そのためにWBCは各ラウンドごとに投手が投げられる球数と休息期間を定めている。
投手起用に関するルール
- 1次ラウンド(プール):1試合65球以下
- 準々決勝:1試合80球以下
- 準決勝及び決勝:1試合95球以下
- 50球以上投げた後は4日間以上の休息
- 30球以上投げた後は1日以上の休息
- 3連投はいかなる場合でも禁止
投手の起用法については駆け引きが生じる。たとえば連日で試合がある場合には休息期間ルールが大きな意味を持ってくる。救援投手陣の層が厚いドミニカ共和国のようなチームにはその面で有利に働くだろう。
ワンポイント登板の禁止
投手起用に関する駆け引きにはワンポイント登板が禁止されることも影響するはずだ。登板した投手は最低3人の打者と対戦しなくてはいけないとするルールだ。MLBはこのルールを2020年から導入しているが、その目的は試合時間の短縮だった。
指名打者制
WBCでは全試合で指名打者制が適用される。従って、投手たちは打席に立たなくてもよい。
すべてのチームは指名打者を使うだろう。ベンチ入りした選手を活用するために必要となるからだ。WBCには多くのスター選手が参加する。1人の打者を外して、投手を打席に送るわけにはいかないのだ。
いわゆる「大谷ルール」も適用される。これは日本代表『侍ジャパン』の大谷翔平が指名打者と投手の両方で出場できることを意味する。投手としてはマウンドを降りた後でも、指名打者として試合に残れるということだ。
関連記事:WBCで採用される大谷ルールとは?
延長イニングでの自動ランナー
延長イニングで自動的に2塁へ置かれるランナーには様々な名前が冠されている。「ゾンビ・ランナー」、「幽霊ランナー」、「マンフレッド・ランナー」などである。ここでは「マンフレッド・ランナー」に用語を統一する(訳者注:MLBコミッショナーであるロブ・マンフレッド氏の名にちなむ)。
MLBと同じように、試合が延長戦に入ると、各イニングは無死ランナー二塁から始まる。試合が極端に長引かないようにすることが目的だ。
リプレー検証
WBCにもリプレー検証が導入される。1次ラウンドと準々決勝では監督は1試合につき1回のリクエストが許される。準決勝と決勝では1試合につき2回だ。
コールドゲーム
MLBには存在しないルールのうち、その最大のものとしてコールドゲーム(Called Game)が挙げられる。WBCでは1次ラウンドに限って適用される。
5回以降に15点以上の差がつくか、あるいは7回以降に10点以上の差がつくと、試合はそこで終了する。しかし、このルールは準々決勝以後には適用されない。そこではチームは最後まで逆転のチャンスを持つことができる。
ベースの拡大、ピッチクロック、守備シフトの禁止
MLBは2023年シーズンに大きなルール変更を行う。ベースのサイズ拡大、ピッチクロックの導入、内野守備シフトの禁止などである。これらはすでにMLBのオープン戦で導入されている。
ピッチクロックは投手にランナーがいる場面は20秒以内、ランナーがいない場面では15秒以内に投球することを義務づけるものだ。守備シフトの禁止は内野手が2塁ベースを境に左右2人ずつに配置され、全内野手が両足を内野のダート部分に置くことを義務づける。
関連記事:MLBが2023年に導入するルール改定
上記2つのルールはWBCでは適用されない。ベースのサイズも従来のものから変更されない。しかし、多くのMLB選手たちは来るシーズンに向けての準備として、新ルールに慣れようとするだろう。投手たちは自主的に投球間隔を制限時間内に収めようとするのではないか。
多少の差異はあるにせよ、試合そのものは私たちが長年慣れ親しんできたMLBのそれと非常に似るはずである。投球数制限もまったく新しい概念というわけではない。3月に行われる試合では尚更だ。試合時間が長引くことに配慮が払われてることは明白だ。コールドゲームにしろ、野手が登板することを禁ずることも、その現れと言えるだろう。
MLB選手を多く抱えるチームがMLBの新ルールにどう適応するかは興味深い。しかし、何があっても、そうしたことが視聴者の楽しみを邪魔してはならない。
原文: World Baseball Classic rules, explained: The biggest differences vs. MLB, including pitch counts
翻訳:角谷剛
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