【コラム】メッツの守護神ディアスのWBCでの怪我を代表チームへの選手派遣を躊躇する理由にしてはならない

Jason Foster

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第5回ワールド・ベースボール・クラシック(2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™|以下WBC)に参加しているプエルトリコ代表のエドウィン・ディアス投手が、大会中に今後開幕するMLBシーズンを全休することになると見られる大怪我を負った。

これは、ディアス自身、そして彼の所属チームであるニューヨーク・メッツからすると確かに大きな痛手だ。それでも、本誌『スポーティングニュース』のジェイソン・フォスター記者は、代表チームに参加することによるリスクを理由に選手派遣を躊躇するべきではない、と主張する。


メッツの守護神ディアスを襲ったWBC中の悪夢

MLBニューヨーク・メッツの守護神、エドウィン・ディアスが不幸な怪我に見舞われた。ディアスはプエルトリコ代表として第5回ワールド・ベースボール・クラシック(2023 WORLD BASEBALL CLASSIC™|以下WBC)に参加。現地3月15日(日本時間3月16日)でチームを準々決勝進出へと導いた直後に歓喜の渦に包まれたときのことである。メッツにとっても、ディアスにとっても、そしてMLBにとっても、悪夢のような出来事だ。それでも、このことがWBCの将来に影を落とす原因になってはならない。

ディアスの怪我がどれほど深刻かどうかは今後の推移を見守るしかないが(訳者注:膝蓋腱断裂で今シーズン休場と報じられている)、MLBがスター選手たちをWBCに派遣するべきではないと主張する声が大きくなることは想像に難くない。選手がシーズン前に怪我をする危険性こそが最も恐れられる理由だからだ。しかし、それは愚かで不要な過剰反応である。各国のチーム編成方針や選手たちの熱意に、いささかの影響もあってはならない。

ディアスに起きたことは、もちろん大変な不幸だ。ディアスは現在の野球界で最高のクローザーである。本人にとっても、プエルトリコ代表チームにとっても、そして今オフシーズンに5年総額1億200万ドル(約136億円)の契約を結んだばかりのメッツにとっても、大きな痛手である。絶対的クローザーをシーズン長期離脱に追い込んだ怪我はメッツの戦力を弱らせ、2023年ポストシーズン進出を危機にさらすことは間違いない。ただでさえ、ナショナル・リーグ東地区は激戦区なのだ。しかし、それでもなお、この出来事がWBCの将来に影響を与えてはならない。

メッツ公式ツイッター:エドウィン・ ディアスは、今夜の WBC の試合後に右膝を負傷しました。明日、精密検査を受けます。情報は必要に応じて更新します。

MLB各チームとWBC運営者たちがディアスの怪我に対して行うべきことは何ひとつとしてない。ただゲームを続ければいいのだ。

大会中の怪我が大会の縮小や成長の妨げになってはいけない

今年のWBCはここまで前評判通りに盛り上がっている。野球界が最高の舞台を作り上げることで、どれだけの興奮と活力、そして一体感を生み出すことができるかをまざまざと見せつけている。不慮の怪我を恐れて、いや、どんな怪我であっても、それを次回以降の大会を縮小することや潜在的な成長を妨げることの理由にしてはいけない。

レギュラーシーズン開幕を直前に控えた時期に、チームのスター選手を真剣な戦いが行われるトーナメントに派遣することを躊躇う理由は理解できる。投手たちには投球数制限が設けられているのはそのためだ。ディアスの怪我は深刻さもタイミングも重大な不幸である。しかし、不慮の怪我はいつでも起きる可能性がある。だからこそ、不慮と呼ばれるのだ。

勝利したあとの歓喜の渦で怪我をした選手はディアスが初めてではない。そして最後のひとりにもならないだろう。これまでにもそうした例は多い。

とはいえ、シーズンを長期離脱するほどの大怪我は滅多には起こらない。ケンドリス・モラレスの事故(訳者注:2010年5月19日、満塁サヨナラ本塁打を打ち、ホームベースにジャンプしたときに転倒して大怪我を負い、その後のシーズンを全休した)が思いつくくらいだ。つまり、10年に1度起きるか起きないかの稀な出来事なのだ。

もちろん、野球の試合ではいろいろな原因で怪我は起きる。WBCに限ったことではない。春季トレーニングでも、レギュラーシーズンでも、ポストシーズンでも、ウィンターリーグでも、オフシーズンの自主トレーニングでも、どんなときでも、野球には怪我はつきものなのだ。それでも、MLBレギュラーシーズンの162試合以外にスター選手たちが真剣なプレイをすることをチームは許容してきた。そのことはディアスの怪我があっても変わってはならない。

WBCが成長するためには最高の選手たちが出場しなければ

オリンピックとFIFAワールドカップでは最高レベルのプロ選手が集まることはごく普通だ。NBA、サッカー、そしてNHLの選手たちにとって、母国を代表することは大きな名誉だからだ。選手たちは危険があることは理解している。それを意に介したりはしない。出場することを願うのだ。むしろキャリアのハイライトとして考える。ここまで私たちが見てきたWBCの試合でも、野球選手たちも同じ感情を抱いているように見える。それほどまでに彼らの熱意と歓喜は誰の目にも明らかなのだ。

WBCが成長するためには、最高の選手たちが出場しなくてはならない。MLB、そして世界中の他のリーグからも、最高の選手たちが集まらなければ、野球の国際大会は最高のショーにはなり得ない。

ディアスの怪我は大きな盛り上がりを見せている野球界に大きなショックを与えた。ディアスとメッツの2023年シーズンにとっては最悪のシナリオであるかもしれない。しかし、それでも、WBCはスター選手が集まる場所であり続けてほしい。

杞憂がこの特別な舞台を台無しにしないことを祈るばかりだ。

原文: Edwin Diaz injury shouldn't be used as an excuse to weaken future World Baseball Classics
翻訳:角谷剛

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Jason Foster joined The Sporting News in 2015 after stops at various news outlets where he held a variety of reporting and editing roles and covered just about every topic imaginable. He is a member of the Baseball Writers’ Association of America and a 1998 graduate of Appalachian State University.