球宴は奪三振ショーに注目、江夏の9連続超えなるか

Sporting News Japan Staff

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2021年のプロ野球オールスター戦は7月16、17日に西武と楽天の本拠地(埼玉、仙台)で行われる。最大の見どころはパ・リーグ投手の三振奪取。阪神・江夏豊の9連続、巨人・江川卓の8連続への挑戦であり、セ・リーグへのリベンジである。(記録は交流戦終了6月16 日現在)

連続三振、オリックスの剛球トリオに期待

三振奪取となるとパ・リーグの投手に人材がそろっている。投球回数を上回るエースクラスがおり、変化球で打ち取る投手が多いセ・リーグとは対照的だ。

オリックス勢が群を抜いている。交流戦で優勝し、いまや投手王国の座をソフトバンクから奪い取った感じである。

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まず山本由伸(よしのぶ)。6月11日の広島戦で8回15三振。打者26人だから半分以上を切って取った。86.2回で93三振。昨年の最多三振奪取の実力を見せつけている。五輪代表に選ばれ、エース格の働きを期待されている。

次に左腕の宮城大弥(ひろや)。山本の2日前の巨人戦で7回13三振。打者23人を捻りつぶした。66.1回で73三振、しかも6勝1敗。2年目だが、新人王の資格を持っている。さっそうとしたピッチングが見もの。

もう1人いる。山岡泰輔(たいすけ)だ。宮城の前日の巨人戦で7回12三振を奪った。69回を投げ74三振。

ルーキー早川、伊藤に注目

新人も目立つ。楽天の早川隆久(たかひさ)は期待通り7勝2敗。三振も73.2回で73。第2戦は「ご当所投手」として話題を集めるだろう。そこで三振奪取ショーを見せることができるか。

目立たないが、日本ハムのルーキー伊藤大海(ひろみ)もいい。交流戦最終日の広島戦に勝って4勝目。61.2回で72三振。大胆なピッチングは目につくだろう。

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実績者で期待できるのは楽天の則本昂大(たかひろ)。5勝を挙げ、68.2回で74三振。14年から5年連続三振奪取王で、現役では最も三振に縁がある。大舞台で燃えることだろう。

江夏は9連続どころか15連続だった

1971年7月27日、オールスター第1戦(西宮)。セ・リーグの先発、江夏はなんと9人連続三振。想像を絶する快投にだれもが絶句し、そして大賛辞を贈った。打者は1回が有藤通世、基満男、長池徳二。2回は江藤慎一、土井正博、東田正義。そして3回は阪本敏三、岡村浩二、加藤秀司。

9人目の加藤のとき、3球目が捕手後方の飛球。「追うな」と江夏はマウンドから捕手の田渕幸一に叫んだ。ファウルとなって三振に仕留めたのだが、9連続の記念ボールを田渕がスタンドへ投げ入れてしまった。それを取り戻して渡してくれたのが一塁を守っていた巨人の王貞治だったという。

この年、江夏は体調が思わしくなく、6勝9敗で球宴に出場していた。それだけに信じられない投球だった。

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しかも江夏の連続三振はこんなものではなかった。前年の球宴を5連続奪三振で終えており、西宮の後の試合でも1個取っていたから15連続。記録が途絶えたのは南海の野村克也がちょこんとバットに当てて内野ゴロにしたから。のちに江夏をクローザーに転向させたあの捕手である。

 

江川は9人目に追い込みながら痛恨のカーブ

それから13年後の84年の第3戦(ナゴヤ)で江川が8連続をやってのけた。1回が福本豊、蓑田浩二、ブーマー。2回が栗橋茂、落合博満、石毛宏典。3回は伊東勤、クルーズ。9人目の大石大二郎には追い込みながらカーブを投げ、当てられて二塁ゴロに。あと1人で江夏に並ぶことはできなかったが、快速球で三振を重ねる投球にファンは沸いた。

のちに二人は理想の投球をこう語っている。江夏は「27人全員を3球三振」と。江川は「27人全員を初球で打ち取る」と。江夏は三振奪取にこだわり、81球を費やす。片や江川は27球と合理的だった。

 

パ投手のリベンジなるか

1イニング限定のリリーフ陣にも注目したい。五輪メンバーに選出された若い2人がいる。

まず西武の平良海馬(たいら・かいま)。14日の広島戦で開幕から33試合連続無失点。中継ぎからクローザーに回っても力を発揮。7セーブ21ホールド。32.2回で43三振。昨年の新人王は自信満々のピッチングを続けている。160キロは見ものである。

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もう1人が広島のルーキー栗林良吏(りょうじ)。不振のチームにあって12セーブ。24.1回で38三振。15日の日本ハム戦のセーブは、交流戦で12年ぶりにセが勝ち越しを決める投球だった。

実績豊富な楽天の松井祐樹はクローザーにカムバックして生き生きとしている。18セーブを挙げ、32回で42三振と頑張り、首位チームの守護神として安定感がある。

江夏、江川はともにセ。屈辱を味わったパがリベンジを果たすチャンス到来である。


「略歴」
菅谷 齊(すがや・ひとし)1943年、東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団・法人野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。

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日本を拠点に国内外の様々なスポーツの最新ニュースや役に立つ情報を発信しているスポーティングニュース日本版のスタッフアカウント。本家であるスポーティングニュース米国版の姉妹版のひとつとして2017年8月に創刊された日本版の編集部員が取材・執筆しています。