メジャー侍ヌートバーと大谷翔平が見せた『ペッパーミル』ポーズとは? なぜ流行っている?|WBC 2023

Ryan Fagan

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第5回ワールド・ベースボール・クラシック(2023 World Baseball Classic™|以下WBC)に出場する野球日本代表・侍ジャパンの注目選手のひとりが、日本人の母親を持つラーズ・ヌートバーだ。MLBセントルイス・カージナルスで活躍する彼が、本大会前の強化試合で、出塁した際に見せた『ペッパーミル』パフォーマンスは大きな話題を呼んでいる。

昨シーズン、ヌートバーを取材した本誌ライアン・フェイガン記者が、侍ジャパンメンバーから親しみを込めて『たっちゃん』と呼ばれているメジャー侍・ヌートバーの素顔や胡椒挽きポーズの謎について解説する。

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大谷翔平がホームランを打ったときに見せた謎のポーズ

大谷翔平がワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)の強化試合で見せた片膝を地面につけながらのホームラン動画はもう見ただろうか。

もしその動画をスイングの場面だけではなく最後まで見れば、大谷が三塁ベースを回りながら行なったパフォーマンスも見たはずだ。大谷は顔に笑みを浮かべながら、両手で何かの仕草をして、ホームベースに向かって行った。

その後で大谷は、ランナーとして先に得点していたチームメイトのラーズ・ヌートバーを指さし、ホームベースを踏んだ後で両手を合わせてハイタッチした。

もしあなたが気づかなかったとしても、日本の野球ファンは見逃さなかったはずだ。

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大谷翔平が見せた『ペッパーミル』パフォーマンスとは?

『ペッパーミル』パフォーマンスはセントルイス・カージナルスのファンにはすでにお馴染みだ。なぜなら、これは昨年カージナルスでヌートバーが始めたものだからだ。

チームメイトがヒットや得点をもぎ取ったことを祝福するために、ペッパーミルで胡椒を挽くようなポーズをするのだ。小さなことから始めて、それをやり続けると、やがて良いことがやってくる。そんな意味を込めている。良いこととは、たとえば得点であり、たとえば勝利である。

ヌートバーが日本代表チームでプレイしているのは母親の久美子さんが日本生まれのためだ。本拠地セントルイスでも好人物として知られている。不振にあえぐときもあったが、チームメイトとファンに愛されてきた。

そして今、ヌートバーは急激に日本代表チームのダグアウトでも人気者になりつつある。チームメイトの誰かが本物のペッパーミルをプレゼントした、ミドルネームのタツジを親しみを込めた呼び方にした『たっちゃん』と書かれたTシャツが作られた、看板にもなった、そんな話題が続いている。

しかし、伝説中の伝説である大谷までもが自身のホームランでヌートバーのパフォーマンスを真似したことで、日本ではさらに大きな話題になっている。そしてそれが実現した経緯を考えると、大きな驚きであるだけではなく、むしろ信じがたいと表現せざるを得ない。

「僕らは何か喜ぶときの決めポーズをしたかった。最初は何も考えつかなかったけど、彼(大谷)が『僕が最初に何かをするよ。そうしたら皆が真似をするだろうから』と言ったのさ。それで、僕が1回にヒットを打ったときに、僕らはペッパーミルをやってみたんだ。そうしたら、僕らはそれにハマってしまったのさ」と、ヌートバーは強化試合の後で報道陣に語った。

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ラーズ・ヌートバーが日本代表・侍ジャパン入りするまでの険しい道のり

ここで少し過去を振り返ってみよう。ヌートバーは2022年シーズンをカージナルスのレギュラー外野手として迎えた。デビューを果たした2021年は好不調の波が激しかったものの、58試合に出場した。しかし、2022年シーズンは良いスタートを切ることができなかった。

4月後半までの打率は.125でマイナーリーグに降格させられた。3Aメンフィス・レッドバーズでは出塁率.400と活躍し、約1か月後にはメジャー再昇格をはたした。しかし、その後はさらに打撃成績が落ち込んでしまった。6月1日の3打数0安打(1三振と1併殺を含む)から始まり、打率.100(30打数3安打)、出塁率.182、そしてOPSは .282になったのである。

9月後半になって、「最初は何もかもが上手く行かなかった。自分にプレッシャーをかけ過ぎていたと思った。いろいろなことを一度にやろうとしていたし、その中には自分ではコントロールできないことも含まれていた」と、ヌートバーが笑いながら私に言ったことがある。

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そのヌートバーがそれから1年も経たないうちに、WBCの日本代表チームで大谷翔平のチームメイトになるとは誰が想像できただろうか。そして、この世界的なスーパースターが2016年のMLBデビュー以来、初めて国際舞台でホームランを打ったときのパフォーマンスを教えることになったのである。ラスベガスのブックメーカーでも「6月1日で打率.100のラーズ・ヌートバーが世界的なトレンドセッターになるか」のオッズは作れないだろう。

諸君、これが野球なのだ。

オールスター戦の時期になっても、ヌートバーの打撃成績は打率.200、OPS .617と低迷したままだった。しかし、守備面で複数のポジションをこなせることと、チームに故障者が多かったこともあって、出場機会を得ることができた。

オールスター後は打撃の調子も上向き始めた。最初の39試合は出塁率.414、OPS 938で、本塁打8本、23打点、30得点、3塁打3本、2塁打6本を記録したのだ。

「安定して起用してもらっているおかげで、調子は良くなってきた。自分にできることだけに集中して、ほかのことには気にしないようにしている」とヌートバーは9月に言った。

ヌートバーは徐々に打順を上げ、シーズン後半の多くでカージナルスの1番打者を任された。WBCではアメリカ代表チームに所属するポール・ゴールドシュミットとノーラン・アレナドの前を打つ重責である。そして、通算700号本塁打を追っていたアルバート・プホルスもいた。その頃に、例のペッパーミル・パフォーマンスも知られるようになったのだ。

容易ではない経験だったはずだ。ヌートバーは自分がコントロールできることに集中し、ほかのことに心を惑わせないことで、それを可能にした。

「シーズンでは厳しい戦いが続く。そのようなときはいろいろなことが気にかかるものだ。だけど僕は一歩下がって、1球ごとに集中しようとした。それだけが僕にできることだからだ。ただ次の球に集中することがね」と、ヌートバーは9月に語っている。

「シーズン中は落ち着いて考えることは難しい。だからこそ、息をついて、リラックスしなくてはいけない。最初は上手く行かなかったけどね」

良いスタートではなかったが、ヌートバーは今では日本代表チームの1番打者だ。大谷の前を打ち、彼が母国のファンの前でペッパーミルのパフォーマンスをするところも見ている。

野球は最高だ、と思わないだろうか。

原文: Japan’s pepper-grinder celebration, explained: Inside the gimmick Lars Nootbaar taught Shohei Ohtani at World Baseball Classic
翻訳:角谷剛


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Ryan Fagan, the national MLB writer for The Sporting News, has been a Baseball Hall of Fame voter since 2016. He also dabbles in college hoops and other sports. And, yeah, he has way too many junk wax baseball cards.