第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に出場する野球日本代表『侍ジャパン』には、4人の現役メジャーリーガーが名を連ねている。
大谷翔平(エンゼルス)、ダルビッシュ有(パドレス)、吉田正尚(レッドソックス)、そしてラーズ・ヌートバー(Lars Nootbaar/カージナルス)だ。
大谷、ダルビッシュ、吉田はNPBで圧倒的な成績を残し、海を渡った経緯がある。そのため日本の野球ファンも彼らのことをよく知っているだろう。一方で日本でのプレー経験がないヌートバーがなぜ侍ジャパンに選ばれたのだろうか。
ヌートバーは母が日本人のため日本代表有資格者
アメリカ人のヌートバーがなぜ日本代表に入ることができたのか疑問に思うファンは多いかもしれない。
WBCは、選手が当該国の国籍を有していなくても、父母のどちらかが当該国の国籍を持っていれば代表の資格がある、と規定している。
ヌートバーは父がアメリカ人で母が日本人の日系アメリカ人二世。ヌートバー自身はアメリカ国籍だが、母が日本国籍を有していることで日本代表への扉が開かれたのだ。
過去4回のWBCでこういった選手が日本代表入りしたことはなく、その可能性が議論されることも少なかった。ヌートバーと栗山英樹監督が、侍ジャパンの歴史を変えたと言っても過言ではない。
ただ、こういったケースは他国では珍しくない。前回大会でアメリカ代表を優勝に導きMVPにも輝いたマーカス・ストローマンは、今大会では母の母国であるプエルトリコ代表で出場することを選択した。
北海道日本ハムファイターズと千葉ロッテマリーンズで活躍したブランドン・レアードも自身はアメリカ国籍でありながら、前回大会で母の母国であるメキシコ代表の一員としてプレーしていた。
鈴木誠也をしのぐOPS
もちろん日本代表の有資格者だった、という理由だけでヌートバーが日本代表に選出されたわけではない。昨シーズン日本代表に相応しい成績をしっかりと残している。
MLB2年目だった昨シーズンのヌートバーは108試合に出場。打率.228、14本塁打、出塁率.340、長打率.448、OPS.768の成績を残した。打率だけを見ると物足りなく映るかもしれない。しかし出塁率、長打率、OPSは鈴木をすべて上回っている。
試合 | 本塁打 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS | |
ヌートバー | 108 | 14 | .228 | .340 | .448 | .788 |
鈴木誠也 | 111 | 14 | .262 | .336 | .433 | .769 |
侍ジャパンにおけるヌートバーの役割は本来出場する予定だった鈴木誠也(カブス)と異なる。しかし、鈴木と遜色ないどころか、それ以上の数字を残していることからも打撃面で大きな心配はない。
守備では外野3ポジションを守ることのできる器用さがあり、昨シーズンも右翼(105試合)、左翼(20試合)、中堅(12試合)と右翼メインながら中堅と左翼もこなしている。なおかつ肩も強く昨シーズンも8個(右翼6個,中堅1個、左翼1個)の補殺を決めた。鈴木の辞退で起用法は定まっていないもののどこでも守れるのは心強い。
それだけではない。シーズン中はベンチで積極的に盛り上げ役を行いパフォーマンスをするなどハートも熱い。
栗山監督も1月26日のメンバー発表時に「肩の強さやガムシャラさ、一球一球、一生懸命プレーしてくれる」とヌートバーを評したことからも総合的な判断による選出だったことがうかがえる。
ヌートバーは母が日本人であることから侍ジャパンの有資格者であり、さらにそのプレーや人間性が評価されて納得の選出だった。
You know what to do... pic.twitter.com/19NSCARVkC
— St. Louis Cardinals (@Cardinals) September 11, 2022
強化試合でもリードオフマンとして活躍
ヌートバーはWBC開幕前に行われた阪神タイガース、オリックス・バファローズとの強化試合に出場。1番・センターとして8打数3安打1打点、打率3割7分5厘の成績で侍ジャパンの攻撃を牽引した。
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