唯一無二のNFL史上最高選手トム・ブレイディが現役引退…今後「第2のブレイディ」がけっして出現しないワケとは


Vinnie Iyer

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トム・ブレイディはNFLの歴史で最高のクォーターバックであり、リーグ史上最高選手として引退する。近い将来において、この2つの称号を脅かす存在が現れることは、想像することすら不可能に思える。トム・ブレイディは唯一無二の存在であり、その伝説に近づくクォーターバックは今後けっして現れないだろう。

ブレイディがかねてから予定していた通りに現役を引退することを発表した。2022年のオフシーズン終盤にはブレイディは45歳になる。22年間の現役時代で、2つのチームでスーパーボウルに9回出場し、優勝リングを7個獲得した。その他、レギュラーシーズンとプレーオフで達成した記録はまさに枚挙の暇がない。チームとしても、個人としても、これほどのレベルでの成功を収めることができる人間は2度と出てこないだろう。

仮にプロフットボール殿堂に2回選出されるNFL選手がいるとすれば、それはブレイディ以外には考えられない。なぜならブレイディは偉大な成績を残した10年間を2回持っているからだ。

ブレイディはスーパーボウル51でニューイングランド・ペイトリオッツを率いて、歴史に残る逆転劇を演じ、アトランタ・ファルコンズを破った。それより以前から、ブレイディが史上最高選手であることに疑問を挟む余地はなかった。さらにAFC優勝とリングをスーパーボウル53でペイトリオッツにもたらした。その翌年すぐにタンパベイ・バッカニアーズをワイルドカード枠からスーパーボウル55へと導き、優勝リングを獲得したとき、ブレイディは43歳だった。まさに究極の偉業としか呼びようがない。

今からおよそ8年前、当時37歳だったブレイディは、良いプレーができなくなるまでは現役を続けると宣言した。だが、その日は"ついに来なかった"。44歳で迎えた2021年シーズン、ブレイディはリーグ1位のパッシング・ヤード(5,316)とパッシング・タッチダウン数(43)の成績を残したのだ。それはブレイディのキャリア中期における最高だった2007年シーズン以来のことである。

いかなる統計数値、スカウティング・レポート、そして実際に目に見える姿からも、ブレイディがそのキャリアでやり残したことは何もない。現役を引退した今、多くの人々はブレイディが高いレベルで競技できなくなる日が来るのかどうかを問うことになる。

ブレイディがNFL入りした頃、ブレット・ファーヴが全盛期だった。そしてペイトン・マニングとドリュー・ブリーズが偉大なキャリアを歩み始めたばかりだった。ブレイディが最初のスーパーボウルで相対したのはカート・ワーナーである。それより少したって、イーライ・マニングとベン・ロスリスバーガーが同年のドラフトでNFLに入ってきた。それからアーロン・ロジャースとラッセル・ウィルソンが台頭し始め、今後いくつものスーパーボウル優勝リングを手にするだろうと思われた。

上に挙げたクォーターバック全員がいつかはオハイオ州カントン(プロフットボール殿堂の所在地)でブレイディと肩を並べるだろう。もっともブレイディが達成した偉業は彼ら全員を合わせたものと遜色がない。史上最高のクォーターバックをリストアップすると、ブレイディの他に挙げられる名前はジョー・モンタナ、ダン・マリノ、そしてジョン・エルウェイになるだろう。しかし、そのキャリアの長さ、個人成績、成熟度、そして勝利数などを総合して考えると、ブレイディがその中でも抜きん出ていることは誰の目にも明らかだ。

現在と過去においてブレイディに比肩する存在がいないのであれば、史上最高選手の座を奪う可能性がある選手は未来にしか存在しない。現在のフットボールがパス全盛の時代を迎えた主な理由がブレイディである。多くのチームがパスに(そしてランにも)才能がある若いクォーターバックを求めている。

ブレイディがペイトリオッツとバッカニアーズの両チームを率いたことで、NFLが目指す戦力均衡の図はもろくも崩れ去った。2002年から2021年までの間、ブレイディはスーパーボウルに9回出場した。この20年間で45%という、とんでもない確率である。さらに言えば、スーパーボウル7回優勝ということは、55回を数えるスーパーボウルの歴史で12.7%を占めているのだ。どんなクォーターバックでも、これほどの圧倒的な存在になれるとは思えない。

パトリック・マホームズは26歳で、スーパーボウルに2回出場し、優勝リングを1個獲得している。所属するカンザスシティ・チーフスがかつてのペイトリオッツ王朝のような時代を迎えるとすれば、マホームズが史上最高の座に近づくかもしれない。だが、ブレイディ引退後のマホームズには強力なライバルがいる。バッファロー・ビルズのジョシュ・アレンとシンシナティ・ベンガルズのジョー・バロウは2人ともスーパーボウル制覇を何回か成し遂げることができそうだ。ジャスティン・ハーバート、ラマー・ジャクソン、そしてマック・ジョーンズらが後を追っている。トレバー・ローレンスとトゥア・タゴヴァイロアもスーパーボウル制覇に挑む才能と可能性は十分にある。

NFC側ではロジャース、ウィルソン、マシュー・スタッフォード、そしてダック・プレスコットといった名前がブレイディ以後を率いると思われるが、さほど有望な若い選手は見当たらない。だが早い時期にそんな選手が現れるかもしれない。なぜなら、ブレイディがいなくなったことで、ロンバルディ・トロフィー(スーパーボウルの優勝チームに与えられるトロフィー)を掲げることができるクォーターバックの数は少なくなったからだ。

1回の印象的な優勝を果たすだけではなく、それを長い間続けなくては、史上最高のクォーターバックと呼ばれることはできない。例えば、かのモンタナはスーパーボウルで4戦全勝である。これが標準と言えるだろうか。ブレイディはほぼその2倍勝っているのだ。マラソンに例えるなら、トップを行くブレイディのはるか後方で、モンタナと他のクォーターバックが足掻いている様相が目に浮かんでくる。

ブレイディが史上最高選手かどうかの議論はすでに決着し、戴冠式へと移った。未来永劫、NFL最大の存在になるだろう。

(翻訳:角谷剛)

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Vinnie Iyer


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Vinnie Iyer, has been with TSN since 1999, not long after graduating from Northwestern University’s Medill School of Journalism. He has produced NFL content for more than 20 years, turning his attention to full-time writing in 2007. A native of St. Louis, Mo. but now a long-time resident of Charlotte, N.C. Vinnie’s top two professional sports teams are Cardinals and Blues, but he also carries purple pride for all things Northwestern Wildcats. He covers every aspect of the NFL for TSN including player evaluations, gambling and fantasy football, where he is a key contributor. Vinnie represents TSN as host of the “Locked On Fantasy Football” podcast on the Locked On network. Over his many years at TSN, he’s also written about MLB, NBA, NASCAR, college football, tennis, horse racing, film and television. His can’t-miss program remains “Jeopardy!”, where he was once a three-day champion and he is still avid about crossword puzzles and trivia games. When not watching sports or his favorite game show, Vinnie is probably watching a DC, Marvel or Star Wars-related TV or movie.