元柔道五輪金メダリスト、ケイラ・ハリソンが総合格闘技PFLでの戦いを通じて児童性的虐待の被害者支援を続ける

Mark Lelinwalla

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何かに人生の全てをかけて、その夢を実現してしまった後で、新たに挑戦する別の何かを見つけることは非常に難しい。だが、オハイオ州ミドルタウン出身のケイラ・ハリソンはそれを行い、彼女の格闘家としてのキャリアに新たな一章を加えた。

2012年と2016年に2大会連続でオリンピック女子柔道金メダルを獲得した後で、ハリソンは総合格闘技団体Professional Fighters League(PFL、元ワールド・シリーズ・ファイティング)と契約を結んだ。

ハリソンは昨年に総合格闘家デビューから3連勝を飾り、来る5月9日から始まるPFLの新シーズンに参戦する。今シリーズから新たに加えられた女子155パウンド(約70キロ)以下級で、ハリソンの相手はスヴェトラーナ・カウトヴァに決定している。同シリーズ開幕戦はニューヨークのナッソー・コロシアムで行われ、スポーツ専門局『ESPN』で生中継される。

 

世界一の柔道家が歩みだした、総合格闘家としての新キャリア

「今までこんなに興奮したことはないと思います」とハリソンはスポーティングニュースに語った。

「新しい階級が始まることだけではなく、スポーツ界の世界的なリーダーであるESPNが放映してくれるなんて、夢のようです」

「私にとってどの戦いもオリンピックと同じです。総合格闘技の世界では私はまだ新参者です。私はまだ若いし、これまで3戦しかしていません。それなのに他のファイターから狙われる存在になってしまいました。私はプレッシャーがかかることは好きです。プレッシャーを克服して、挑戦することがとても楽しみなのです」

2016年に2度目のオリンピック金メダルを獲得した後、ハリソンは戦いを続けるかどうか迷っていた。だが、PFL主宰者たちとの会話が彼女の心境を変える契機になった。

「私はこのスポーツがもっと良いものになるためにと考えていたことを彼らに話しました。エンターテイメント的な部分を減らして、もっとスポーツ的な要素を増やすことです。私は大きな試合のチャンスを得るために対戦相手を口汚く罵ったり、性的なルックスに気を使わないといけないのが嫌だったのです。そうしたことは仕方がないとあきらめていましたが、PFLはこの2年間でこのスポーツを今の私達がいるところまで変えていってくれました」

「PFLはレギュラーシーズン、プレイオフ、そしてチャンピオンシップとシーズンを分けています。そして毎年のチャンピオンシップは大きな注目を集めます。そのような仕組みはとても励みになりますし、それに参加できることを幸運だと思っています」

柔道で2大会連続のオリンピック金メダリストになるために人生の全てを捧げたハリソンは、28歳になった今からでも、総合格闘技の世界に大きな足跡を彼女の格闘家としての伝説に加えるための時間は充分にあると信じている。

「毎日、打撃、柔術、そしてレスリングの練習をしています。練習ではいつも苦手なことに取り組むようにしています。そうすることで、試合で明るいスポットライトを浴びる時には、私はオールラウンダーでどんな場面にも対応できるようになるのです」

「私はベスト中のベスト、圧倒的で無敗の存在になりたいのです。私は歴史に名を残して、このスポーツが新しい時代に移るためのお手伝いをしたいと思っています」

 

苦しい過去と挫折... 底から這い上がって新天地で見つけた光

元米国体操ナショナルチーム及びミシガン州立大学の医師であったラリー・ナサールの性的虐待スキャンダルを耳にしたハリソンは即座に行動を起こした。

「私は何人かの女の子たちのケアをしました」とハリソンは語った。2018年1月にナサールが性的虐待の罪で40~175年の懲役判決を受けた際に勇気を出して法廷に立った何人かの少女たちのことだ。

「このような悲劇は絶対に2度と繰り返してはいけません。ですが、この事件は私達の社会が性的虐待についての認識を変えることになりましたし、せめてそれが良い方向に向くきっかけになってほしいと心から願っています」

ハリソンにとっては痛みが伴うことだった。2011年11月、ハリソンは元コーチであったダニエル・ドイルから過去に性的虐待を受けていたことを初めて公表した。ドイルの虐待はハリソンが13歳のときから3年間続いた。ドイルは2007年に懲役10年の実刑判決を受けている。

深く傷ついたハリソンはオハイオからボストンに転居し、ジミー・ペドロ親子が主宰するペドロ柔道センターで新たなスタートを切った。ハリソンには愛する柔道を続けるための内なる力が必要だったのだ。

「あの頃はもちろん人生最悪の時期でした。自殺したいとまで思っていましたし、惨めでした。これ以上落ちるところがないまで落ちました。ですから、ペドロ柔道センターに足を踏み入れたことは言葉に出来ないほどの幸運でした。ペドロ親子はコーチとして素晴らしいだけではなく、素晴らしい人間だったからです」

「彼らは文字通りゼロだった私を立ち上げて、今の私にしてくれました。正直に言って、彼らがいなければ、私は今ここにいません。元コーチのことがあった後で、彼らを信じることは難しかったかと聞かれたら、それはイエスです。信じる価値はあったかと聞かれたら、それは絶対にイエスです」

 

「まるで殺し合いのようでした」ラウジーとの切磋琢磨

ペドロ親子はハリソンの練習パートナーとして頻繁にある若い柔道家を指名した。それがあのロンダ・ラウジーに他ならない。

「ロンダと私は柔道時代を通してチームメイトでした。チームメイトであり、ルームメイトであり、トレーニングパートナーでした。私達はいつも一緒にトレーニングしていたのです」

実のところ、ハリソンは彼女らがヒートアップするあまり、2人とも泣きながらジムから帰った日のことを記憶している。

「まるで2人とも野獣のようになっていました。まるで殺し合いのようでした。私達は2人とも泣き出してしまって、ジミーがそれを見て、”信じられるか?世界最強の2人の女性が今ここにいて、そして2人とも泣いているんだ”と言ったものです」

この激しいライバル関係は大きな実を結んだ。ラウジーは2008年オリンピックで銅メダルを獲得し、その後UFCで総合格闘技界のスーパースターになった。ハリソンは2012年と2016年のオリンピックで金メダルを獲得した。

 

教育界にも影響を与える存在へ

総合格闘技のスキルを磨くとともに、ハリソンは児童性的虐待の被害者を支援する活動を続けている。ハリソンが主宰する「FEARLESS FOUNDATION」は「児童性的虐待の暗闇に光をあて、教育とスポーツを通じて、被害から立ち直り、彼らの人生で輝きを獲得することを支援する」ことを使命にしている。

昨年春にハリソンは彼女の経験を詳しく書いた著書『Fighting Back』を発表した。その本に基づいた教育カリキュラムを作り上げる作業を行っていて、それが全米の学校で使われることを望んでいるともスポーティングニュースに語っている。

「それは性的虐待の兆候をもっと早い段階で見分けることについてです。そうすることで被害者の数を少なく出来るようになります」

 

原文:Kayla Harrison trying to make presence felt in PFL, continues helping child sexual abuse survivors
翻訳:角谷剛
編集:SNJ編集部

 

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※記事はIOC公式サイト『Olympic Channel』提供

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「※」は提携サイト『Goal』の記事です

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Mark Lelinwalla is a contributing writer and editor for DAZN News. He has written for the likes of the New York Daily News, Men's Health, The Associated Press, Sports Illustrated, Complex, XXL and Vibe Magazine.