コロナぶっ飛ばす話題満載…2021年プロ野球に吹く「新風」

菅谷 齊

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春、野球の季節到来。今年のプロ野球は、久しぶりに若い力が注目を集めている。コロナ禍でうんざり気味の今、さわやかな風となるだろう。

■伝統カードで競うか、ルーキー左打ちの大砲佐藤と好打秋広

いきなり西の方向からいい風が吹いてきた。阪神のドラフト1位、左打ち佐藤輝明(てるあき、近大)の強打である。オープン戦初日(3月5日)のソフトバンク戦で、最初の打席で左翼ホームラン。広いペイペイドームだけに驚きの歓声が上がった。

この佐藤、入団の席で「日本を代表する打者になりたい」と、堂々と言い切った。いわゆる“ビッグマウス”なのだが、キャンプから練習試合、オープン戦と有限実行のバッティングを見せている。握力が右76.1キロ、左73.5キロで呼び名は「規格外」「怪物」

痛快なエピソードは14日の日曜日。甲子園で巨人と対戦し、4本目のアーチを放った。その日の朝、巨人の原辰徳監督がテレビ出演し、佐藤の話を振られると「欲しかった選手でしたね」とコメント。打たれた高橋優貴(ゆうき、八戸学院大)は首脳陣から「ファームでやり直し」。佐藤のパンチにぶっ飛ばされた格好だった。開幕戦は三塁か外野か、気になるところである。

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対する巨人にはドラフト5位の秋広優人(あきひろ・ゆうき、東京・二松学舎大付高)が脚光を浴びている。身長2メートルの超大型左打ちの一塁手。原監督がぞっこん惚れ込んでおり、直接指導するほど。「懐を広く、センター方向に打つ気持ちで」とアドバイスを受けた途端、7日の日本ハム戦で2安打。左右に打ち分ける巧さも持っている。

「ただ夢中。一生懸命です」と初々しい本人。周囲の見方は素晴らしく「高校生の新人とは思えない雰囲気」と評論家の先生方。「清原(和博)の再来」という声も出るほどである。王貞治以来の高校新人の開幕戦先発が目下の関心となっている。

■お待たせ、2年目の佐々木朗と奥川

12日の実戦初登板で153キロを出したロッテの佐々木朗希(ろうき、岩手・大船渡高)。中日の主砲ビシエドに速球で立ち向かい、外角152キロで三振に仕留めた。1イニングながら売り物の快速球は本物だった。

2019年の甲子園予選岩手県大会決勝で投げなかったことで有名になった珍しいエピソードの持ち主。1年目は体力作りに専念し、いよいよ出番である。

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同じ状況にあったのがヤクルトの奥川恭伸(おくがわ・やすのぶ、石川・星陵高)。こちらは甲子園の準優勝で一気に全国区の人気者になった。やはり1年間は体作り。投手陣が不安なチームだけに期待は大きい。「最下位脱出のカギ」とも。

両右腕投手に共通しているのは「大事に育てられている」こと。本番でどんな投球を見せるか。ともに新人王の資格はある。

■実力発揮の野村、よみがえる藤浪

北からの熱い風。日本ハムの野村祐希(ゆうき、埼玉・花咲徳栄高)がいい。10日のDeNA戦で本塁打を含む3安打3打点。もともと打力は高い評価を受けていたが、3年目に実力発揮で、打線に不安のあるチームにとって大きな戦力になるだろう。

不運の連続だった。股関節脱臼、右手小指骨折で2度手術。出遅れを克服しての三塁のレギュラー取りである。

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甲子園の春夏連覇エース、ドラフト1位で新人の13年10勝、15年14勝。それが制球難から勝てなくなり、昨年は1勝と、ここ数年は不振。そこから脱出し、元の姿に戻ってきたのが阪神の藤浪晋太郎(大阪桐蔭高)。

相手打者が死球を怖がったコントロールのひどさが消えたからである。12日の西武戦では5イニングを投げ、復活をアピールした。「開幕戦は藤浪」と監督からお墨付き。初めてのオープニング投手の栄誉をつかんだ。

■大リーガー田中に新人NO1の左腕早川

石井一久GMが監督に天下ったことで話題になった楽天。ヤンキースから戻ってきた田中将大(北海道・駒大苫小牧高)は、最近にはないビッグニュースだった。年俸9億円-。14日のDeNA戦(静岡)は予定を変更して先発登板となると、ファンが殺到して入場券はあっという間に売り切れ、外野席を開放した。

24勝無敗で米国に渡ったのだが、当然ファンの関心は自身の持つ28連勝の日本記録をどこまで伸ばせるか。黄金時代のソフトバンクとの対戦は、仙台も福岡も超満員になるのは確実。リーグ人気がさらに高まるだろう。

この現役大リーガーから学んでいるのがドラフト1位の早川隆久(たかひさ、早大)。14日に田中の後を継いで登板し、持ち前の速球と制球で無失点に抑えた。開幕からローテーション入りは間違いない。むろん新人王の第1候補である。

■全球団が警戒する桑田マジック

コーチでこれほど注目された野球人はいない。あの桑田真澄(ますみ、PL学園高)である。監督でもないのに、だ。しゃべりの巧みさはアドバイスを受ける投手たちがうっとりといったところ。メディアも連日のように取り上げている。

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エースの菅野智之(ともゆき、東海大)に新しい武器が加わった。桑田直伝のカーブである。桑田のカーブは大きく曲がり落ちてくる決め球でもあった。菅野のスライダーはほとんど打たれないのだが、これで横と縦の変化球がそろったわけで、さらに手が付けられなくなったといえる。

「私が一番好きなのは守備。次がバッティング。投手はもっともやりたくなかった」と言う桑田。おトボケか。“桑田マジック”は、巨人の天敵ソフトバンクをどう惑わすか、シーズン最後のお楽しみである。


「略歴」

菅谷 齊(すがや・ひとし) 東京・港区生まれ、法大卒。共同通信で巨人、阪神、大リーグなどを担当。黒い霧事件、長嶋茂雄監督解任、江川卓巨人入団をはじめ、金田正一の400勝、王貞治の756本塁打、江夏豊のオールスター戦9連続三振などを取材。1984年ロサンゼルス五輪特派員。スポーツデータ部長、編集委員。野球殿堂選考代表幹事を務め、三井ゴールデングラブ賞設立に尽力。大沢啓二理事長時代の社団法人・全国野球振興会(プロ野球OBクラブ)事務局長。ビジネススクールのマスコミ講師などを歴任。法政二高が甲子園夏春連覇した時の野球部員。同期に元巨人の柴田勲、後輩に日本人初の大リーガー村上雅則ら。現在は共同通信社友、東京運動記者クラブ会友、日本記者クラブ会員、東京プロ野球記者OBクラブ会長。

菅谷 齊