全英オープン2018を10倍楽しむために。見どころや豆知識、放送日程をご紹介

Reiko Takekawa

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全英オープンとは

150年以上の歴史は、世界最古の戦い

全英オープンが始まったのは1860年、当時の日本はまだ江戸時代だったことを考えると、その歴史の長さがうかがえる。第一回大会の舞台はスコットランド、グラスゴー郊外のプレストウィックGC。そのリンクスコースに8名のプロフェッショナルが集まり、“世界一のゴルファーを決める大会”を開催した。これが“全英オープン”の始まりだ。

栄えある第一回勝者はサー・ウィリアム・パークで、オールド・トム・モリスに2打差で勝利したが、翌年はオールド・トム・モリスが4打差でリベンジを果たした。その後、大会は世界へと開かれていき、1900年代に入ると米国勢も戦いに加わる。そうしてボビー・ジョーンズ、ウォルター・ヘーゲン、ベン・ホーガン、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウス、そしてタイガー・ウッズと偉大なチャンピオンが歴史に名を刻んだ。

チャンピオンが得るもの

第一回の勝者に賞金はなく、代わりに“チャレンジベルト”と呼ばれる革製ベルトが送られた。銀のバックルに美しい彫りが施され、これは当時でも25ポンド(約3750円)と高価なものだった。現在の“クラレットジャグ”と呼ばれる優勝トロフィが寄贈されるようになったのは1873年から。これは本物の“ジャグ”(水差し)で、優勝者は赤ワインなどそれぞれの思いを込めた飲み物で勝利を祝うのが習慣だ。

全英オープン 2018の見どころ

松山英樹のメジャー初制覇の挑戦は日本人にとって最大の見どころ

松山英樹は、昨年のロイヤルバークデールGC大会で、首位と7打差ながら5位の好位置で最終日を迎えていた。何が起こるか分からないリンクスコース、前月の全米オープンでも最終日に追い上げがあったため、逆転優勝に大きな期待が掛かった。しかし、出だしの1番ホールでティーショットを右に曲げてOB、そこから立て直すことができず14位に沈んだ。今年で6度目の全英挑戦となる松山だが、この大会との相性は悪くない。初出場の13年では、ミュアフィールド・ゴルフリンクスでは6位の好成績を残している。

また、昨年松山はメジャー初優勝に大きく近づいた。世界ゴルフ選手権シリーズのブリヂストン招待では最終日に61をマークし大逆転で勝利し、その勢いのまま臨んだメジャー最終戦・全米プロゴルフ選手権で、ジャスティン・トーマス(米国)に敗れはしたものの、最後まで優勝争いを演じた。俄然今年はメジャー初制覇に大きな期待が掛かる。ここまでは2月に負った左手のケガ影響で、4月マスターズは19位、6月全米オープンは16位と思った結果が残せていなが、先週に欧州ツアーのスコティッシュオープンに参戦し、リンクスコースでの良い準備もできた。勢いを取り戻す可能性は大いにある。

タイガー・ウッズ(米国)、メジャー15勝目の可能性は?

4度目の腰の手術を経て、今年ツアー復帰を果たしたタイガー・ウッズは、3月のバルスパー選手権で優勝争いに加わり、42歳となった現在でも十二分にトップレベルで戦えることを証明してみせた。平均飛距離は304.9ヤードで米ツアー28位、ティーからグリーンまでのショットの精度はツアー6位と、データにもショットの質の高さが表れている。にもかかわらず、ここまで勝ちに恵まれていないのは、4月のマスターズでも見られたように、パッティングが大きく足を引っ張ってしまっているからだ。そうした課題を解決するため、ウッズはパターを変更。自身の基金が主催する大会である、クィッケンローンズ・ナショナルでは、マレットパター(クラブ契約を結んでいるテーラーメイドの『TPコレクション・アードモア3(プロトタイプ)』)を手にした。これまでのプロキャリアのほとんどでスコッティ・キャメロン、ニューポート2・GSS、“ブレード型”を使用し、メジャー14勝中13勝をこのエースパターでつかんできたウッズだが、思い切ってそれを変えてみると、パッティングが大きく改善された。「自分のフィーリングを感じられるようになった。何よりも思ったラインに打ち出せるのが大きい」と、パター変更の判断が、4位に入った同大会の好成績につながったと分析している。

さて、こうなるとウッズがメジャーで復活することに大きな期待が掛かるのは当然だろう。クィッケンローンズ・ナショナルでは1〜2メートルのショートパットを外すシーンがまだ見られたが、ミドルレンジの6〜7メートルのパットが決まっていた。パッティングのストロークゲインは4日間のトータルでは1.194で7位、最終日に限ると2.948で4位と、パッティングの改善がスコアに大きく貢献したのは間違いない。

「全英ではグリーン周りからパターを使うこともしばしば。とくにパッティングがカギになる」とウッズは自信をみせている。

これまでに全英オープンでは3勝、そのうち2勝がセント・アンドリュース・オールドコース(00年、05年)で、06年のロイヤルリバプールが最後の勝利。カーヌスティでは99年が7位、07年は12位と、決して相性は悪くない。パッティングが復活したウッズがメジャーでどこまで戦えるか、「パットが決まれば優勝争いはできる」という強気の言葉が現実となるか注目だ。

優勝候補の1番手は?

今年のここまでのメジャーを振り返ると、マスターズはパトリック・リード(米国)、全米オープンはブルックス・ケプカ(米国)とそれぞれ米国勢が制しているが、ずば抜けて好調な選手はいない。

そんな中、優勝候補の一番手に挙げられるのは、世界ランキング1位のダスティン・ジョンソン(米国)だ。全英オープンの成績は、昨年のロイヤルバークデールは54位、過去最高は11年のセント・ジョージズで2位。残念ながらリンクスのプレーはあまり得意ではないが、飛距離に加えて小技に磨きが掛かったジョンソンが波に乗れば、圧勝もあり得る。

大舞台に強いジョーダン・スピース、大会連覇の可能性はあるか?

昨年の全英オープンでは、ジョーダン・スピース(米国)が、ロイヤルバークデールでの最終日にショットを曲げながらも次々とロングパットを決め優勝。24歳になる前にメジャー3勝目を挙げた。13番パー4では右の深いラフに打ち込んだものの、これを練習場にドロップするという奇想な発想で、伝説の一打を放ちボギーに抑えて勝利をたぐり寄せた。以降1年間はパッティングに苦しみ、勝利から遠ざかっているが、大舞台に強いスピースからは目が離せない。

過去の全英オープンのドラマ

99年に今年の舞台、カーヌスティで起きた”バン・デ・ベルデの悲劇”

「2位の選手の名前など、誰も覚えていない」

そう言ったのはウォルター・ヘーゲン(米国)。しかし99年、カーヌスティGCを2位で終えたジャン・バン・デ・ベルデ(フランス・当時33歳)の名前は、優勝したポール・ローリー(英国)よりも世界に広く知られてしまった。

強風と厳しいコンディションで多くの選手が苦戦する中、バン・デ・ベルデは最終日の18番(487ヤード・パー4)を通算3オーバー、2位に3打リードして迎えた。ダブルボギーでも優勝という場面で誰しも彼の勝利を確信した。バン・デ・ベルデは誰よりもアグレッシブだった。ドライバーを手にしたティーショットは右のラフへ、フェアウエーを横切るバリーバーンを避けることはできた。第2打は2番アイアン、驚くほどの攻めだった。これがグリーン右のギャラリースタンドに当たると大きく手前に跳ねて深いラフへ、第3打をバリーバーンへ落とし、さらにこの第4打を水の中から打とうと靴を脱いでバーンの中へ。結局後方にドロップしたが7のトリプルボギー、ローリーとジャスティン・レナードとのプレーオフになり敗れた。「全英オープン史上、最大の悲劇」とも言われた大逆転負けとなってしまった。

79年、ロイヤルリザム&セントアンズでの”駐車場からの一打”

当時22歳だったスペインの英雄、セベ・バレステロスが“駐車場”から果敢に攻めた一打は今も語り継がれている。最終日、首位を行くバレステロスは16番パー4(356ヤード)でドライバーをめいっぱい振ると、ギャラリーの駐車場へと打ち込んでしまった。車の合間にボールは見つかり、大勢のギャラリーが集まる中で車がのけられると、ベアグランドから打った第2打はピン4メートル。伝説の一打となった。このパットを沈めてバーディーを奪い勝利を手中に収めたバレステロスの攻めのプレースタイルは、世界のゴルフファンを魅了した。ちなみに昨年、ロイヤルバークデールの13番でジョーダン・スピースが練習場から放った第2打は、バレステロスの伝説の一打に例えられている。

77年の”白昼の決闘”(The Duel in the Sun)

”白昼の決闘”(The Duel in the Sun)と呼ばれるのが1977年、ターンベリーでのトム・ワトソンとジャック・ニクラウス(ともに米国)の戦いだ。

最終日、15番を終えて残り3ホールでともに11アンダー。3位とは10打差をつけていたため、試合は最終組の二人だけの戦いだった。

当時、ニクラウスは37歳、メジャー14勝と圧倒的な実績を誇っていたが、10年若いワトソンは、その年にマスターズにも勝利し、好調だった。

明暗を分けたのは17番パー5だった。ワトソンは3番アイアンで2オン、2パットで沈めたのに対し、ニクラウスは1メートルのバーディーパットが入らずパー、ワトソンが1打リードで最終18番を迎えた。ドライバーで果敢に攻めたニクラウスはラフに打ち込んだがこれをグリーンエッジに乗せて、この10メートルを沈めてバーディー。しかしワトソンも7番アイアンでの第2打を1メートルにつけるスーパーショットを披露し、このバーディーパットをしっかりと沈めると、ニクラウスを1打差で抑え勝利を収めた。初めてターンベリーで開催された全英オープンだったが、海岸線に傾いた夕陽から差す光りで輝いたフェアウエーでの戦いはまさに“白昼の決闘”。敗れたニクラウスは「私はこういう戦いをするためにゴルフをしているんだよ」と名言を残した。

全英オープンと日本人選手

今年の日本人選手は、出場6回目となる松山英樹を筆頭に、小平智、池田勇太、谷原秀人、宮里優作、市原弘大、秋吉翔太、時松隆光、川村昌弘、小林正則と総勢10名が参戦する。

日本人最高成績保持者は、82年、ロイヤルトルーンで4位に入った倉本昌弘だ。まだプロ転向2年目という若さながら、優勝したトム・ワトソンに2打差に迫った場面もあった。飛距離よりも小技が活きる全英オープンは、日本勢にとって最も優勝の可能性が高いメジャー大会と言われる。実際にその悲願達成に最も近づいたのは、02年、ミュアフィールドでの丸山茂樹だろう。最終日、激しい雨風の中一時は単独首位に立つ場面もあったが、最終成績は5位。これはプレーオフに進んだ4人にわずか1打及ばない惜敗だった。

その後、06年には谷原秀人がロイヤルリバプールでの戦いで5位と健闘したものの、そこからは日本勢の低迷が続いていた。13年に初出場の松山英樹が6位に食い込み、再び日本勢悲願のメジャー初制覇へと期待が膨らんでいる。

トミーズバンカーの由来

セント・アンドリュース、オールドコースの17番ホール、グリーン手前にあるポットバンカーはこう呼ばれている。これは1978年、全英オープンに出場していた中嶋常幸がこのバンカーから脱出するのに4打要した。海外ではトミー中嶋と登録していたことから“トミーズバンカー”と名付けられてしまった。

全英オープンのコース

今年の舞台は、全英オープンの中でも最も難易度の高いと言われる“カーヌスティ・ゴルフリンクス”だ。コースの全長は7400ヤードを超え、パー71は全英で最長と距離はたっぷり。“バリーバーン”と呼ばれる小川が走り、北海からの風が吹けば驚異的な難コースが姿を現す。このカーヌスティでゴルフが始められたのは16世紀からだが、なぜ最も難しいとコースだと言われるのだろうか?

その理由を如実に表しているのが、過去に7度開催された全英オープンのスコアだ。1968年、ゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)が289で勝利、99年大会ではポール・ローリー(英国)が290、通算6オーバーで勝利している。150年以上の歴史の中でのワースト4の記録位のうち、2つはカーヌスティでのスコアなのである。

とくに難しいのは、上がりの4ホールだ。 17,18番には“バリーバーン”がS字状にコースを走り、風と乾いたコースではフェアウエーに止めるのは至難の業。17番、18番ともにフェアウエーを3度も横切るバリーバーンは、これまで数々のドラマを生んできた。

さらにラフは深い。この長いフェスキューに入るとピッチアウトするのも容易ではない。そしてお決まりのポットバンカーもフェアウエーのあちこちに待ち受けている。

また、今年のカーヌスティは好天に恵まれてきたのでフェアウエーがドライに仕上がっている。つまりフェアウエーに落ちたボールはどこまでも転がってしまい、コントロール不能に陥ってしまう。おそらく、ドライバーで攻めるホールは大きく減るだろう。“ゲール“と呼ばれる突風が吹くこともしばしばあり、最後の最後まで勝負が分からないのがカーヌスティの特徴だ。

全英オープンの”ロタ”

”ロタ”とはローテーションのことで、現在の全英オープンは10コースを持ち回る形で開催されている。

ホーム・オブ・ゴルフであるセント・アンドリュース・オールドコースはおおよそ5年に1度の開催。今年の舞台であるカーヌスティに加え、ロイヤルセントジョージズに、ロイヤルバークデール、ミュアフィールド、ロイヤルトルーン、ロイヤルリザム&セントアンズ、ロイヤルリバプール、ターンベリーといったコースが使われる。そして来年の舞台でアイルランドのロイヤルポートラッシュで、1951年以来、実に68年ぶりの開催だ。

また過去には第一回大会のプレストウィックGC、マッセルバラリンクスGC、プリンセスなどでも全英オープンが開催されている。

 

今でも全英オープンのティータイムは1番からと1ウェイ、その理由は

英国のコースの多くは9番でクラブハウスに戻ってくることが少なく、1番から9番が外に出て行き、10番で折り返してクラブハウスへ戻ってくる。それでゴルフは前半をアウト(行き)、後半をイン(戻る)と呼ぶ語源となっている。

全米オープンなどのメジャー大会でも、予選ラウンドは1番、10番の2ティーを使用する(出場人数が少ないマスターズを除く)。数年前全英オープンでも、2ティーにしてはどうかという議論が起こったが、結局変更はなかった。156名が出場する全英オープンは、予選ラウンドの 1組目は早朝の 6時35分にスタート、最終組は午後4時16分スタート、一日が終わるのは午後9時近くだ。

英国の夏は白夜に近く、いつまでも明るいため遅い時間でもゴルフができるのだ。

全英オープン2018の大会日程

数々の歴史とドラマを生んできた全英オープンの、今年の大会日程と放送予定は以下の通り。

大会日程・放送時間・放送予定

  1日目 2018年7月19日 23:30-翌4:00 テレビ朝日 LIVE
  2日目 2018年7月20日 23:15-翌4:00 テレビ朝日 LIVE
  3日目 2018年7月21日 23:15-翌4:00 テレビ朝日 LIVE
  最終日 2018年7月22日 22:00-翌4:00 テレビ朝日 LIVE
  1日目 2018年7月19日 14:30-翌4:00 ゴルフネットワーク LIVE
  2日目 2018年7月20日 14:30-翌4:00 ゴルフネットワーク LIVE
  3日目 2018年7月21日 17:00-翌4:00 ゴルフネットワーク LIVE
  最終日 2018年7月22日 16:00-翌3:00 ゴルフネットワーク LIVE
 

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Reiko Takekawa