東京五輪バスケ女子決勝:日本代表の前に立ちはだかる女王アメリカ代表の“生ける伝説”スー・バード

Tasuku Okawa

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五輪最後の試合に臨む女子米国代表の“レジェンド”

東京オリンピック最終日に行われるバスケットボール女子決勝、日本代表対アメリカ代表は歴史に残る勝負になる。

準決勝でフランス代表を下し、史上初の決勝進出を果たした日本にとっては、決勝進出自体が快挙だ。しかし、史上初となる金メダル獲得を目指す日本を決勝で待ち受けるのは、過去6連覇を果たしている“絶対女王”アメリカだ。この決勝はアメリカにとって、チームとしての6連覇に加えてもうひとつの“重要な意味”を持つ試合となる。

アメリカは準決勝でセルビアを79-59で破り、これでオリンピック戦54連勝を達成、7大会連続優勝への切符を手にした。セルビア戦では2m超えの長身センター、ブリトニー・グライナーが15得点、12リバウンドでチームを牽引し、フォワードのブリアナ・スチュワートも12得点、10リバウンドを記録。また、シューティングガードを務めるチェルシー・グレイは14点を獲得し、80%超の確率でシュートを決め、3点シュートも2回成功した。

そして、この超強力なオフェンス陣を操るのがスー・バードだ。175cmと小柄ながらボールハンドリングスキルとパスセンスは超一級品で、セルビア戦では8得点、4アシスト、3リバウンド、3スティールをマーク。2002年4月にアメリカ代表に招集されて以来、約20年間、第一線で戦い続け、その間に五輪では4大会連続で金メダルを獲得した生ける伝説だ。

そのバードは今大会の初戦を終えた後、米国から訪れた記者たちに「この大会が最後の五輪になる」と淡々と告白している。40歳にしてそのパフォーマンスはいまだ衰えておらず、この大会でも主力を務めて決勝進出の原動力となっている。

そのバードにとって最後の五輪試合となるのが、日本と戦うこの決勝の舞台なのである。代表のユニフォームを着て、コート上からチームを操る姿も、これであと1試合で見納めとなる。

ただ、本人はそれでチームや自身に変なプレッシャーをかけたくないと、淡々と“ラストダンス”の準備を進めている。バードと共に4度五輪金メダルを獲得したダイアナ・タラーシ曰く「スーは 『これが最後』とは言いたくないと言っていた」。

だが、バードの偉業を誰もが知るからこそ、その別れを意識しないはずがない。バードとは代表で、そしてWNBAシアトル・ストームでの同僚でもあるスチュワートも「そのことについてあまり触れないけど、皆、そのことを意識している」と話した。タラーシは「その時が来たことはわかっているつもり」と、長年苦楽を共にした戦友との別れを覚悟している。

今大会を取材する『ワシントン・ポスト』のエバ・ウォレス記者の言葉を借りれば「バードがアメリカ女子バスケットボール代表を去るのは、マイケル・フェルプスが水泳界を去る。あるいは、ティム・ダンカンが(NBAのサンアントニオ)スパーズから引退するようなもの」。バードの代表引退が、アメリカにとっていかに大きなものか伺える。

前人未到の7連覇で優勝する、そして功労者バードに5つ目の五輪金メダルで有終の美を飾ってもらう――。優勝する理由がひとつ増えたアメリカが、金メダルを狙う日本の前に立ちはだかる。

Tasuku Okawa