小平、髙木姉妹、新濱ら日本スピードスケート、平昌に続くメダルラッシュを期待:北京五輪プレビュー

マンティー・チダ

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タイムを競うスピードスケート、着順を争うショートトラック

スケート競技でタイムや着順を争うのは、『スピードスケート』と『ショートトラック』の2種目。競技の特性は似ているようで似ていない。スピードスケートがタイムを争うのに対して、ショートトラックは着順を争う競技。リンクの大きさもそれぞれ違う。

スピードスケートは、1周400mのリンクでタイムを競う。内側半径26m、レーン幅4mのダブルトラックで実施。選手は内側と外側それぞれからスタートし、バックストレートにある交差区間で内側と外側の選手が入れ替わって滑走する。

個人種目は、500mから10000m(女子は5000m)まで距離も様々。2人1組で競い、短距離はいかに早くトップスピードに達するかが大きなポイント。一方、中長距離はペース配分をしながらラップタイムを刻み、粘り強いスケーティングが必要とされている。

2006年トリノ五輪から採用されたのは、団体追い抜き(チームパシュート)で、3人1組で空気抵抗の大きい先頭を入れ替えながら、男子は8周、女子は6周リンクを周回する。この競技は、先頭交代のタイミングといった戦術面の充実が求められる。最後尾の選手で計時されるため、3人でまとまってゴールするのが理想。空気抵抗が大きくなるため、隊列から離れる選手が出ると空気抵抗が大きくなり、タイムをロスする。

マススタートは前回2018年の平昌五輪から採用された。決勝は16人が一斉にスタートして16周で争われる。1~3位は最終着順通りとなるが、4位以下は順位のポイントの他に、4周ごとの中間ポイントを合わせて決定する。中間ポイントやゴール前はスプリント勝負となるため、アクシデントも多い。コースの位置取り、仕掛けるポイントが勝敗を分ける。

一方のショートトラックは、1周111.12mのトラックを集団で滑走する競技で、フィギュアスケート(60m×30m)と同じリンクで行われる。集団で滑走するため、コースの奪い合いや、選手同士の接触から順位の入れ替わりが激しい。記録で決まるスピードスケートに対して、着順で順位が決まるため、勝負に徹するレース展開になりやすく、駆け引きの応酬がみどころでもある。

種目としては、男女ともに500m、1000m、1500mとリレーがあり、北京五輪からは男女混合リレーが新種目として実施される。レース中の追い越しはいつでも可能だが、前の選手を押したり、引っ張ったりするなどの妨害行為は失格となり、次のラウンドには進めない。コーナーから直線へ繋がる部分で順位が入れ替わりやすいため、仕掛けどころやコース取りなど、迫力ある攻防を制したものがメダルへ大きく近づくことになる。

スピードスケート女子はメダルラッシュ再び? 男子は500mに期待

日本のスピードスケート勢は、前回の平昌五輪で金メダル3個を含む、6個のメダルを獲得した。このメダルは女子だけで獲得したものであり、今回の北京五輪でもメダル経験者が顔を揃える。

髙木菜那、佐藤綾乃、髙木美帆はチームパシュートの練習を公開。金メダルを狙う

まずは北京五輪日本代表選手団主将を担うことになった髙木美帆(上記画像右端)。平昌五輪では、チームパシュートで金メダル、1500mで銀、1000mで銅と1人で金銀銅を獲得した。今回は500m、1000m、1500m、3000m、チームパシュートと5種目に出場する。5種目出場は、1992年アルベールビル五輪の橋本聖子以来である。

特に世界記録を保持する1500mは、自身初の個人種目金メダルへ期待が高まる。今季もワールドカップでは3勝をマークし、2位以下を0.5秒以上離して快勝するなど、安定した成績を残している。1000mでは、ワールドカップで1勝、2位が2回と上位をキープ。好調さをキープできていれば自ずと金メダルも見えてくるだろう。

チームパシュートは姉の髙木菜那、佐藤綾乃と組んで世界新記録を樹立するなど、こちらは平昌五輪に続いて連覇を狙いたい。500mや3000mにおいてもメダル圏内であるため、出場5種目全てでメダル獲得の偉業を達成する可能性もある。

小平奈緒は平昌に続いて500m2連覇なるか

小平奈緒も500mで連覇を虎視眈々と狙っている。今季のワールドカップでは1勝、8レース中6レースで3位以内に入るなど、安定感は抜群。十分に金メダル射程圏内だろう。佐藤綾乃は1500mで髙木美帆とダブル表彰台を狙える位置。髙木美帆より1試合多く出場しているが、今季ワールドカップランキングを1位としている。

男子エースとして北京に臨む新濱立也

今回は男子短距離陣もメダルが期待できる。特に500mでは、2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪ではメダル獲得に至らなかったが、今回は期待できる布陣である。まず、今季ワールドカップ2勝の新濱立也。2020年世界スピードスケート選手権では、1987年黒岩彰以来、日本人2人目の総合優勝という快挙を成し遂げた。

新濱を追う形で実力をつけてきた森重航

2021年12月に行われた選考会で、新濱を抑えて優勝したのが森重航。今季ワールドカップでは1勝をあげており、持ちタイムも33秒台である。そして、選考会で3番目の椅子に滑り込んだのが村上右磨。選考会こそ、新濱や森重に甘んじたが、ワールドカップカルガリー大会では、新濱や森重をおさえて表彰台に入っている。海外勢も含めて、男子500mは混戦が予想されるだろう。

ショートトラックはこれまでメダリストは1人だけで、1998年長野五輪の男子500mで金メダルを獲った西谷岳文のみである。今季、日本勢はワールドカップの決勝進出は1回だけ(名古屋大会女子1500m菊池純礼)。この結果から見ると北京では厳しい戦いとなる見込みだ。

日本のメダルラッシュを阻むライバルも強力

500mで小平らのライバルとなる米国のエリン・ジャクソン

スピードスケート女子では、今季ワールドカップ500mで4勝のエリン・ジャクソン(上記画像)、1000m世界記録保持者であるブリタニー・ボウのアメリカ勢がメダル争いのライバルとなるだろう。

ジャクソンは500mの国内選考会で3位に終わり、五輪出場権を逃していたが、500mで1位となったボウが枠を放棄して、ジャクソンに出場権を譲っていた。調子を取り戻してくれば、侮れない存在となる。そのボウは今季ワールドカップ1000mで髙木美帆を下している唯一の選手だ。

新濱が警戒するローラン・デュブルイユ

男子500mはローラン・デュブルイユ(カナダ、上記画像)が、新濱らのライバルになりそうだ。今季のワールドカップでは新濱と並んで2勝をあげており、2020年世界スピードスケート選手権では新濱に続いて2位に入っている。

男子の長距離ではニルス・ファンデルプール(スウェーデン)に注目。5000mと10000mの世界記録保持者で、5000mは2021年12月に塗り替えたばかりだ。28秒台前半の高速ラップは脅威的。

スピードスケートは空気抵抗で高地ほど記録が出やすいと言われているが、ファンデルプールは低地にあるオランダ国内のリンクでも世界新記録を樹立した経験を持つ。北京五輪では世界記録更新にも期待がかかる。北京のリンクでファンデルプールの高速ラップから、どよめきが起こる姿を想像できる。

女子の長距離ではイレーネ・シャウテン(オランダ)の名前をあげておきたい。今季のワールドカップにおいて、3000mで2勝、5000mで1勝と圧倒的な成績を残している。当然ながらこの2種目の金メダル候補だ。

ショートトラックは女子のアリアナ・フォンタナ(イタリア)だろう。平昌五輪では500mで金メダル、3000mリレーで銀メダル、1000mで銅メダルなど、ここまで冬季五輪で計6個のメダルを獲得している。今季のワールドカップでも、4レースすべて2位以上で、名古屋大会では優勝を飾るなど、安定感がずば抜けている。果たして五輪連覇達成なるだろうか。

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