スポーツ業界への登竜門。無償でも参加するべき東京五輪のボランティア

Ryo Shinkawa

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東京オリンピック・パラリンピックに向けたボランティアの在り方に賛否両論が飛び交っている。問題視されているのは、交通費が出ないことや拘束時間の長さだ。

ところが、ボランティアの募集が始まると10月17日時点で応募人数は4万7千人を超え、登録手続き中の人を含めると、8万5千人になるという。開催2年前であるにも関わらず目標人数の8万人を上回る盛況ぶりだ。応募者はそれぞれ違うモチベーションを持っているだろうが、五輪のボランティアはなによりスポーツ業界を志す者にとって最高のチャンスになる。

米国では、オリンピックのように大きなモーメントでなくても、スポーツの現場で経験を積みたいという人は多い。米国のスポーツ業界を目指す人にとってはインターンは「登竜門」とされており、参加するには激しい競争を勝ち抜かなければならない。特に、MLBやNBAに携わるインターンは大人気で、貴重な経験を求めて報酬が無くとも志願者が集まってくるのだ。

今回の東京オリンピック・パラリンピックのボランティアも、金銭には代えられない体験が参加者へのインセンティブになる。だが、日本ではインターンシップで経験を積んで夢の職業に就く、というストーリーがまだ根付いていない。そのため、無償のインターンシップは割に合わないと考える人が少なくない。東京五輪の開催は、こうした意識を変えるきっかけになるのではないだろうか。

私事ではあるが、筆者は2007年に大阪で開催された世界陸上の通訳ボランティアに参加した経験がある。大会期間中はバハマ共和国の選手やスタッフに帯同して大阪案内から大会での通訳など幅広い経験をさせていただいた。このボランティア期間中、スポンサーメーカーからのシューズやウェアの配布などはあったが、金銭の対価はなかった。それでも、自分の将来のためにボランティアに参加することに強い意義を感じていた。

この他にも、メジャーリーグの舞台でインターンを勝ち取るまでに様々なスポーツイベントに参加した。それら全てが今に繋がる財産になっている。利己的な目的でボランティアをすることには賛否両論があるかもしれないが、それがスポーツイベントでボランティア活動をする意義であることは間違いない。

世界陸上大会の冊子に掲載されていたボランティアが実行すべき目標の1つに「集団行動を通して、ボランティアの個人個人の決意の実現を奨励する」という項目がある。ボランティアはただの社会貢献と考えるのではなく、自己実現のための機会と捉えても良いのではないだろうか。

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Ryo Shinkawa