ウガンダ選手が大会前に行方不明…過去にも大会後、アフリカ系選手に多発

神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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東京オリンピックに出場予定だった重量挙げウガンダ男子代表のジュリアス・セチトレコ選手(20)が、合宿滞在中の大阪府泉佐野市の施設から行方を消した。過去の五輪でも競技を終えた選手が行方不明になるケースがある。

セチトレコ選手は、16日の昼に毎日行われているPCR検査を受けていないことが判明。同市の調査員が宿泊するホテルを調べたところ本人の所在が確認できなかったため、警察に行方不明届けを出したという。市によると、同選手は合宿期間中に世界ランキングが下がったことで東京五輪出場権を失い、コーチと共に帰国予定だった。

ウガンダ選手団は、6月19日の来日時、成田空港での検査で9人のうち1人が陽性、事前合宿地の泉佐野市に到着後、さらに1人の陽性が明らかになっていた。その2名もすでに14日間の隔離期間が終了し、練習に合流していた。コロナ禍における東京五輪・パラリンピックの規定(プレーブック)では、選手および関係者は宿泊施設と練習場所、試合会場の移動を除き、外出は認められていない。

今回は大会競技前の行方不明という事件だが、過去の五輪でも、多くの場合競技を終えたあとに出場選手が行方不明になったケースがある。2012年のロンドン五輪では、カメルーンの7選手を皮切りに、コンゴ、エリトリア、ギニア、コートジボアールなど、アフリカ系の選手・関係者が行方不明になったとされている。

主に経済的な理由とされるが、国によっては宗教・言論の自由が制限されている環境からの脱出というケースもある。ロンドン五輪でも、独裁政権下のエリトリアのウェイナイ・ゲブレシラシエ選手が同国3選手とともに政治的亡命を求めた。エリトリアの選手については周辺国で行われるスポーツ大会でも行方不明になるケースも多く、近年では2019年にウガンダで行われたCECAFAカップ終了後に7選手が行方不明になっている。

ウガンダは、軍事クーデターから政権を手にしたヨウェリ・ムセベニ氏が36年間大統領として長期政権を築いているが、150万人ともいわれるアフリカ最大の難民受入国であることから、コロナ禍においてリスクが高まっているという。

また、ロイターによると、南アフリカ各地でズマ前大統領の収監への抗議活動に端を発した暴動が発生しており、日本政府も懸念を持って注視していると伝えている。アフリカ地域のスポーツ選手は厳しい状況に置かれている、あるいは置かれかねないケースが多いようだ。

ただ、今回の日本国内におけるウガンダ選手失踪は、政治的な理由なのか、はたまた別の理由なのかも一切不明だ。失踪直前の体調も不明だという。"バブル開催"の穴を抜けるような失踪事件であることは事実であり、早期に見つかることを期待したい。

追記:2021/7/17
泉佐野市によると、セチトレコ選手は宿舎に「生活が厳しい国には戻らない。日本で仕事がしたい」という書き置きを残していた。名古屋行きの新幹線の切符を購入したという情報があり、市や警察が行方を追っている。

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神宮泰暁 Yasuaki Shingu

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日本編集部所属。ボクシング・格闘技担当編集者。